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九州医師会連合会平成18年度第1回各種協議会

去る9月30日(土)午後4時から、大分県において、標記協議会(医療保険対策 協議会、介護保険対策協議会、地域医療対策協議会)が開催されたので、その概要 を下記のとおり報告する。

1.医療保険対策協議会

理事 今山 裕康

会場風景

会場風景

【大分県医師会 近藤副会長挨拶】

4 月の診療報酬改定、6 月の医療制度改革法案 と小泉内閣は聖域無き構造改革を掲げ、社会保 障費削減を行っている。医療の安全、良質の医 療を行う為には診療報酬を格段に上げなければ ならない。診療報酬を下げたり、国民負担を3割 にしたり、また10 月からは高齢者の負担割合が 変わる等、医療関係者や弱者である患者さんに とって非常に厳しい改革となっている。本日の 協議題にもあるようにリハビリテーションや療養 病床の問題等、数え上げればきりが無いほどの 問題があるが、小泉首相が退任され、国民医療 推進協議会の宮内議長も退任されたことから、 私共は何となくホッとしている状況である。

先般、小泉内閣を継承する形で安部内閣が誕 生したが、厚生労働大臣に柳沢さんが就かれ た。柳沢さんは財政支出だけではなく、社会保 障を良くするためには税金も投入しなければならないとご発言されているが、まだまだ安心は 出来ない。このような中、私共が推薦する武見 敬三先生が厚生労働副大臣に就任された。労働 行政担当ではあるが医療について造詣が深い方 であり、6 月の医療制度改革完成法案に関して も西島英利先生、竹嶋康弘先生と一緒に「附帯 決議」を付けて、ある程度日医の要望を聞いて いただけるようにご尽力されたわけで、とりあ えず明るい兆し、展望が見えてきたように思え る。本日は医療保険担当ということで竹嶋副会 長、鈴木常任理事をお迎えしてこの会を開催で きることを非常に有難いと思っている。どうぞ 各県より忌憚のないご意見をいただき、この会 が実りあるものになるようにしていただきたい。

【日本医師会竹嶋副会長挨拶】

九州医師会連合会各種協議会へお招きいただ き感謝申し上げる。

先般安部内閣が誕生したが、小泉首相の改革 を踏襲することが懸念される。

4 月から私共は厚生労働省の医療政策を作る ところに足を運び、出来るだけ接触すること で、私共の考え方を聞いていただいた。その感 触として、安部新首相がまだ官房長官の時にお 会いしたときには社会保障について大変関心を もたれており、逆に向こうの方から「どのよう に進めたらよいか」と訪ねられた。皆さんもお 気づきかもしれないが先日の記者会見では生活 保護制度について述べられていて、その内容に 細かな配慮を持たれていると感じた。先程、近 藤副会長からもお話があったが、今回、厚生労 働大臣に自民党税制調査会長の柳沢伯夫氏が就 任された。柳沢氏ともこれまでに何度かお会い したことがあり、今村聡税制担当理事と資料を 持って行き説明を行ったところ、医療費の総枠 管理や保険免責制度については慎重に取り組む と述べられており、とても良い印象を受けてい る。また武見先生が厚生労働副大臣になられた ことについても我々にとって大変良いことであ った。新厚生労働大臣が社会保障制度に取り組 む意欲が大きい中で、我々も日医のグランドデザインの作成を進めており、来年3 月の代議員 会に中間報告、7 月には医療保険を含めた財源 について提案していく予定である。

この水曜日に開催される日医代議員会でも医 療保険関する問題が多く出されており、現場で は大きな問題が生じていると感じている。

国は療養病床に関するアンケートを9 月から 開始し、来年の2 月に公表する予定である。私 共も診療報酬改定並びに療養病床に関するアン ケートを行ない、その結果を現在分析中であ る。ご協力いただいた会員の皆様方には感謝申 し上げる。この調査結果については10 月に開 催される第2 回中医協で発表し、意見を述べる 予定である。

本日の協議会の協議内容についても中医協で の意見を示す際の材料としたいので、活発なご 意見を頂きたい。

座長選出

慣例により、大分県近藤副会長が選出された。

協議

(1)リハビリテーションの日数制限の 撤廃について(長崎県)

【提案要旨】

平成18 年4 月の診療報酬改定で、リハビリテ ーションに算定日数の制限が設けられた。

算定日数を超えた場合は、たとえ医学的に必 要であっても、リハビリテーション医療の保険 診療が受けられなくなることから、慢性期、維 持期のリハビリテーションが全く無視されてい る等、現場では様々な問題が生じている。

