琉球大学医師会
琉球大学医学部附属病院地域医療部 稲福 徹也
皆様こんにちは、本日は琉大病院・地域医療 部の紹介をいたします。この原稿は瀧下修一病 院長から「地域医療部の活動と、特に地域医療 連携について書いてほしい」との依頼で書いて います。地域医療部はこれまでの業務に加え、 平成16年度から新たに医療連携・退院支援業 務を開始しました。大学病院における病病連 携・病診連携の要(かなめ)を地域医療部に担 ってほしいという病院長の願いがあるものと理 解しています。
地域医療部の活動は、1)総合診療センターを 支援する形で総合診療科外来の診療、2)医学部 学生や研修医に対するプライマリ・ケア教育、 3)医学教育・医療連携に関する研究、そして4) 地域医療連携に関する業務です。大学病院の使 命はよく診療、教育、研究の3分野であると言 われ、当院第一内科の藤田次郎教授はこの3分 野をマリナーズのイチローのようにバランスよ くこなすのが目標だとおっしゃっています。し かし、部員が少なくかつ不器用な地域医療部で はその3つをバランスよくこなすのは困難で、 特に大学病院におけるプライマリ・ケア教育と いうのが当部に課せられた使命と考えて最も力 を注いでいます。
平成16年度から卒後臨床研修が必須化され、 初期研修でプライマリ・ケアの基本的な診療能 力(態度・技能・知識)を身に付けることが強 調されます。しかし、地域医療部が目指すプラ イマリ・ケア教育は少し違います。簡単に言う と将来開業医(かかりつけ医)や離島診療所医 師として“地域”に根ざした医療を実践できる医師の養成を目指しています。卒後教育につい てはRyuMIC卒後臨床研修センターと協力し、 本島内や離島の診療所、中小病院などへ研修医 を派遣しています。卒前教育についてはM4学 生の「地域医療/プライマリ・ケア」の10コマ の講義のうち5コマは外部講師に依頼し、離島 診療所を経験された先生や現在開業医として活 躍されている先生に講義していただいていま す。またM5学生の「地域医療/プライマリ・ ケア」の実習では、2日間のうち1日ないし半日 は開業医の先生の所で訪問診療や外来の見学、 訪問看護ステーションでの在宅訪問へ同行させ てプライマリ・ケアを体験させています。医学 部学生はポリクリ(臨床実習)のほとんどを大 学病院内で過ごし、それ以外の医療に触れる機 会があまりありません。学生からの反応は、初 めて体験するクリニックの外来診療や訪問診療 に触れて、先生方の患者さんに接する態度や医 療に対する真摯な姿勢、患者さんの大学病院と は違う生き生きとした表情に新たな驚きと感動 をおぼえて、とてもよい影響を受けています。 中には入学以来忘れかけていた自分の理想の医 師像を再発見し、プライマリ・ケア医への道を 目指す学生もいます。講義は院外講師という形 でお願いしていますが、実習はボランティアで 引き受けていただいているのが現状です。協力 いただいた先生方には学生からの感謝の気持ち やポジティブフィードバックが医学教育への大 きなモチベーションになっているようです。学 生にお礼の手紙やレポートをきちんと書くよう に指導することが、今後の地域医療実習の発展 につながると信じています。
スキルス・ラボで自習する医学部学生
大学内での活動の一つは「スキルス・ラボ」 の運営です。近年医療の安全性が強調されるよ うになり、学生や研修医は人形などで十分なト レーニングを受けた後に実際の患者さんに接す るというふうに、段階的に診療技術を習得する ようになっています。その1つが多くの診察シ ミュレーターを備えた「スキルス・ラボ」で す。そこには心音聴診用の「イチロー君」、呼 吸音聴診シミュレーターの「ミスターラング」、 直腸診、前立腺触診モデル、乳房診察モデル、 眼底診察シミュレーター、耳診察訓練模型、静 脈血や動脈血の採血・小児の採血モデル、気管 挿管用人形、AED兼練習用モデルなどさまざ まなトレーニング用人形があります。また、プ ライマリ・ケアに関する図書、ビデオやDVD も数多くそろえています。現在主にM5学生の 実習に使用していますが、研修医、指導医にも 広く解放しておりますので、興味のある方は地 域医療部までご連絡下さい。
写真左端の壁に付いている白い箱がビデオ撮影用カメラ
医学教育においてコミュニケーションスキル の習得はますます重要性が高まっています。学 生・研修医をはじめ医療従事者のコミュニケー ション能力の向上を目指して、月1回のペース で医療面接セミナーを開催しています。模擬診 察室において数名のボランティアの方々に模擬 患者を演じてもらい、学生たちが医療面接のロ ールプレイを行います。その様子をテレビモニ ターで見ながら、参加者全員がコミュニケーシ ョンについての理解を深め技術向上を目指すと いう体験型学習法です。模擬診察室はビデオ撮 影・録画もでき、自らの医療面接の場面をビデ オで振り返ることが可能です。参加した学生か らは自分の面接の仕方について、多方向からポ ジティブフィードバックを受けて面接に自信が ついたとコメントをする学生もいます。第一線 で活躍されている先生方も自分の姿を振り返り 明日からの診療に役立つと思われるので、参加 ご希望の方は地域医療部までご連絡下さい。
