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第38回九州地区医師会立共同利用施設連絡協議会

理事 金城 忠雄

去る7月16日(日)・17日(月)の2日間に 亘り、大分市医師会主催で大分市大分東洋ホテ ルにおいて、みだし協議会が開催されたので、 その概要について報告する。


16日の第1日目は、「医師会病院部門」「臨床 検査センター部門」「検診部門」「高齢社会事業 部門」の4分科会に分かれて、発表・討論が行 われた。

本会が参加した第3 分科会「検診部門」で は、熊本市医師会から「小児生活習慣病予防検 診」、大分市医師会から「脳ドックにおける検 診センターのかかわり方」、天草郡市医師会か ら「運営上の問題点と今後の対応」、沖縄県中 部地区医師会から「人間ドックの問題点と受診 率向上の具体的方策」について、4医師会から 報告が行われた。各報告概要は次のとおり。

1.「小児生活習慣病予防検診について」

熊本市医師会ヘルスケアセンター
小児生活習慣病予防検診班長 杉野 茂人

当センターの小児生活習慣病予防検診は熊本 市内の小学(4年)生を対象にして昭和63年よ りパイロットスタディを、血液検査などを行う 現在の形式で平成8年より続けているとの報告 があった。

肥満度20%以上の児童数は平成17年度、小 学4年生で児童数の約9%〜10%であった。こ れらのこどもたちのうち、何らかの血液検査異 常を有するか肥満度40%以上の児を有所見者 とすると、該当するこどもは受診者の約40%で あった。血液検査異常では高脂血症が最も多く、次ぎに肝機能障害が多くみられた。このよ うな生活習慣病予防軍の指導は容易ではなく、 昨年度、熊本市からの予算がカットされたこと をきっかけに、教育委員会、養護教諭も一緒に 検討会を開き、有効な実行力のある方策を模索 している。できれば中学生でもう一度検診する 方向で検討している。又、養護教諭による肥満 指導等のパンフレットを作成しているが、児童 検討手帳も作成する準備を進めているとのこと であった。

2.「脳ドックにおける検診センターのか かわり方について」

大分県地域成人病検診センター
検診部長 谷口邦子

当検診センターで行なっている脳ドックは平 成4年11月よりスタートしており、当初は1泊ド ックでスタートし、隣接する病院(アルメイダ) と提携して脳外科外来、CT/MRI、頭頚部X線、 EEG、大脳高次機能検査などを病院で行い、残 りの血液、内科診察などを検診センターでとい うスタイルで行ってきたとの報告があった。

初年度からの受診者数は平成5年度は個人の みで32名、6年度から団体、日帰りコースも受 け入れ、9年度に82名となった。その後、検診 センター独自でMRIを購入した結果、16年度 は655名という状況であった。大脳高次機能検 査も検診センターでスタッフを養成し、判定に も基準を設け、多数の受診者に対応している。 現在、異常のない人には結果を書類で伝え、緊 急を要する人、詳しい説明が必要な人には病院 の脳外科医が対応しているとのことであった。

3.「運営上の問題点と今後の対応」

天草郡市医師会立 天草地域検診センター
医長 谷村正憲

当センターの背景と現状を説明された後、事 業実績は、センターの認知度の高まりとともに 僅かずつ伸びてきたが、1)医師・スタッフの効 率的な配置と雇用確保、2)他機関との競合、連 携体制、3)医療圏における低い受診率が問題と なっているとの報告があった。

今後、県内の他医療機関より高齢者率が高い 当該地区にあって、今一度積極的にセンター内 外にアピールする必要がある。移動検診は複 合・総合的な健診形態への体制づくりを考え、 大型健診バス購入を検討する。又、更なる新規 受診者数の掘り起こしとリピーター的受診者双 方の確保に向けて、地域住民への「健診の重要 性」「健康への意識改革」の啓発なども盛り込 んだ講演普及活動なども重要となってくるとの ことであった。

4.「人間ドックの問題点と受診率向上の具体的方策」

沖縄県 中部地区医師会 理事 松嶋顕介

当医師会立成人病検診センターでは、昭和63 年から人間ドックを開始しており、開設の5年 間は人間ドックの契約先開拓や政府管掌成人病 予防検診の指定を受けることで順調に収入が増 加してきた。又、THPサービス事業所の認定、 人間ドック受診者の客単価を上げるために、骨 粗しょう症検診、マンモグラフィー、各種希望 検診の実施や1日の受診人数を増やすために 「午後ドック」、内視鏡10人体制等を行ってき た。更に、人間ドックのコスト削減のために、 検診システムのオンライン化、臨床検査試薬の 見直し、胃部レントゲン、眼底カメラのデジタ ル化を進めているとして、これまでの検診セン ターの収益増加方法について報告があった。 今後は、1)建物の老朽化、2)問診聴取、保健 指導の部屋の確保、3)待ち時間の解消、有効利 用が課題であるとのことであった。

報告が行われた後会場から質疑があり、受診 率対策、行政からの予算カット、機器の購入 (MRI購入の採算性)、データの確保、人件費の 問題、ドクター確保の問題等が提起され活発な 議論が行われた。


17日の第2日目は、大分市医師会の杉村会長 より、本協議会の日本医師会への要望事項につ いて説明された後、特別講演が2題あり、概ね 次のような講演が行われた。

特別講演T 
 演題T「医師会共同利用施設生きのこりへの私案」
 U「日本医師会新執行部の活動及び方針について」

日本医師会 常任理事 飯沼雅朗

○医師会共同利用施設の成り立ち

医師会病院は、故武見太郎元医師会長が地域 医師会活動の拠点として提唱し、昭和28年に 第1号の栃木県下都賀郡市医師会病院を設立、 平成18年7月現在では、全国に87ヵ所の医師会 病院が設立されている。その内、地域医療支援 病院の承認を受けている施設は38施設となって おり、非常な発展を遂げている。