また、人員基準など施設基準の要件のハード ルが高くなっており、かかりつけの先生方が指 定を受けられないような事態にもなっている。 各方面から算定日数制限に対する反対意見が出 されているが、医師会としても患者、現場を無 視した算定日数制限の即時撤廃と、かかりつけ 医がリハビリテーションを行えるような要件の 緩和を強く求めるべきと考える。

(2)リハビリの制限日数について (福岡県)

【提案要旨】

4 月の診療報酬改定により、リハビリに関し ては4 つの疾患別リハとなり、それぞれに日数 制限が設けられている。新たな疾患が発症し、 新たに他の疾患別リハを要する状態となった場 合には、新たな疾患の発症日を起算日とするこ とができる等の取扱いも追加されたが、そもそ も一律に制限日数があること事態に疑問があ る。4 月に緊急避難的に日数制限のリセットが 実施されたが、患者個々により病状の経過も異 なり、医学的な見地からも日数制限についての 根本的な見直しが必要と考える。

各県並びに日医の見解をお伺いしたい。

(3)リハビリテーションの算定日数制 限の撤廃について(鹿児島県)

【提案要旨】

リハビリテーションの算定日数制限により、 現場は患者を巻き込んで大変な混乱を来たして いる。

中医協診療報酬改定結果検証部会では、10 月に疾患別リハビリテーションの実施状況調査 を行うようだが、日医においても算定日数制限 の撤廃に向けて緊急提言を行うなど、早急に改 善の方向にもって行ってほしい。

※協議事項(1)、(2)、(3)は一括協議

【各県回答】

資料の回答事項とは別に各県より追加発言が あった。内容は概ね次のとおり。

今回の改定で急性期、並びに回復期のリハビ リ6 ヶ月と規定し、それ以後は医療保険から介 護保険で対応しなさいということで既に社会問 題となっている。今回の改訂の際に日医では3 つのポイントとして療養病床の問題、リハビ リ、看護の70 日間の問題を挙げていた。今回 はその中のひとつであり、早急な対応をお願い したい。また、今回のリハビリの改定によって 予想される診療報酬の圧縮額がどのくらいになるのか教えていただきたい。

脳卒中に関することで一部麻痺のある患者さ んは除外することになっているが、医師が判断 する条件をもう少し明確化していただかない と、多くの脳卒中の患者さんがリハビリを打ち 切られている状況が起こっている。(福岡県)

リハビリテーションは地域医療に密着するも のであるが、今回の改定による人員基準のハー ドルが高くなり、より専門性が高くなったこと から、小さな診療所ではリハビリを行うことが 出来ない状況になってしまった。

また、国では「健康日本21」という壮大な目 標を掲げながら、一方ではこのような日数制限 等を設けることが果たして良い事なのか。厚生 労働省の中では縦横の連絡が行き届いてないの ではないかと思う。(鹿児島県)

今使われているリハビリテーションという用 語の意味について範囲を見直さなければならな いのではないか。患者さんのニーズである消炎 鎮痛について再評価をしてはどうか。また、今 後日医の戦略としてリハビリテーションと同時 にリハビリテーションの周辺での患者さんに対 する医療行為・医療補助行為等、人(トレーナ ー)を使って行っている行為をもう少しクロー ズアップしてみてはいかがだろうか。(熊本県)

【近藤議長】

平成14 年に再診料の逓減制が導入されよう としたときに、日医は調査を行い大至急厚生労 働省に掛け合いうことで再診料の逓減制を廃止 することができたが、今回も同様に行うことで リハビリの条件を緩和するひとつの方法かもし れない。リハビリについては算定日数制限、施 設基準、疾患別としたことが大きな問題である と思う。また、脳卒中の患者さんのリハビリに ついて、リハビリ改訂による圧縮額等、追加発 言のあった項目と併せて日医鈴木常任理事より コメントをいただきたい。

【日医鈴木常任理事】

今回のリハビリ改定については問題があることは承知している。どのように見直すかは先生 方から直接お話を伺いたい。どのようにすれば 矛盾がなくきちんと整理された形にする事が出 来るのか検討の必要がある。今回のリハビリの 問題は疾患別、専門別重視ということで足切り のようなイメージであり、本当に正しいことが 出来たのかどうかについては議論のとおりであ る。リハビリの財源をマイナスにしたとは聞い ておらず、プラスマイナスゼロであるはずなの で、中身についてきちんと議論をし、再構築し ても良いと考える。

(4)在宅療養支援診療所に対する各県 の対応について(宮崎県)

【提案要旨】

今回の診療報酬改定は、診療所にとっても厳 しい内容となった。

医療機能の分化・連携を推進する視点、入院 から在宅への患者誘導への受け皿として在宅療 養支援診療所が創設された。診療報酬は高く設 定されているが、24 時間体制の往診や訪問看 護・緊急時の入院確保が算定条件となってい る。他の保険医療機関、訪問看護ステーション 及び介護専門員(ケアマネジャー)等との連携 が必要となるが、各県の取り組み状況をお伺い したい。

