沖縄県赤十字血液センター 宮国 毅
今年も7月1日から31日までの1ヶ月間、全国 一斉に「愛の血液助け合い運動」が展開されま す。このキャンペーンは、「血漿分画製剤を含む すべての血液製剤」を国民の献血によって確保 する体制を早期に確立するため、厚生労働省・ 都道府県および日本赤十字社が主催し、県医師 会や歯科医師会、マスメディア・報道機関等多 くの組織や団体の協力のもとで展開されます。
かつては子沢山の家庭が多かった県内でも出 生率は低下の一途を辿り、一世帯あたりの子供 の数は約1.7人と少子化の傾向は顕著でありま す。それに伴って20歳代30歳代の献血者数は 年々低下しています。加えて昨年2月に、国内 で初めて変異型クロイツフェルト・ヤコブ病患 者の発生が確認されたことを受け、予防的観点 に立った献血の制限が実施されています。これ に伴い献血者のさらなる減少が予想されること から、今後一層の献血思想の普及啓発をはかる ことが目的です。すなわち広く県民各層の間に 献血に関する理解と協力を求めるとともに、特 に今後さらなる推進が必要な成分献血および 400ml献血への協力をお願いすること。また血 液製剤のユーザーである医療機関に対しては血 漿製剤(特に新鮮凍結血漿:FFP)の適正使用 への協力を呼びかけていくことであります。
キャンペーンのパーソナリティは歌手の氷川 きよしさんで、ポスターやリーフレット、さら には新聞やテレビなどのマスメディアにも登場 し、国民に献血を呼びかけます。また運動期間 中には表1に示しますように、県内でも各種イベントが予定されています。
まず本運動のスタートにあたり、7月4日(火) の午後4時から、パレット久茂地イベント広場 においてキャンペーンを実施します。これには 行政側から県と那覇市、ボランティア団体とし て赤十字奉仕団、学生献血推進協議会、ライオ ンズクラブなどが参加し、これにミス沖縄のお 二人が花を添えます。セレモニー終了後には、 参加者全員で通行人に献血を呼びかけると共 に、ビラ配布を行います。
7月中旬には、県と日赤関係者で編成された 献血キャラバン隊が、二日間にわたり中部福祉 保健所管内の市町村(役場)を訪問します。そ こで、県民に献血を呼びかける知事のメッセー ジが読み上げられ、隊旗とともに各市町村の首 長に付託されます。また運動期間中には県庁1 階の県民ホールで、献血関連パネルの展示会や 献血が予定されています。
表1.「愛の献血助け合い運動」,主なるイベントと街頭献血
市町村献血キャラバン風景
輸血用血液製剤や血漿分画製剤(輸入品の場 合は別として)は、全て代償を求めない人たち の善意の贈り物です。善意の人たちとは、後述 する如く、献血者のほか、血液事業の支援にこ とのほか熱心な奉仕団体や事業所、保健所から 指名されたボランティアの方々、赤十字奉仕団 員などです。全ての血液製剤はこうした多くの 奉仕活動の成果としてなされた献血血液から製 造されています。以下そのボランティアのプロ フィールを簡単に紹介します。
県内の献血者の職業別内訳としては、公務員 の比率が他県に比べて高いことが特徴です。そ のほか企業・団体の職員、大学専門学校生、主 婦、高校生などとなっています。特定の血液型 の成分製剤(特に血小板など)が不足の場合 は、直接電話などで献血者と連絡を取って協力 を依頼し、久茂地の献血ルームまでご足労願っ ております。献血現場までの往復の所要時間を 除いても、全血献血(MAP)には申し込み書 類の記入や採血・休憩を含め20分以上、濃厚 血小板(PC)などの成分献血の場合は1時間以 上を要します。
ライオンズクラブは、アメリカで生まれた奉 仕団体で、世界中に支部を持っています。いろ いろな奉仕活動を行っていますが、とくに病め る人への奉仕活動として三献運動に力を入れて きました。三献とは献血、献腎、献眼のことで すが、中でも一貫して行われてきた献血の実践 活動と地域社会への普及啓蒙活動は特筆されま す。また大興建設(嘉手納町)や沖縄県生コン クリート協同組合(那覇市港町)のように、関 連する事業体の総力を挙げて献血運動に取り組 んでいる事業所もあります。
赤十字の基本原則(人道、公平、奉仕など7 原則)に共鳴するボランティアの方たちの団体 です。県内で約1,100人の方(家庭の主婦が多 い)が献血推進活動を行っています。具体的に は、移動採血バスの立ち寄る献血現場を訪れ、 地域住民への献血の呼びかけ、献血終了者への 接遇などを行っています。
地域(保健所管轄区域)ごとに1人の方が任 命されています。学校校長経験者など地方の名 士が多く、献血思想の啓発と普及のため、新聞 などへの献血啓発記事の寄稿や広報などを行う ほか、地域の企業や団体・専門学校等を訪問 し、献血の推進に取り組んでいます。
以上のように、各方面の多くの方の奉仕活動 によって、献血(血液事業)が成り立っています。
県内の赤血球製剤と血小板製剤の使用量は、 全国的に見て平均的水準にありますが、新鮮凍 結血漿(FFP)の使用量は依然として高く、人 口千人あたりの血漿の使用量は、全国で多い方 から第三位に位置します。今後は輸血医療を日 常的に行っている医療機関においては、とくに FFPの使用(凝固因子の補充のみが適応です) について、適応外の使用の内容をチェックでき る管理体制(輸血管理室の設置と責任医師の任 命)の構築が望まれます。国内自給を達成する ためには、若者への献血の呼びかけと同時に、 医療現場でのFFP使用の適正化(使用量の削 減)が大変重要ですので、医療機関のご協力を 宜しくお願いいたします。