常任理事 安里 哲好
最初に、沖縄県では労災保険適用事業所は平 成13年10月の時点で、民営事業所は41,625ヶ 所、労働者50 名以下の事業所は40,621 ヶ所 (97.6 %)、50 名以上の事業所は1,004 ヶ所 (2.4%)、その他公営事業所は2,537ヶ所であ る。前者の労働者総数は245,636人(67%)、 後者の労働者総数は114,447名(33%)で、別 枠の公営事業者における労働者は70,364人であ る。労働者50 名以上の産業医の選任状況は 70%前後にあり、約8万人の労働者が健康管理 下にあると推測される。すると、残りの28万人 近くの労働者・県民の健康管理はどのような状 況か、地域医療で充分に補完されているのだろ うか危惧している。また、公務員諸氏7万余人 の健康維持・管理状況は県民の指針になってい るか(肥満の状況、喫煙率等)と思うところで ある。
さて、今回テーマの一つである沖縄県産業医 研修連絡協議会の設立の趣旨と活動状況につい て述べたい。設立の趣旨は産業医研修事業の円 滑かつ効果的な実施を図り、もって産業医活動 の活性化に資するためで、当県では平成元年に 開設されている。メンバーは沖縄労働局より2 名、那覇労働基準監督署より1名、沖縄労働基 準監督署より1 名、各地区の産業医委員1 名、 琉大病院1名、県医師会2名そして、沖縄県労 働基準協会5名と労働福祉事業団より1名(総 計20名)となっている。年に2回、8月と12月 に会を持っている。ちなみに、平成17年度の第 2回の協議事項は、@平成17年度産業医研修会 の開催状況について、A平成18年度産業医研 修会実施計画(案)についてで、年に1回ほど 地域産業保健センターより活動状況の報告があ り、また懇親会の意味合いも一部含んでいる。 離島での研修をという要望もあり、その後よ り、宮古地区や八重山地区での研修会も多くな っており、平成17年度は沖縄産業支援センタ ー等が3回行い6単位習得できる状況まできて いる。県下の研修は基礎研修22回(60単位)、 生涯・更新研修は19回(48単位)で、50単位 (必須単位も含めて)の取得は県内で1年と数ヶ 月で可能であり更新に必要な20単位は一年以 内で可能な状況にある。労働者50人以上事業 所の産業医選任についてもっと指導するよう労 働基準局に要望しており、その結果段階的に選 任率が改善している。50人前後の事業所は数多 くあり、年度ごとに選任の対象外になったり、 届出をしなかったりするとのこと。予算は20万 円程度で、産業医学振興財団から医師会に入り それを利用している。平成18年度は「労働者の 肥満の改善」と「禁煙」をテーマに取り上げよ うと考えている。
次に、産業医選任の状況について述べたい。 県理事会で産業医は足りているかと言う問題提 起があり、早速地区医師会、労働基準局の協力 を得てアンケートを取ったので報告する。
1)産業医の人数(平成18年3月末現在):338名
2)沖縄県の産業医活動をしている人数:225名
日医への申請書(新規および更新)より 人数を確認(日医へ確認)。
3)経年的新規産業医の申請状況(平成18年3 月末現在)
日本医師会認定産業医制度は平成2年よ り開始、沖縄県では年に3回申請を受けつ けており、産業医委員会で審査のうえ、県 理事会で承認し日本医師会へ認定申請を している。表1に示すように、近年は毎年 30人前後の方が申請している。
表1.日本医師会認定産業医制度における認定産業医の推移に ついて
平成14年度 | 要選任事業場数 選任事業場 選任率 |
917事業場 539事業場 58.5% |
平成15年度 | 要選任事場業数 選任事業数 選任率 |
916事業場 608事業場 66.4% |
平成16年度 | 要選任事場業数 選任事業数 選任率 |
932事業場 687事業場 73.3% |
平成17年度 | 要選任事場業数 選任事業数 選任率 |
982事業場 739事業場 75.3% |
平成17年度は75.3%(沖縄労働局より資料 提供)で、選任されてない事業所の指導状況と その結果について問い合わせたら、各未選任事 業所への指導を実施した結果が産業医選任率の 向上に現れていると述べていた。