(5)在宅療養支援診療所とそれ以外の 診療所の格差について(大分県)

【提案要旨】

今回の診療報酬改定では、平均在院日数の短 縮だけでなく療養病床の患者分類、リハビリテ ーション期間の制限が設けられ、在宅療養を必 要とする高齢者が増加している。それに対し、 退院後も住み慣れた地域・住まいで終末期まで の生活がおくれるように支援する医療機関の役 割は重要である。

在宅療養支援の中心となるのはかかりつけ医 機能を持つ診療所であるが、その一部は診療報 酬改定で「在宅療養支援診療所」として位置付 けられ、経済的誘導も加わってその評価は高く設定されている。それに対して在宅療養支援診 療所以外は「それ以外の診療所」として評価も 受けず、診療所間に大きな格差が生じた。

都市部では訪問看護ステーション、介護支援 専門員等の介護資源、近隣の医療機関等との連 携は取り易いが、郡部ではこれらの社会資源が 少ないため在宅療養支援診療所として届出がで きない診療所は多い。現在、すでに地域で在宅 医療や在宅ターミナルケアを担っている「それ 以外の診療所」があるが、これらの在宅医療・ 介護サービスの提供に対する意欲を削がないよ うな評価や対応が求められ、報酬の格差の是正 が必要となっている。各県の御意見及び日医の 見解をお伺いしたい。

※協議事項(4)、(5)は一括協議

【各県回答】

資料の回答事項とは別に各県より追加発言が あった。内容は概ね次のとおり。

在宅療養支援診療所については24 時間対応 等大変な状況で、佐賀県においては24 時間対 応をしているところは殆ど無い。とりあえず訪 問看護を行っているところは届出している状況 だが、実際に条件にあっているかどうかを調べ ると難しいところである。(佐賀県)

郡市医師会によって取組状況が異なる。積極 的に取り組んでいるところでは医師会立の訪問 看護ステーションの担当者を決め、連携医療機 関については、その地区の中核となる病院へ連 権病院になってもらうよう地区医師会役員から お願いをし、会員が届出をし易いように取り組 んでいる。(福岡県)

実際に届けている医療機関には様々なレベル がある。後方支援病院や訪問看護ステーション へ患者情報をその都度報告する等、自分たちで 高いハードルを設けて取り組んでいるところもあ り、今後はこの動きを指定に関することだけで はなく長崎県全体に広げていきたい。(長崎県)

ハッキリ言って医療費抑制の表れではないか。 実態としては厳しい条件があり、本当に24 時間 責任を持って患者さんが満足できる体制を維持できるのか。今後必ずトラブルが生じるのでは ないか。在宅で看取ることは様々な問題があり、 今の実態を踏まえた上でこれが本当に良いこと かどうかを見極めていただきたい。(宮崎県)

沖縄では全医療機関の5.4 %の届出があり、 全て本島のみの届けである。離島では申請した くても、やりたくても出来ない。しかし、実際 のところは24 時間対応を行っている状況であ りながら、点数を算定できない。このような制 度が全国一律であるということが問題であり、 もう少し地域性を考慮すべきであると考える。 また、在宅系サービスの整備が先にされて成り 立つ制度であり、その辺の整合性をとることが 必要である。(沖縄県)

在宅支援診療所のオープン性というのは多く の医師が理解できるものであると思う。しか し、実際の現実との乖離は大きいことも確かで ある。グランドデザインの中に在宅でどこまで 医療が出来るのか、福祉施設でどこまで医療が できるのかという医療機関以外のところでの医 療の質というものを考えてかなければならな い。都市部と離島では同じ医療は出来ないし、 郡市医師会のパワーも様々である。また、この 制度が出来たからやるのではなく、今まで行っ てきた先生をどのように評価するのかも大切で はないか。現実に合うような在宅療養支援の形 を日医から提案できないか。(熊本県)

【近藤議長】

現在、在宅医療ターミナルケアをやっている のに評価されないという問題等、それぞれの問 題があると思うので、届出たから評価するので はなく、従来からやっていたところについても ちゃんと評価できるよう日医には取り組んでい ただきたいと思う。また、在宅支援診療所が発 展し、患者と医師の間に信頼関係が生まれれば よいが、トラブルが生じないとも限らない。届 出たからうまくいくとは限らず、やはり従来か ら取り組んでいるところが将来は生き残ってい くのではないかと思う。日医鈴木常任理事より コメントをいただきたい。

