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沖縄県立宮古病院院長
安谷屋 正明 先生

安谷屋正明
P R O F I L E
昭和24年
沖縄県平良市に生まれる
昭和43年 沖縄県立宮古高校卒業
昭和51年 神戸大学医学部卒業
昭和51年〜52年 神戸大学小児科
昭和52年〜57年
加古川市民病院小児科
昭和57年 沖縄県立宮古病院小児科
平成4 年 沖縄県立宮古病院小児科医長
平成13年 沖縄県立宮古病院副院長
平成18年 沖縄県立宮古病院院長
趣味:ゴルフ

離島病院の医師確保に ご協力をお願いします。

Q1.宮古地区の中核病院としてどのようなお 仕事していますか。

県立宮古病院は宮古保健医療圏域の中核病院 として、救急医療、急性期医療、精神医療を重 点的に担っています。離島においては救急医療 が非常に重要な比重を占めると考えて整備を行 っています。

地域の医療機関との役割分担・連携をふまえ て、なるべく沖縄本島に行かなくてもすむよう な地域完結型医療を目指しています。その為に 専門医師の確保、高度医療機器の整備に努めて きましたし、今後も県立宮古病院の理念である 「地域と心かよわせ共に歩む」に沿って地域の ニーズを考えながら整備する必要があると考え ています。

Q2.県立病院医師の過重労働が問題になって いますが、県立宮古病院ではどうでしょうか。

診療科によって、業務の過重の差はありま す。産婦人科医師は県立中部病院からの1名の 派遣医師で対応しています。循環器内科も1名 体制で病棟、外来、救急と大変で2名体制にす る必要があります。

また、整形外科も3名では業務量が多いと考 えています。外科医師も当直回数が多いと考え ています。当直した翌日は休みを与えられる体 制にしたいと思いますが・・・。

Q3.産婦人科などの医師不足が言われていま すが、県立宮古病院の現状と当面の対策をどの ようにお考えですか。

産婦人科医師の問題ですが、県立宮古病院の 産婦人科の定数は2名で、これまで常勤医師と 県立中部病院からの1年間のローテーション医 師で診療してきました。常勤医師の病休によ り、平成16年度は県立中部病院から(那覇病 院の応援も含む)2名の医師を派遣してもらい ましたが、平成17年度から県立中部病院の1〜 2ヶ月ローテーション医師1名で対応していま す。宮古圏域には4カ所の産婦人科診療所があることから、診療所と連携を取りながら県立宮 古病院は周産期部門を中心に診療を行い、外来 は紹介患者のみとし、婦人科の手術を必要とす る患者さんは沖縄本島の病院に紹介していま す。10月からは、県立中部病院から2名(後期 研修医師を含む)の医師が派遣される予定で、 住民の要望に応えられると考えています。

もう一つは脳神経外科医師の不在の問題です。

県立宮古病院の脳神経外科は、平成5年に琉 球大学からの医師派遣により開設しました。

平成11年からは福岡大学からの医師派遣と なりましたが、平成17年3月で医師派遣が中止 となりました。

平成17年4月〜7月: 宮古島徳洲会病院を退職した医師を臨任 医師として採用。

平成17年8〜9月: 県立病院の脳神経外科医師1週間毎のロ ーテーション。

平成17年10月〜3月: 脳神経外科医師の不在、県立那覇病院、 那覇市立病院への脳外科患者搬送体制、脳 神経外来は宮古島徳洲会退職医師の業務応 援で週2回の継続。

平成17年4月から現在まで県立南部医療セン ター、県立中部病院からの脳外科医師派遣で週 1回の外来は継続しています。

今後も、病院事業局と一緒に取り組みながら できるだけ早く脳神経外科医師確保を行いたい と考えています。

Q4.県立病院と地区医師会との連携はうまく いっていますか。

私の知る限りでは、地区医師会と県立病院と の連携が取れているのは宮古が一番だと思いま す。地区医師会を先頭に宮古圏域の医療関係機 関が連携して取り組んできたトライアスロン大 会の医療班としての関わりが、この関係を育ん できた大きな要因と考えます。

