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呼吸器内科医としての勤務

仲本敦

独立行政法人国立病院機構沖縄病院呼吸器内科 仲本 敦

私は、平成元年に琉球大学医学部を卒業後、 当時、斎藤厚教授の主宰する琉球大学第一内科 に入局しました。最初の4年間は、大学院生と して呼吸器感染症、特にカリニ肺炎などの日和 見感染症の研究に熱中していました。その後 は、第一内科およびその間連病院にて、一般内 科の研修を積んできました。その中で、大学院 での研究経験が、臨床のいろいろな場面で役立 つことも多く、大学院時代、臨床に直結する、 様々な研究テーマを指導して頂いた斎藤教授に 改めて感謝を申し上げたいと思います。

平成13年4月より、呼吸器内科医として国立 療養所沖縄病院(現、国立病院機構沖縄病院) に臨床の場を移しています。肺結核と肺癌の患 者様の占める割合が多いのですが、間質性肺 炎、COPD、気管支喘息、その他、糖尿病、膠 原病などの患者様も担当しています。しかし入 院してこられる患者様が、単一の病気だけとい うことは少なく、やはり呼吸器内科とは言って も、総合的な内科の知識、診療技術はどうして も必要なものです。結核の患者様では、糖尿病 の合併率が高く、糖尿病のコントロールを充分 しないと、結核菌の排菌停止が遅延したり、耐 性化の原因になったりする危険性もあります。 また、結核薬として最も重要なリファンピシン は、降圧薬やステロイド、抗けいれん薬などと 拮抗作用があり、合併症としての高血圧や膠原 病、てんかんなどのコントロールが難しく、頭 を悩ますことも多くあります。抗結核薬による 薬剤性肝炎や薬剤性間質性肺炎などの合併にも いつも注意が必要です。肺癌の患者様も同様、抗癌剤治療の補助療法として用いるステロイド にて、糖尿病のコントロールが悪化しないか、 好中球減少時の日和見感染症にも細心の注意を いつも払っています。また、入院期間の長い肺 結核や、難知性である肺癌の患者様を担当する 場合は、患者様そして御家族を含めた、心のケ アの占める割合が高くなります。特に肺癌末期 の緩和医療においては、相当な時間とエネルギ ーをこの心のケアに当てなければなりません。

また、どの診療施設でも同じだと思います が、日常診療だけでなく、病院としての経営基 盤の確保、安全な医療環境の整備などに関する 様々な役割も担当していかなければなりませ ん。現況は、はっきり言って多忙で、なかなか 自分の自由になる時間が作れないのがかなりス トレスにはなっています。特に当院は去年、医 療機能外部評価のISO-9001を取得するため、 職員全員が一致して、診療システム、プロセス の再構築に努力してきました。その甲斐あっ て、ISO-9001を取得することができ、同時に 診療体制も大きく充実しています。

多忙な勤務医生活ではあっても、専門のスタ ッフがそろった充実した環境の中で、同僚の先 生方とともに自分の好きな呼吸器内科の診療が できることが、私の今の支えになっています。新 臨床研修制度が導入され、幅広い基礎的な診療 能力をすべての医療者が身につけることの重要 性が指摘されています。しかし、われわれは生涯 にわたって医療に携わっていくわけですから、自 分の興味のある専門分野も必ず作るということ は重要なことだと今でも私は考えています。