【日医鈴木常任理事】

離島の先生のお話があったが、離島の先生は 四六時中忙しい状況ではなく、24 時間対応は 可能であると考える。実際は夜間に比べ、診療 中である日中に呼ばれることが大変である。24 時間について厳しく提言されている社会保険事 務局では届出を受付けないとの話を聞いている が、そのようなことが生じた場合には県医師会 を通じてお知らせいただき、社会保険事務局に その真意を確認したい。患者さんとの信頼関係 の構築だけといえば24 時間対応することは可 能であるので、先生方には是非届出をしていた だきたい。平成20 年からは高齢者医療制度が 創設されるが、厚生労働省はそちらを見なが ら、今から我々に在宅療養支援診療所を振って きたのではないかと思う。離島で行う際にはヘ リや船での搬送の準備が必要となるが、診療所 が一生懸命にやっていることは患者さんが判断 される。お叱りを受けるかもしれないが、制度 の良し悪しは別として一度成立してしまった以 上は病院病棟が地域に関わってくるので、在宅 支援診療所について医師は今後義務になってく るものと思われるし、それに応えていかなけれ ばならないと思う。

(6)医療療養病床の問題点 〜特に医 療区分について(熊本県)

【提案要旨】

「療養病床」の改定以来約3 ヶ月を経過する が、低い入院基本料、不合理な医療および ADL 区分の設定、周知期間のない急激な制度 改革等に医療現場は大きく混乱している。

これは平成17 年「慢性期入院医療包括評価 調査分科会」の作成した「患者分類」を基本と しているが、論点として次の3 点があろう。

1)医療必要度が低いと判定された全ての患者が 「介護保険」適用に該当するのか。脳血管障 害等で「寝たきり」となり、「経鼻栄養」、「胃瘻」等を行う患者の中には、介護保険で は要介護度5 でも医療区分1 に該当する人が 多数みられる。そもそも「医療保険」と「介 護保険」の接点部を無視した稚拙な制度設計 になっている。

2)「日常生活障害加算」や「認知症加算」が廃 止され、医療区分2、ADL 区分1 のみに「認 知機能障害」加算(5 点)が認められた根拠 が不明である。

医療の合併症をもつ重症認知症患者の評価 がなされてない。

3)医療区分の中で、不合理で医学的根拠に乏し い評価項目と日数制限が多い。「中心静脈栄 養を実施している状態」、「24 時間持続に点滴 を実施している状態」、「悪性腫瘍の疼痛コン トロール」、「頻回の血糖検査を実施している 状態」、「酸素療法を実施している状態」など

(7)療養型病床における医療区分の見 直し等について(福岡県)

【提案要旨】

療養病床の見直しについては、現在様々なと ころで議論がなされ検証が行われているが、本 県においても6 月に「療養病床緊急アンケート 調査」を実施した。その報告は別紙1 のとおり であるが、医療区分1 の患者が診療所では6 割 を占めており、そのうち医療の必要性の高い患 者が4 割弱で、患者の受け皿の問題、医業経営 の問題等非常に深刻な状況にあることがわかる。

また、医療区分について様々な問題や矛盾点 があるとして、本県より5 月に日本医師会に対 して別紙2 のとおり要望書を提出した。

現在、中央において医療区分見直しの検討が されていると伺っているが、どの様な議論が行 われているのか。

また、療養病床の問題については、医療機関 は今後の方向性が見出せず、どうすべきかの判 断に困っている状況である。今後の方向性につ いても日医の見解をお伺いしたい。

※協議事項(6)、(7)は一括協議

【各県回答】

資料の回答事項とは別に各県より追加発言が あった。内容は概ね次のとおり。

厚生労働省からの療養病床に関するアンケー ト調査の中に病床の転換についての問いがあっ た。現状では将来の転換を考えることが出来な い現状である。特に有床診療所でも療養病床を 5 〜 6 床もっているところがわずかな補助金で どうして転換できるのか、この点について不満 を持っている。現場と政策を決める国とでは乖 離があり、その辺りについて日医で対応してい ただきたい。(福岡県)

佐賀県では療養病床を持っている病院56 施設 に対しアンケート調査を行った。その動きとし て療養病床を一般病床に移すケース、とりあえ ずは介護型療養病床へ移行するケースが見受け られる。病状にはいろいろな状況があるが、病 状A と病状B が合わされれば医療区分が2 から3 になるとかの配慮も必要ではないか。(佐賀県)

【近藤議長】

療養病床については医療区分を3 つに分けた のが問題である。メディファクスによると中医 協で医療区分を決定する前に出さなければなら なかった資料が間に合わず、このような間違っ た結果になってしまったという決定のプロセス にも誤りがあったと思う。次回はこのような矛 盾している医療区分を是非改善して欲しいと思 っている。日医鈴木常任理事よりコメントをい ただきたい。

