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『Life is motion』

大嶺啓

琉球大学整形外科 大嶺 啓

「Life is motion 生きていることは動いて いることである」は古代ギリシャの哲学者アリ ストテレスの言葉ですが、体を動かすことは人 の生命、生活、人生そのものであり自己表現の 基本と述べています。その体を動かす器官であ る運動器とは、四肢・体幹の骨格、関節、靱 帯、筋や脊髄・神経であり、身体の感覚を脳に 伝えて、反射的あるいは意志に基づく身体の運 動を行う器官であります。運動器により営まれ る運動は、脳や神経系を賦活し、循環系や代謝 系の健康を保つために重要な役割を果たしてい ます。その運動器を扱う診療科が整形外科で す。また、乳児から高齢者までを対象にしてい ますので、整形外科がカバーする範囲は多岐に わたっています。現在、我が国の国民の多くが 抱えている身体的愁訴は運動器由来で、厚生労 働省国民生活基礎調査(平成16 年)によると、 男性は腰痛、肩こり、女性は肩こり、腰痛、関 節痛が上位を占めております。通院患者数も男 女とも高血圧症に続いて腰痛が2 位で、平成13 年度と比較して増加しています。さらに運動器 に関する疾患や状態としては、骨粗鬆症、変形 性関節症、関節リウマチ、スポーツ障害、四肢 外傷などがあります。

世界では、新しい世紀の始まりと共に「運動 器の10 年」世界運動がスタートしました。こ の運動は、スウェーデンのルンド大学・リドグ レン教授が提唱したもので、2000 年1 月、スイ ス・ジュネーブの世界保健機構(WHO)本部 において、その発足が宣言されました。国連や WHO もこの運動を強く支持しており、アナン 国連事務総長は、「この運動は、世界中の多く の、筋骨格系の疾患や外傷に苦しむ人たちに恩 恵を与えるのみならず、社会経済に及ぼす影響 にも極めて大きいものがある」との声明を出し ています。「運動器の10 年」世界運動の目標 は、1)運動器障害の実態を世界各国がWHOと協同して調査し、患者、その家族、職場、社 会や経済に及ぼす負担を把握し、これを社会に 知っていただく、2)患者や市民に、自らの運 動器の健康管理により積極的に参加していただ く、3)質の高い、経済効率のよい治療・予防 法を広く実施する、4)より本質的な治療・予 防法を開発するための基礎的研究を推進する、 ことであります。このように、世界的に見ても 運動器に関する関心はますます高くなってきて おります。

さて、現在の大学は平成16 年4 月からの独立 行政法人化、スーパーローテーション制度など これまでにない変革の時代になっています。琉 球大学整形外科では大学と関連病院での後期研 修システムを構築、整形外科専門医を目指す若 き医師の受け入れを行っております。関連病院 は県内の主要病院のほか、手術件数が3,000 件 を超える新潟中央病院、同じく2,000 件を超え る熊本整形外科病院、聖隷浜松病院などがあり ます。専門分野として、新潟県富永草野病院で は、脊椎外科、聖隷浜松病院ではスポーツドク ターとしてジュビロ磐田の帯同を経験できます。 また、日本医師会、日本整形外科学会、日本体 育協会のスポーツ専門医制度もあり、チームド クターや国体への帯同も行っています。現在、 5 名の医師が、専門研修に参加しています。ま た、前述したように、運動器関連の疾患は非常 に多いので、初期研修の2 年間に必須科として 整形外科をローテーションすべきだと思います。

県内の整形外科医の現状を見ると、一段と高 まるニーズに対して、まだまだマンパワーが足 りない状態です。整形外科に興味のある若き医 師の皆さん、我々と一緒に健康長寿県沖縄に貢 献してみませんか。お問い合わせは aomine5@med.u-ryukyu.ac.jp まで、お気軽に ご連絡下さい。