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第12回沖縄県医師会県民公開講座
ゆらぐ健康長寿おきなわ
「脳卒中 〜大事な人が倒れたら〜」

玉井修

ふれあい広報担当理事 玉井 修

ディスカッション風景

ディスカッション風景
(左より、笠井先生、銘苅先生、伊佐先生、下地先生)

会場風景

会場風景

【800人の聴衆で熱気のある会場】

すっかり定着した感のある県民公開講座は、7 月22日(土曜日)午後一時半よりロワジールホ テルの天妃の間において開催されました。開催 前の早い時間から多くの方が詰めかけ、会場は 約800人の聴衆でいっぱいとなりました。会場 を眺めてみますと、実際に麻痺をお持ちの方も 見受けられ、切実な思いが伝わって参りました。 脳卒中に対する県民の関心の高さと、回復へ向 けて、医療に対する大きな期待を窺わせました。

私の司会で、まず、宮城信雄沖縄県医師会会 長よりご挨拶頂き、更に沖縄県福祉保健部長の 喜友名朝春様よりご挨拶頂きました。

その後座長の沖縄県立南部医療センター・こ ども医療センター副院長の下地武義先生に進行 をバトンタッチして各専門の先生方からご講演 頂きました。下地武義先生には脳卒中の大まか な概念と、t-PA(tissue plasminogen activator) の劇的に効いた症例の呈示をして頂き、 早期発見が鍵である事を強調して頂きました。 続いて琉球大学医学部高気圧治療部の伊佐勝憲 先生には脳卒中を予防する10ヶ条を提示頂き、 生活習慣病を中心とした予防が重要である事を お話頂きました。更に浦添総合病院・脳卒中セ ンター長の銘苅晋先生には沖縄県の脳卒中は真 夜中に発症のピーク時間があり、これは他の県 には見られない特徴で、飲酒と何らかの関係が ある可能性をご指摘頂きました。沖縄赤十字病 院脳外科部長の笠井直人先生には実際にクモ膜 下出血の原因となる脳動脈瘤の治療で行われる クリッピングの様子や、血管内治療(コイル塞 栓術)の様子を動画で見せて頂き、鮮やかな手 術の様子に会場からは驚きと感嘆の声があがっ ていました。

【会場からのご質問にお答えして】

5分ほどのインターバルのあと会場から回収 した質問からいくつかを抜粋して、講師の先生 方をパネラーとしてディスカッションを行いま した。脳卒中の予防に対する質問があり、高血 圧や高脂血症の治療継続が如何に重要であるか を強調して頂きました。また、講演の中で盛ん に先生方が「血栓が飛ぶ、飛ぶ」と言っている けれども飛ぶとはいったいどういうことです か?という質問があり、私たちが普段使ってい る「飛ぶ」等という表現が一般には分かりにく い表現になっているのかも知れないと改めて考 えさせられました。

また、最近よく耳にする脳ドックですが、ど のように利用すべきなのか、どのような頻度で 受けるべきなのかというご質問があり、脳卒中 の予防にかなり関心が高いことを感じました。 リハビリテーションや介護保険の問題など時間 が少なくてあまり多くの時間が割けなかったテ ーマもありますが、会場からの質問も多く寄せ られており、後日機会がありましたらじっくり 取り上げていきたいテーマだと思いました。予 定時間をオーバーしてもディスカッションは尽 きず、会場が閉まる10分前に公開講座終了と いう慌ただしさでした。会が終了しても余韻が 残り、会場のあちらこちらで講師の先生方が聴 衆やマスコミに捕まってミニレクチャーらしい 状況になっておりました。私もエスカレーター の前で捕まり、素晴らしい講演会だったと嬉し い言葉をかけて頂きました。

【講演会終了後の座談会】

講演会が終了してまだ余韻も冷めやらぬ会場 から、別の会場に移動して講師の先生方と座談 会を開催しました。座談会には沖縄タイムスか ら銘苅達夫社会部長も同席されました。講師の 先生方は会場の熱気と関心の高さには一様に驚 きを感じたようです。タイムスの銘苅部長から は沖縄の夜型社会を反映してか、真夜中に脳卒 中の発症ピークがある事に少なからずショック を受けたとの事です。