【日医鈴木常務理事】

ADL 区分・医療区分については見直しを前提 に検証作業を行うことが今回了承された。先日 ご協力いただいた療養病床に関する緊急調査の パイロットの結果についてご報告する。2006 年 4 月の有床診療所の入院の構成内容について、 医療区分1 が64.8 %、医療区分2 が31.1 %、医 療区分3 が4.1 %、病床数別に見ると49 床以下 で医療区分1 が45.5 %、50 〜 99 床では医療区 分1 が44.3 %となっている。やはり4、5 月で医療区分1 と2 に対する患者さんの対応が進め られた結果だと思われる。急性期病院について も円滑に引き受けが出来ているようで感謝して いる。

(8)領収証発行の義務化について (長崎県)

【提案要旨】

領収証発行は患者サービスとしては必要なこ とではあるが、問題は内容のわかる領収証の発 行が義務化されたことである。

現行の診療報酬点数表には我々でも理解でき ない矛盾点が多く、説明しても患者には誤解を 招くだけで、医療不信をあおる結果になりかね ない。

領収証は金額だけを記載するのが世間一般の 常識であり、このような理不尽な要求に対して は撤回させるべく日医ともども我々も戦術を構 築する必要がある。

各県のご意見を伺いたい。

【近藤議長】

診療報酬点数表を整理して簡単にして欲しい ということと、現場で納得できる適切なものに していただきたい。しかし、これは大変な作業 であり、今日、明日すぐに出来るものではな く、当分はこのままになるかと思う。本来は内 容ではなくて金額だけにしていただければ一番 良いと思っている。日医鈴木常任理事よりコメ ントをいただきたい。

【日医鈴木常務理事】

領収書発行は妥当なものである。支払者側は 部別・診療行為別の領収書の発行ということで 押し込められた形だが、事務手数料等の納得で きない部分については反対を貫いていきたい。

しかし、医療費通知同様、患者さんが領収書 を必要としないとした場合には発行しなくても よいことになっているので、運用方法で業務の 煩わしさを解消していただきたい。

(9)処方せん様式について(福岡県)

【提案要旨】

4 月の診療報酬改定により処方せんの様式が 変更され、後発医薬品への変更確認欄が設けら れた。

国は、医療費抑制のため後発医薬品の使用を 全面的にバックアップしているが、後発医薬品 については、治験がないために安全性・有効 性・品質などの面で疑問のあるものも多く、そ れぞれの後発品の情報自体が分からない。1 つ の先発品に対して数十種類の後発品がある場合 もあり、一部適応症の異なるものもある。

主治医が後発品への変更を認める場合には、 署名・押印し、後発品への変更があれば調剤薬 局からその旨の連絡があることとなっている が、あくまでも変更後の連絡であること、また 不安定な後発品の使用により問題が発生した場 合の責任の所在、何より、多種の後発品の中か ら薬剤師が選択するのは処方権に照らして大い に疑問であり、医療費抑制のために後発品に容 易に誘導してはならない。

以上のことから本制度・処方せんの様式等の 見直しが必要であると考えるが、各県並びに日 医の見解をお伺いしたい。

【各県回答】

資料の回答事項とは別に各県より追加発言が あった。内容は概ね次のとおり。

後発品の使用によって全体の医療費が下がる ことは良いことだと思う。ただし、様々な問題 がクリアされた場合についてである(沖縄県)

【近藤議長】

後発品については、安全性・有効性・品質に ついての問題、処方権の問題、勝手に薬剤師が 変えてしまった場合等、その責任の所在につい ての問題等があるかと思う。現時点ではまだ時 期尚早であると思うので処方箋様式の見直し等 について、日医で対応していただきたい。

【日医鈴木常務理事】

後発品については飯沼常任理事で対応中であ る。後発品の質についてバラつきがあることか ら、その問題に対する責任の所在については、 現在日医で作業中であるので結論は次回にお答 えさせていただきたいと思う。しかし、今の処 方箋でも後発品に変えないという選択も可能で あるし、後発品に変更した場合は調剤薬局から 医師へ連絡することになっているので、それを 怠った場合は明らかなルール違反であるので、 その辺で対応が出来るのではないかと思う。

(10)指導、管理等のカルテへの記載 義務事項の増加について(長崎県)

【提案要旨】

診療報酬が改定されるたびに、指導・管理等 のカルテへの記載義務事項が増え、更に提出期 間が限られた施設基準等の申請書類が増えてい る。このために臨床医は患者の診療時間を書類 書きに割かねばならなくなっている。この傾向 は、診療所のみならず病院ではより顕著である。

屋上屋を架す方式の診療報酬改定や厚労省の 医療機関に対する管理強化が根本原因と思われ るが、このままでは診療がおろそかになり、医 療の安全に支障を来すことが懸念される。

