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日本手術医学会教育セミナー開催の報告

久田友治

琉球大学医学部附属病院 手術部 久田 友治

日本手術医学会の教育セミナーが6 月3 日に 沖縄で開かれた。日本手術医学会の会員は、手 術部や材料部の看護師、医師(外科系医師、麻 酔医)、臨床工学技士、滅菌技士等であり、手 術がこれらの職種により支えられているのは言 うまでもない。しかし、沖縄にいるこれらの職 種が手術医学に関する学会や研修に参加するに は多くの旅費が必要なため、最新の勉強をする ための環境が充分ではない。このセミナーは日 本手術医学会が全国各地の持ち回りで開催して おり、沖縄で開催することは意義があると考 え、開催のお世話をしたことから、その報告を させていただく。

講演の要旨

セミナーのテーマを「チームで支える安全な 手術」とし、表で示す感染対策を中心とした五 つの講演が行われた。ここでは紙面の都合か ら、我が国の感染対策におけるリーダーで、日 本手術医学会の理事長でもある大久保憲先生の 講演について紹介する。講演の要旨は次のよう であった。

  • 質の高い医療のため病院運営における感染 対策は大きな課題である。
  • 主なガイドライン(GD)として日本医療福 祉設備協会の「病院空調設備の設計・管理 指針」や米国CDC からのGD がある。
  • 手術室の床、壁等の環境表面が感染源にな るのは稀であり消毒の必要はない。
  • 手術室の建築設備で大切なのは、周辺から 塵埃が入らないような密閉性、水を浸透さ せない壁、清浄空気の供給、清掃し易い構 造である。
  • バイオクリーンルーム以外では超高性能フ ィルターは必ずしも必要でない。
  • 清潔不潔の動線が交差しないような厳しい 設定は不要で、履物交換に感染対策の根拠 はない。
  • エビデンスのない対策は感染防止効果がな いばかりか、不経済で無駄なことが多く、 作業者に有害な場合がある。従来の感染対 策の再評価を行って、エビデンスのない対 策を切り捨てて、合理的な感染対策を実践 していく必要がある。

コメント

看護師は手術を支える職種では人数が最も多 いと共に、多職種が参加する学会や研修会にお いても積極的である。本セミナー参加者250 名 の中でも看護師が多くを占め、講演に聞き入っ ていた。医師では手術における感染対策などの 外科総論とも云える研修をする機会が充分でな いと考えられる。外科を目指す研修医を始めと する若い医師の参加を図ったが、多忙なためか、 必ずしも参加は多くなく次回に期待したい。

表.日本手術医学会教育セミナーのプログラム   
「安全な手術のための感染対策」大久保 憲(東京医療保健大学)
「あなたを守り、患者を守る職業感染対策」遠藤和郎(沖縄県立中部病院)
「安全な手術を支えるためCE にできること」戸畑裕志(久留米大学・CE)
「再使用医療器械の洗浄について」伏見 了(大阪大学・材料部)
「安全な手術のためのシステムを目指して」久田友治(琉球大学)