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「骨髄バンク推進月間
 (10/1〜 10/31)」に因んで

百名伸之

沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 百名 伸之

T.はじめに

白血病、重症再生不良性貧血、先天性免疫不 全などの造血器疾患は、30 年程前まで不治の病 でした。それは現在も一部の小説、ドラマ、ド キュメンタリーに脈々と受け継がれています。 人の命の輝き蝕むものとしてのステータスを歴 史的に獲得しているのでしょう。しかし今現 在、決して死の病ではありません。分子生物 学、医学の目覚ましい進歩は病態の解 明と生存率の劇的な改善をもたらしまし た。中でも、医学史上特筆すべき業績が 骨髄移植です。そのことは、骨髄移植術 を確立した米国のE.D.トーマス博士が ノーベル賞を受賞したことでも明らかで しょう。

U.骨髄バンクについて

さまざまな原因により骨髄、造血細胞 が機能不全に至った場合、先ず内科的 治療が試みられます。化学療法、免疫抑 制療法などです。しかしそれらが無効の 場合、骨髄移植が考慮されます。すなわ ち病的骨髄を健常人の正常な骨髄と入 れ換えるという治療です。その場合、骨 髄提供者(ドナー)が必要ですが、その 条件としてHLA が一致していなければ なりません。ご存知のようにHLA には かなり多様性があり、最も一致率の高い 同胞間でも1/4、非血縁となると数百万 〜数万分の1という確立です。現在のよ うに少子化の時代では一致同胞が得ら れる可能性は低く、非血縁ドナーの重要 性は今後確実に増していくでしょう。

骨髄バンクは非血縁ドナー確保のために設立 されました。世界の40の国と地域にあり、日本 では1993年、それまでの各地域民間バンクを 統合する形でスタートしました。厚生労働省主 導のもと、骨髄移植推進財団が主体となり、日 本赤十字社および地方自治体の協力により公的 事業として行われています。その使命は善意か らの骨髄提供を仲介、推進することで、これまでに多くのドナー登録者を集め、患者さんとド ナーの橋渡し役を努めてきました(図1、2)。 平成18年7月時点で、有効登録数253,779人、 累積移植実施数は7,581件に上っています。

図1
図2
V.沖縄県の状況

沖縄県では骨髄バンクを支援する会の代表で ある上江洲富夫氏(赤十字血液センター職員) を中心として、公的バンク設立前の1990 年に 九州骨髄バンク推進連絡会議沖縄支部として支 援活動がスタートしました。月1 回の定例会を持ち、シンポジウムや講演会の企画、ポスター 掲示、パンフレット配布等の広報活動を行って 骨髄移植の啓蒙、公的バンク設立に大きな役割 を果たしました。またバンク設立後は血液セン ターの全面的協力で献血とリンクさせた登録受 付や、講演会会場での登録会を企画していま す。彼らの献身的活動により、人口当りの登録 数は全国で群を抜いてトップにあります(表 1)。バンク目標の達成率も249.1%と驚異的な高 さです。これは県民として誇るべきことです。 ゆいまーる、命どぅ宝の精神が生きているから でしょうか。唯一の問題点は、本県においてバ ンクドナーの骨髄採取認定施設がないことで す。そのためドナーとなられた方は骨髄採取の ため本土まで出向かねばならず、多大な負担を おかけてしいます。しかし近々に琉球大学附属 病院が認定施設となる予定で、これによりドナ ー登録がさらに進むことが期待されます。

表1.

表1.バンクの現況

W.骨髄バンク推進月間について

財団法人骨髄移植推進財団は安定した財政基 盤の確立を目指しつつ、コーディネートの迅速 化・適正化のさらなる推進と、目標である30万 人ドナー登録の早期達成、非血縁者間骨髄移植 仲介件数の増加を3 本柱とした目標を設定して います。この事業の進展のためには骨髄移植に 対する国民の理解を深め、善意の提供希望者登 録を促進することが緊要です。そこで厚生労働 省、都道府県、政令市、骨髄移植推進財団は 「骨髄バンク推進月間」(10/1 〜 10/31)を実施 し、広く国民に対して骨髄移植に対する正しい 知識を普及啓発するとともに、一人でも多くの 国民が骨髄提供者として登録するよう呼びかけ を行い、我が国における骨髄移植対策の推進を 図ることとしました。

沖縄県では、県医師会、日本赤十字社県支 部、県骨髄バンクを支援する会の共催で実施さ れます。予定行事は以下の通りです。

(1)骨髄バンク推進月間の周知

  • ア.ポスター・パンフレット等を関係団体に配布
  • イ.電光広報塔による広報
  • ウ.新聞広告掲載。
  • エ.県ラジオ番組「ラジオ県民室」での放送
  • オ.県政広報番組「うまんちゅひろば」での放送

(2)骨髄バンク推進街頭キャンペーン(写真1)

  • 日時:平成18年10月12日(木)14:00〜
    場所:パレットくもじ前イベント広場

(3)ドナー登録会

  • 献血と並行して行う。

(4)骨髄バンク講演会及びドナー登録会

写真1

写真1.平成17年度 街頭キャンペーン
(パレットくもじ前広場)

X.おわりに

骨髄移植で始まった造血細胞移植医療は、基 礎医学、医療技術の急速な進歩に伴い、大きく 変貌しつつあります。この10 年の間にも、末梢 血幹細胞移植、臍帯血移植、CD34 陽性幹細胞 移植、HLA 不一致移植、骨髄非破壊的移植な ど、造血細胞のソース、ドナー選択基準、移植 法は多様化しています。このことは患者さんに とってより適切な移植選択ができ、またそれま で不可能であった移植が可能となるなど、大き なメリットとなっています。しかし、新しい移 植技術はまだ年数が浅く、適応疾患、合併症、 長期予後等についてまだエビデンスが十分得ら れていないことも事実です。これに対し、HLA 一致骨髄移植は30 年以上の歴史があり、医学 上の様々な検証を十分に経ているため、現在で も移植の主流であることは間違いありません。

この度の「骨髄バンク推進月間」につきまし て、医師会会員諸氏のご協力を切に願うもので あります。