年1回開催されるライダーカップ(地区医師 会対宮古病院のゴルフ対抗戦)、宮古地区医師交流会、忘年会、新年会などの交流会もこの関 係に良い影響を与えてきたと思います。

Q5.地域住民の健康に関して行政の役割は大 切だと考えられますが、宮古病院の現状に対し て市民や市長、議会はどのように対応していま すか。

県立宮古病院の脳外科医師・産婦人科医師 の問題や病院の老朽化・狭隘化に伴う改築問題 に、多くの関心を持っていると思います。

今年に入り国会議員、県会議員、市会議員が 県立宮古病院の視察に訪れ、状況を把握して下 さったと考えています。また、近いうちに上記 の問題に関して市民大会が開催されると聞いて います。

Q6.琉大から派遣される医師の中には県立宮 古病院での勤務を楽しく思っている医師が多い のですが、楽しさの源はなんでしょうか。

離島という宮古圏域の中で、救急医療に関し て県立宮古病院の救急室を受診することが殆ど ですので、勤務する医師にとって多くの疾患を 経験する利点があると思います。

宮古病院医局は常勤医師、琉大派遣医師、県 立中部病院派遣医師、熊本大学関係医師などで 構成されていますが、派遣先に関係なく医師間 の関係が良好で、診療科毎の垣根が低く色々な ことを相談しやすい環境があると思います。

また、仕事以外に野球クラブ、ゴルフクラブ などの活動が活発で、医師間の交流、他のセク ションとの交流があり、県立宮古病院で楽しく 勤務できる一因になっていると思います。

Q7.先日琉大の学生さんが病院を訪れ実習? をしていますが、このような企画をどのように お考えですか。

琉球大学医学部の「離島医療人養成教育プロ グラム」によって、今年度から琉球大学医学部 の4年次学生が実習に来るようになりました。 これは、現在問題になっている診療科による医 師偏在や地域偏在の問題を長期的視点で捉え、学生の頃から、『離島を考え・思う』医師を育 成するプロプラムだと思います。県立宮古病院 に実習にきた多くの学生が「今まで考えていた 離島医療と実際に見る離島医療は違う」と話し ます。

このプログラムが今後も継続して、将来離島 を考える医師が多く育つことに期待しています。

Q8.現在離島、僻地医師確保対策事業が議論 されています。宮古病院にも多くの困難な問題 があると思いますが、どのような解決策を考え ていますか。

離島病院の医師確保はこれまで病院の院長が 行ってきましたが、現在、それでは無理がきて います。今年度から沖縄県も「公営企業法の全 部適用」となりました。病院事業局が中心とな り、沖縄県立病院全体としての医師確保、医師 の人事交流、育成を行う必要があると考えま す。産婦人科や脳神経外科など現在不足してい る医師や将来不足が予想される診療科に関して 基幹病院的な病院での医師の教育、育成が必要 と考えます。そのためには、現在の医師定数枠 では対応できないと考えます。早急にこの定数 枠を検討する必要があると考えます。

また、現在、沖縄県医師確保対策検討委員会 で、医師不足に対する対策が協議されていま す。琉球大学医学部、沖縄県医師会、沖縄県が 同じテーブルで医師確保に関して協議すること はすばらしいことだと考えます。協議された医 師確保対策を具体的にどこが中心となり、どう 取り組むかが課題かと考えています。

県立宮古病院が抱える問題の1つに老朽化、 狭隘化の問題があります。患者さんが安心して 医療を受けられ、同時に医師も安心して医療が できる施設や機器の整備は重要だと考えていま す。病院の改築に向けての努力も医師確保の対 策の1つと考えています。

インタビューアー:副会長 玉城信光