指導・管理料を診察料に包括したり、余裕を もった診療報酬改定の告示が必要と考えるが、 各県のご意見を伺いたい。

【各県回答】

資料の回答事項とは別に各県より追加発言が あった。内容は概ね次のとおり。

今回領収書の問題が出てきたことで、指導・ 管理料について患者さんに説明することが非常 に難しい診療報酬の部分だということがクロー ズアップされてきた。窓口でトラブルになるよ うな診療報酬についてはやはり無理やりに作ら れたものであり、基本的には診察料に包括する 方向が良いのではないか。このままにしておけ ば日医やその政策に対する不信感に繋がるので ないか。(長崎県)

医師の技術についてどのように表すのか、手 術を行う外科系では技術料として表し易いが、 内科系やその他の科については指導・カウンセ リングといったものが指導・管理料に纏められ ている。改めて各診療科の技術というものをも う一度根本的にハッキリさせる必要があるので はないか。(熊本県)

【近藤議長】

この問題は診療科によって異なるので難しい 問題である。日医には包括に代わる新しい方法 を考案していただきたいと思う。また、カルテ に記載がないと個別指導の際に返還されるとい う現状であるが、何も書かれていない場合でも 患者さんの診察内容が書かれていればその都度 指導管理を行っているはずなので、指導・管理 料を査定されないように日医から社会保険事務 局へご相談いただければ少しは医師の労力が省 けてよいと思う。また、指導・管理をする際に 看護師に医師が患者さんに指導したことを書き 留めてもらって後でカルテに記載するという方 法もあると思う。日医鈴木常任理事よりコメン トをいただきたい。

【日医鈴木常務理事】

療養担当規則の中では、指導料と管理料の名 前が変わっただけで中身は一緒である。個別指 導等でカルテに記載がなければ当然自主返還さ せられる。これを変えることについては国民の コンセンサスを得ることは難しいので、何らか の方法でカルテに記載をしていただきたい。包 括化については完全な包括化はない。患者さん にも重症の方から軽症の方まで様々であり、提 案事項11 でのお話にもあったとおり重症患者 だけを扱う病院から不満がでるのは当然である と思う。

(11)人工透析におけるエリスロポエチ ン製剤の包括化について(佐賀県)

【提案要旨】

平成18 年4 月の診療報酬改定において、エリスロポエチン製剤の費用は人工透析の所定点数 に含まれることとなった。

エリスロポエチン製剤は、透析患者の貧血管 理のために不可欠な治療法であるが、エリスロ ポエチン製剤の費用が包括されたことにより、 種々の合併症を有する重症患者や高齢者に対応 している医療機関に多大な経営的影響を及ぼし ている。

一方、主に比較的元気で仕事も可能な患者を 扱う透析医療機関では、むしろ保険点数が高く なるといった矛盾が起きている。

すなわち、包括化の間違い或いは保険点数設 定のミスと考えられる。

この件について、九州各県のご意見と日医の 見解をお伺いしたい。

【各県回答】

資料の回答事項とは別に各県より追加発言が あった。内容は概ね次のとおり。

この件については比較的重症患者を扱う病院 からである。透析会から要望があり包括化にな ったということだが、一般的な患者さんへ透析 を行った場合に点数が高くなる。重症例にこの ようなエリスロポエチン等を使う場合は下がっ てしまう。透析会が点数を包括化したことが間 違いではないか、或いは点数の設定ミスではな いかとの意見である。(佐賀県)

(12)医療費の未払いについて(福岡県)

【提案要旨】

8 月2 日の西日本新聞に医療費未払いの調査 結果が掲載され、04 年度の未払いは全国で218 億円にものぼっている。九州各県の状況は別紙 のとおりである。

今後、高齢者人口は膨らむ一方であるが、当 然ながら高齢に伴い医療の必要性は増す。しか し、年金収入の減少、負担金の増額、そして格 差社会の拡大などにより人口増加に比例して、 未払いの額はますます莫大なものになることが 予想される。

未払いが続くと、救急医療の崩壊に繋がることも考えられ、応召義務を課している以上は、 未払いに対しては保険者が一定の責任を持って 対応すべきである。

未収金が収入として課税対象となることを考 えると、損金としてあげる場合の基準を明確に すべきと考える。また、負担金に変更があった 場合、医療機関において患者に説明している が、説明義務は本来、国にある。

窓口での一部負担金徴収を廃止するというこ とを検討されるのも一つの方法かもしれない。 国の財政支出を減らすためだけに患者や医療機 関に過大なしわ寄せが来ることに大きな矛盾を 感じる。