また、同時期に医療の高度化への対応と地域 医療の向上を目的に、故武見太郎元医師会長の 提唱で医師会立臨床検査センター・健診センタ ーを開設されている。

平成12年4月からは、いわゆる高齢化社会と 地域ニーズに対応した介護保険関連施設が出来、 今年の4月に地域包括支援センターが加えられ、 非常にスケールの大きなものになっている。

○医師会共同利用施設の役割

施設の役割は、地域密着、地域ニーズに的確 に対応した活動、各種健診、健康教育、予防医 学活動を行うことであり、また、高額検査機器 の共同利用、診療情報の交換、連携による良質 で高度な医療を提供することである。その結果 として、地域の保健・医療・福祉の充実、向上を図ることを最終目標としている。

○医師会共同利用施設の現状

施設の現状は、診療報酬の引き下げ、人口 減、受診率・受療率の低下で、厳しい運営環境 である。

また、公的病院の移譲、公設民営で医師会運 営など経営形態が多様化している。将来はこの ような形態が増えてくるようであるが、某公立 病院が民間に権利を移譲して、うまくいかなく なった例もあるので、慎重に事を構える必要が ある。

○生きのこりへの私案

医師会病院は、地域支援病院、地域中核病 院、自治体病院的役割など、地域ニーズに合わ せた運営が必要である。

ハード面で、施設の建て替え、機器の購入 は、国・自治体から全額を出してもらうような システムをつくる必要がある。

ソフト面では、医師、薬剤師、看護職員、レ ントゲン技師、管理栄養士、保健師、その他医 療関連従事者を臨床試験コーディネーター養成 研修会へ派遣するとともに、医師会病院で医師 の主導で治験を実施する用意をしていただきた い。厚生労働省が医師主導による治験に非常に 関心をもっており、大きな予算もついている。

なお、健診は、2008年から保険者に義務化 されることになり、健診項目は保険者との話し 合いになるので、交渉の方をよろしくお願いし たい。この新健診の保健指導は医師、管理栄養 士、保健師で、指導を行う施設は、敷地内を全 て禁煙にしなければならないとしている。


また、医師会立臨床検査センター・健診セン ターの運営は、1)地域の健康を守る(健診充実 による信頼関係、地域住民のデータバンク)、 2)小回りの利く体制(正確・迅速な活動、地域 密着型の活動)、3)会員重視の活動(会員施設 の診療支援、強固な地域医療連携)の核になる ことである。

ソフト面で、検査料を値下げし、判断料を値 上げして、提供サービス・価格を安定させる必要がある(検査差益をゼロにする方策を考え る)。

更に、試薬等を共同購入し、資材購入コスト 削減を図ることである。


介護関連施設については、特別養護老人ホー ム、介護老人保健施設、介護療養施設の3施設 をなくそうという話しがあるので問題である。 先生方の意見をお伺いし、大いに話題にしてい きたい。

又、今年の4月に地域包括支援センターが加 えられ、地域支援事業、新予防給付のケアマネ ジメントを行うことになっているので、注目し ていきたい。

○日本医師会新執行部の活動及び方針について

先ず、日医総研を日本医師会のシンクタンク として機能させていきたいと考えている。研究 員も少ないので、補充していきたい。日医総研 のデータは、行政や政治家の先生方と折衝する 際に、是非とも必要である。

また、広報の充実を考えており、毎週記者会 見を開いて、日医からいろいろと発信させてい ただいている。特に、会員の声を直に聞いて、 医療政策立案のための窓口を広げたい。

更に、支持政党については、政治家の先生方 とお話しする機会を増やし検討しており、唐澤 会長は行政とのパイプを太く強く一生懸命やら れているところである。

特別講演U
 演題「名水を科学する」

日本文理大学 教授 河野 忠

名水の意味、世界にある名水とミネラルウォ ーター、日本の名水の水質を中心としていろい ろな伝説があるので、そのあたりの水質の関係 をみていきたいとして講演をされた。



印象記

金城忠雄

理事 金城 忠雄

平成18年7月16日(日)・17月(月)の2日間にわたり、大分市医師会主催、第38回九州地区 医師会立共同利用施設連絡協議会にオブザーバーとして参加した。沖縄県医師会理事になって初 めての出張である。

公務員生活が長いので、医師会員が共同で施設を設立して有効利用していることに余りにも不 案内であった。

報告発表は、医師会病院部門、臨床検査部門、検診部門、高齢社会事業部門に分かれて討論が あった。私は検診部門を聴講した。各々医師会員は、工夫し反省をしつつ懸命に活動している事 が理解できた。

ところで、廊下が、たばこの煙で不愉快であった。医療関係者がこんなことで良いのかと思っ ていたやさき、座長の那覇市医師会長友寄英毅先生が、演題発表に入る前に禁煙を訴えた。いわ く、沖縄では、医師会が主導して学校や公的建物はもちろん那覇市のメインストリートである国 際通りも禁煙道路にしようと議会対策中である。禁煙活動は医師の務めだと、当を得た挨拶をさ れた。名座長ぶりが非常に印象に残った。

2日目は、特別講演があり、日本医師会常任理事飯沼雅朗先生は、これまで日医総研を活用し きれなかったが、これからは日本医師会のシンクタンクとして強力に活用すると心強い挨拶があ った。

各々の地区医師会が、懸命に活動していること、非常に勉強になった。