地域医療部では、平成16年に医療ソーシャル ワーカー(MSW)1名、退院支援看護師2名が 新たに配置され本格的な医療連携・退院支援業 務を開始しました。業務分担としては、他機関 からの照会・問い合わせ、診療協力依頼への対 応、紹介医への連絡などは、主にMSWが担当 し、退院支援に関することや逆紹介の手続き、 地域医療機関、福祉関係機関との連絡調整は、 主に退院支援看護師が行っています。連携業務 の中で他機関からの紹介状に対する返書作成は 最も重要と考え、返書作成率の向上をめざして IBMと共同で開発したプログラムを使用して来 院報告書や情報提供書の発送を行っています。 このシステムは、他機関からの紹介状は、まず 医療支援課(医事課)受付で開封され基本情報 が入力されます。診療担当医は患者の診察後オ ーダリング端末を使用して紹介元へのコメント があれば入力します。入力されたコメントは翌 日に「来院報告書」として出力され、地域医療 部で発送しています。また、担当医は中間、最終報告の診療情報提供書もこのオーダリングシ ステムを利用して入力することが出来、1)その 場でプリントアウトして各診療科で活用する、 2)地域医療部に発送を委託するのどちらかを選 択することが出来ます。皆様のお手元に届く窓 付き封筒の来院報告書や診療情報提供書の大半 は地域医療部から発送しているものです。
地域医療部への連携に関する問い合わせ件数 は年々増加しており、院外からは主に連携担当 者・ケアマネ・MSWからの連絡・問い合わせ が多く、院内からは医師からの連絡・問い合わ せが多いです。このような連携業務の場にはさ まざまな問題が持ち込まれることも多く、重要 なものは週一回の地域医療部ミーティングで取 り上げ、部長を通じて病院長に報告することも あります。また、地域医療部イコール連携室で はなく、業務に関して医療支援課(医事課)と 重なる部分があります。今年度に就任した村山 貞之部長(併任:放射線科教授)の提案によ り、月1回医療支援課との合同ミーティングを 開催し双方の問題解決に努力しています。
退院支援は2名の退院支援看護師が中心とな り活動しています。大学病院での治療が一通り 終了した患者さんが納得の上、スムーズに在宅 や施設への療養に移行できるように支援してい ます。各病棟に入院時スクリーニング票を記入 してもらい、その中から地域医療部へ退院調整 依頼をすべき患者さんの選別とその手順を徹底 しています。当部では退院に難渋するケース、 社会福祉的な支援が必要なケースを担当し、依 頼件数は年々に増加しています。依頼の内訳は 「転院・転施設に関すること」が6割、「在宅退 院調整」が2割です。退院調整を行う中で他機 関と連絡を取り合うことが多く、ここからもさ まざまな連携に関する情報を吸収することが出 来ます。
地域医療連携の促進を支援する目的で平成16 年度から年2回のペースで院内外の医療関係者 を対象に「地域医療教育支援セミナー」を開催しています。これまでに行った講演会の題目と 講師を示します。参加者は院内外ほぼ半々で、 主に医療連携に熱心な医師、看護師、MSWの 参加が多いです。今後も定期的に開催して医療 連携の勉強の場を提供したいと思います。
第1回 |
向原茂明先生(長崎県立島原病院 病院長) 「地域ヒューマンネットワークに根ざした地域連携の実践」 2005年3月11日 |
第2回 |
野村一俊先生(独立行政法人 国立病院機構熊本医療センター 統括診療部長) 「連携パスの開発と地域展開について」 2005年9月30日 |
第3回 |
佐伯俊成先生(広島大学病院医系総合診療科助教授) 「がん患者と家族の心のケア −上手に聴く方法11か条−」 2006年1月21日 |
第4回 |
平井愛山先生(千葉県立東金病院 病院長) 「地域医療連携と電子カルテ −人材育成ヒューマンネットワークが鍵」 2006年9月29日 |
第4回地域医療教育支援セミナーの講師としてお招きした平 井愛山先生を囲んで
もう一つ地域医療連携に関する取り組みとし て、平成17年度から他機関の施設長に参加して いただき、地域医療連携連絡協議会を開催して います。第1回目は過去半年間に紹介患者が多 かった2病院の病院長にご参加いただき、琉大 病院の運営に関するさまざまなご意見を伺いま した。今後もこの会を発展させ、琉大病院の果 たすべき役割をご教示頂きたいと考えています。
このように地域医療部は連携業務を開始して から、院内外からのさまざまな連携に関する情 報が集まる部署となりました。その利点を生か して連携担当という立場から、琉大病院の果た すべき役割、進むべき方向について必要な情報 を病院のトップに発信しつづけたいと思いま す。以上
琉球大学医学部附属病院 地域医療部
医療連携担当 TEL:098-895-1359(直通)
教育・研究担当TEL:098-895-1331(直通)
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生年月日の西暦の下2桁、月2桁、日2桁を並べた6桁の数字です。
例)1948年1月9日生の場合、「480109」となります。