本件に関して日医の見解をお伺いしたい。

【近藤議長】

昔であればお金が無くても治療するというこ ともありえたが、現在では医療機関が倒産する 現状であり、何か良い案があれば日医より考案 していただきたい。

【日医竹嶋副会長】

日医の医療対策会議において池上先生からは 応召義務、現物給付の観点から保険者が支払う べきと話されていた。田中教授についても医療 機関の未処理の件については非常に興味をもた れており、見解は保険者側の負担となってい る。日医としてはこのような学識経験者の意見 をもとにそのような方向に持って行きたいと考 えている。

(13)レセプト完全オンライン化とその 対応について(熊本県)

【提案要旨】

厚労省は「療養の給付、老人医療および公費 負担医療に関する省令」の改正案で、平成23 年3 月31 日までに、順次オンライン請求を行う 工程表とレセプトデータ変換ソフト「レセス タ」を発表した。

現在、オンライン化の前提である磁気媒体で のレセプト電算処理システム(レセ電)でさえ普及率は約14 %(病院24.5 %、診療所9.8 %) に過ぎない。

日医は8 月初旬、「周辺整備がなされないま ま、オンライン請求が本格稼働すれば医療現場 は混乱する。基盤整備を行った後に、IT 化の財 源措置を講ずるべきである」と言及した。薬理 薬効の作用に基づいた医薬品の投与を認めるこ と、被保険者証の有効性確認システムの確立、 レセコンの統一基準、レセプトデータ利活用に 関する問題、IT 化財源の別途確保の5 つの問題 点を指摘した。

医療機関のコスト負担で保険者側の業務軽減 や審査強化が窮えるIT 化の短兵急な政策の推 進は論外である。「ナショナルデータベース」 の蓄積による医療費適正化、診療報酬改定への 利用や民間も含めたデータベースの利活用など の禁止を担保すべきである。また、情報漏出の 危険性や約650 億円と推定される財源の確保な ど解決すべき問題点は多い。

熊本県医師会では、日医標準レセプト (ORCA プロジェクト)の啓発、普及に努めて いるが、日医は早急に「必要な情報を収集でき る体制」を構築し、全国規模での解析と政策提 言が出来るよう期待したい。日医と各県の状況 や対応についてお伺いしたい。

(14)レセプトオンライン化について (福岡県)

【提案要旨】

本件については、国が2011 年までに完全義務 化を決定し、医療機関の規模により、順次体制 を整備することが強制的に求められている。今 後、医師会としても対応を検討し会員への周知 も必要であるが、様々な問題点が考えられる。

オンライン化は医療費適正化を大前提として おり、データの収集により保険者機能を強化 し、個人データの国家管理につながりかねない。

また、オンラインシステムの導入にあたり、 医療機関によっては職員の増員が必要となる等 コストもかかり、その後のメンテナンス料、セ キュリティにかかる費用等併せると、小規模の医療機関にとっては莫大な負担が圧し掛かり、 診療報酬の改定による減収と相まって、医業経 営が更に厳しくなる事は、安全・安心で良質な 医療提供にも悪影響を及ぼすと予想される。

以上に関して、各県のご意見並びに日本医師 会の見解と中央情勢をお伺いしたい。

※協議事項(13)、(14)は一括協議

【各県回答】

資料の回答事項とは別に各県より追加発言が あった。内容は概ね次のとおり。

IT 化は避けては通れない状況であり、実現さ れることは間違いない。

それならば我々が集められたデータをいかに 有効活用できるかを考えた方が得策ではないか と考える。(沖縄県)

【近藤議長】

この問題についても、機械・機器の導入にコ ストを各医療機関が負担しなければならないの かという財政の問題や、個人データを国家管理 し、保険者機能の強化やデータベースを基に医 療機関の適正化図る等に利用されるのではない かとの問題があり、このようなことを防ぐ為に 日医が行っている対応についてお聞きしたい。

【日医鈴木常任理事】

IT 化は時代の流れで必須である。前執行部か らの検討事項であった薬理作用や適用外投与の 問題、保険証の資格有無の確認についてクリア 出来るように努力してきた。周辺整備の件につ いてもクリアしてご迷惑にならないような形作 りを考えていきたいと思っている。

(15)個別指導の実施状況について (鹿児島県)

【提案要旨】

本県では、例年個別指導は、全保険医療機関 の4 %程度である50 件程度を対象に実施されて いる予定。

本年度は、社会保険事務局の都合により、22 件となったが、来年度は、従来どおり、50 件程 度に戻される。

平成16 年度の全国の個別指導実施件数は917 件なので、1 県当たり20 件程度となり、これと くらべても本県は特に多い。

本県の本年度の実施予定は別添のとおりであ るが、各県の状況をお伺いしたい。

(16)医師会として指導を行っているか (沖縄県)