また、高血圧や高脂血症の充分な治療はもち ろんだが、高血圧などは体重をおとすことによ ってかなり効果が期待でき、場合によっては内 服治療を止めることができるという事実は、高 血圧の薬は一旦始めれば一生飲み続けるのだと いう社会一般的な考えを改める事が出来、減量 に対して大きな意義付けを与えるインパクトの あるアドバイスでしたとご感想を述べて頂きま した。リハビリテーションや介護保険の問題、 アスピリン服用に対するエビデンスの問題な ど、座談会では多くの事が話題になりました。 今後もできるだけ機会を作って、県民に広く、 脳卒中とそれに関わる様々な事を情報発信して いきたいと思います。


下地武義先生

下地武義先生




昭和44年3月 順天堂大学医学部卒業
昭和48年4月 米国Northwestem University脳神経外科留学
昭和54年4月 順天堂大学脳神経外科講師
昭和54年6月 Northwestem UniversityのResident program終了
平成元年4月 沖縄県立南部病院脳神経外科部長
平成 5年4月 沖縄県立那覇病院脳神経外科部長
平成13年4月 沖縄県立那覇病院総合診療部長
平成15年4月 沖縄県立那覇病院副院長
平成18年4月 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター副院長

伊佐勝憲先生

伊佐勝憲先生




昭和44年1月 那覇市出身
平成 7年3月 琉球大学医学部医学科卒業
平成 7年4月 琉球大学医学部第三内科入局
平成 9年4月 国立循環器病センター内科 脳血管部門レジデント
平成12年4月 琉球大学医学部附属病院 第三内科医員(神経内科)
平成15年4月 琉球大学医学部附属病院救急部助手
平成16年4月 琉球大学医学部附属病院 高気圧治療部助手
日本内科学会認定内科専門医
日本神経学会神経内科専門医 医学博士

笠井直人先生

笠井直人先生




昭和54年 東北大学卒業
昭和60年 日本脳神経外科専門医
昭和61年 医学博士
平成 6年 沖縄赤十字病院勤務
現在に至る

銘苅晋先生

銘苅晋先生




昭和58年3月 大阪大学医学部卒業
昭和58年4月 大阪大学医学部附属病院 第二外科で研修
昭和59年4月 琉球大学医学部附属病院 脳外科入局
平成2年11月 合衆国ハニントン医学 研究所に留学
平成 9年6月 浦添総合病院勤務
脳神経外科専門医・日本脳卒中学会専門医



当日おこしいただいた方々の中から、数名の方にインタビューさせていただきましたの で、下記のとおり3名の方のご意見・ご感想を掲載致します。

本会の広報活動にご協力いただきまして、誠にありがとうございました。

インタビュー1):本日の講演会に参加されての感想をお聞かせ下さい。また、今後の日 常生活で、どのようなことに気をつけようと思いますか。

インタビュー2):医師会への要望をお聞かせ下さい。

1)大変有意義な内容でよかっ たです。

食生活、運動にも積極的 に関わっていきたいと思い ます。

2)脳疾患を患い、回復なされ たご本人かご家族の方の発 表も聞きたかったです。

57歳・女性・自営業

1)高血圧の治療中ですが、脳 卒中のリスク(母親が脳卒 中だった)があるため、予 防に細心の配慮をしていま す。かかりつけ医とよく相 談はしますが、多くの知識 を得て、いざという時の手 段を考えておくための有効 な講演でした。

脳卒中の治療の現状を各 専門医の実体験を通しての 講演は、医師会ならではで あり、医師会しか出来ない 企画だと感激します。

脳卒中のリスクを背負っ ているので、専門施設の選 択を考えるいい機会となっ た。

2)今後も専門 医の講演を企画継続してほしい。

匿名希望

1)神経内科的なお話をもう少 し希望します。

薬やその副作用について の先生方のお話は大変勉強 になりました。ありがとう ございました。

日常生活においては、第一に食生活。次に 90分ウォーキング、水分3リットルを飲むことを目標にします。 (現在は2リットル弱です)

後方にいましたが、テレ ビの画面がうまく調整でき ていないようで見づらかっ たです。

2)内分泌科と神経内科の違 いがよくわからず、病院の 選び方がわかりません。そ のへんの説明を講座等でお願いできたらと思います。

講座の回数を増やしてい ただけると幸いです。

52歳・女性・無職