【提案要旨】

社会保険事務局および県では、指導大網に則 り、医療機関の指導・監督等が行われていると ころである。

前年、山梨県医師会が全国の都道府県に対し て行ったアンケートによると27 の医師会で、医 師会としての指導を行っていると回答している。

九医連において、各県の実情と、もし行って いるのであれば実施内容について教えていただ きたい。

上記2 題については関連している為、一括協 議を行った。

【各県回答】

資料の回答事項とは別に各県より追加発言が あった。内容は概ね次のとおり。

沖縄県では高点数もあるが、新規・個別指導 後、経過観察になっているものを再指導として 指導を行っている状況である。(沖縄県)

【日医鈴木常任理事】

各県とも指導数が異なっている事実がある。 個別指導には問題があるとされた医療機関を対 象に実施する場合と、医療機関数を平均化し選 定する方法があると思うので指導医療機関数を 単純に全国と比べることは難しい。

日医としてはDPC を行う医療機関を主体に 指導するようお願いしたいと考えている。

印象記

今山裕康

理事 今山 裕康

協議会の冒頭に竹嶋副会長があいさつされ、安倍新政権、柳澤厚生労働大臣、武見敬三厚生労 働省副大臣就任等に関する所感を述べられた。多少気にかかるのは今までの日医の活動に対する 総括に乏しかったことで、問題設定の妥当性、活動の適正、再評価、今後の課題等を話して戴き たかった。いずれにしても今後医療供給体制は大きく変わっていくが、その変革に医師会が貢献 できなければ医師会の存在意義そのものが問われることになり、日医をはじめ、各県、地区医師 会の責任は大きいと考えられた。

次いで各協議議題について活発な意見交換が行われた。

リハビリテーションに関して

今、マスコミにも取り上げられ社会問題化しており、医師会としても何らかの行動を取るべき だとする意見が多かった。しかし、その中でリハビリテーションの定義そのものを考えなおすべ きで、特に維持期のリハビリテーションは消炎鎮痛処置で良いのではという意見もあり、そのよ うな見方をしたことがなかったので新鮮に感じた。ただ、リハビリテーション問題に対する日医 の解答がいまひとつ明解ではなく、問題意識はあるが見直しの方向性を見いだしていないことに 少々驚きを憶えた。今後、我々はこの問題に関しEvidence を積み上げ、それを元に改革案を作り あげることが必要だと考えられた。

在宅療養支援診療所に関して

届出が10 %以下と低調である(特に沖縄では5.4 %と非常に少ない)。理由は明確でないが、施 設基準として24 時間の応需体制が必要であること、その体制を作るのに準備時間が不十分であっ たことなどの意見が出された。在宅療養支援診療所の対象は在宅系の患者であり、現在の療養病 床再編、居宅系サービスの再構築といった制度面が整備されてはじめて有効といえるのではない かと考え、その旨の発言も行った。また、各県の医師会として対応はマチマチで、我が県として 今後は在宅医療の推進、医療供給体制の再構築の中での病診連携の在り方等を踏まえ、個々のケ ースに合ったモデルケースを示し、数多くの診療所が在宅療養支援診療所として届けられるよう にしていきたいと考える。

療養病床再編問題

療養病床再編問題は我が国の医療供給体制、医療保険制度を根幹から改革する入り口であり、 いずれ医療・介護の大改革が行われる。厚生労働省は10 月のアンケート調査の結果を踏まえて 「地域ケア構想」を発表する予定になっており、その成り行きを注目するとともに、そこに医師会 の意見が反映されなければならないと強く感じた。

その他の問題について

領収書の問題は、根本に医療に対する不信感が存在するのではないかと考えられた。医療事故、 医療紛争、医療事故に対する警察の介入、不正請求など、マスコミの取り上げない日がないと思 われるほど報道がなされ、それに呼応して世論が医療不信を募らせていると感じられる。本来患 者・患者家族とは協調すべきであるが反対に対立する関係になろうとしている。領収書は時間と コストの問題があるものの、どうすれば医療に対する信頼を取り戻せるかを考えたとき、領収書、 明細書の発行、カルテの開示等は透明性、質と安全性を担保し、信頼回復への必要条件と考えら れる。

一方、オンライン化による請求に関する議論の中で、IT 技術改新ならびに、IT 技術の普及を国 家政策としている現状で、医療界だけ反対することは不可能である。従って、これからの戦略は 集められたデータの取り扱いに向けるべきである。そもそも国民より集められたデータは国民全 員の共有財産であり、全ての国民が利用出来なければならず、日本医師会としては集積されたデ ータを利用して、医療政策を立案すべきで、データが国家機密の様な取り扱いにならないように する仕組みを考えるべきである。

未払い問題は、医療機関にとってとても大きな問題であり、早期その解決を望むもので、日医 活動に期待するものである。

以上、協議会の内容について感想を述べた。