産業医が選任されない理由等についての意見 として、(1)未選任事業場の多い業種は商業、そ の他の事業、保健衛生業の順番、(2)産業医の偏 在(地域によって産業医数が少ない)、(3)産業 医が受け持つ事業所の偏り(1名の産業医が複 数件の選任あり)、(4)産業医を委託しても名前 だけで職場巡視、衛生(安全衛生)委員会の出 席等職務が行われてない。その他、平成18年4 月1日から実施される改正労働安全衛生法で産 業医が直接過重労働となった労働者に面接指導 を行う必要があるため、より一層産業医の重要 性が増すと述べていた。
平成17年度の事業所規模別産業医選任率を 表2 に示す。2 0 1 名以上事業所の選任率は 91.5%〜100%と高く、50〜200名以内事業所 の選任率は72.3%であった。
表2.事業所規模別産業医選任率について (平成18年3月末現在)
1)事業所・会社(従業員50名以上)より、年 に何人ぐらい産業医選任の依頼を受けてい ますか。
沖縄産業保健推進センター
2)貴医師会に何人の産業医がいて、何人が産 業医活動をしていますか。
北部医師会:22名登録 11名活動(個人契約は把握していない)
中部医師会:65名登録 50名活動
浦添医師会:35名登録 22名活動(個人契約は把握してない)
那覇医師会:75名登録 28名活動(地域センターの活動)
南部医師会:47名登録(活動中の会員の数は把握してない)
宮古医師会:5名登録 3名活動
八重山医師会:6名登録 5名活動
推進センター:労働局による選任率は72.5%
3)産業医は不足していますか。
4)その他、ご意見・ご要望
アンケート結果は産業医選任の現況と今後の 課題がすぐさま浮き彫りになっており、新聞紙 上で言われている医師の地域偏在にも相通ずる 所があるが、まだ、産業医選任を要する労働者 50人以上事業所の選任率も充分でないし(243 事業所が産業医不在)、産業医の育成はもっと 必要と思われる。全体の67%を占める50人以 下の事業所のへの関わりは今以上により効果的 な連携の方法の模索が必要とされ、今後の大き な課題の一つと思われる。また、職場における メンタルヘルス・ケアの要望が多いことが示さ れた。最近産業医の認定を受けた医師が産業医 活動をしているかについては次回の機会にアン ケートを取って分析したい。
最後に、会員から時々質問される事項につい てQ&Aで答えたい。Aの方は日医の現在の見 解として理解していただきたい。
Q1:校医義務における産業医活動について
A1:沖縄県教育庁職員安全衛生法管理規定第 10条及び沖縄県立学校職員安全衛生管理 規定第12条に基づいて校医3年以上の経 験があれば、学校で職員の健康管理をす る産業医活動はまったく問題ない。しか し、日医認定産業医認定の取得をしてい ただきたい。校医兼産業医の両方の任務 をされるなら、手当ては2倍というのでな く、標準的産業医手当てプラスαぐらい が望ましい。
Q2:所謂3年以上経験有資格産業医の認定研 修会参加義務について
A2:研修会に参加し、日医認定産業医認定を 取得し、研鑚していただきたい。
Q3:時間切れで(5年以上経過)更新できなか った時、既に取得した単位は新しく申請 するときの50単位の一部に使用できるか。
A3:使用できる。
Q4:メンタルヘルス(精神障害)による平均 休養日数、職場復帰率、もとの職場ポスト への復帰率、社会的能力復帰率(年収に 相当すると思われる)の具体的数字はあ るのか。
A4:身体的疾病であれば、胃潰瘍で1ヶ月、胃 がん手術3ヶ月など具体的数字で提示でき るが、メンタルへルスは、統合失調症、気 分障害、神経障害など多種な疾患があるに もかかわらず、個々の疾患で、その者が どの程度の重症で、休業期間、職場復帰 の可能性、労働能力の回復見込みなどを 説明できない背景がある。
以上、産業医選任の状況や産業医研修連絡協 議会の活動について報告した。
沖縄労働局、県行政(福祉保健部)、保健医 療福祉事業団、沖縄産業保健推進センター、地 域産業保健センターと医師会そして産業医との 連携で労働者の健康状況の改善・向上について 具体的に何かできないか、おそらく、それは医 療そのものではなく、50人未満事業所における 労働者も含め、自らの健康管理に関するピア・ レビュー(わかっているけど止められないので は無く、わかっていてお互いをどうするか)を どの様に支援して行くかにあろう。最後に、産 業医が職場における肥満状況や喫煙率を把握し 改善目標を提示し、職場全体で改善していく意 識を高めるため、毎回職場を訪れるたびに「肥 満の改善」と「禁煙」についての二言を発して 欲しいし、また毎年5〜10%の改善を目標に掲 げていただきたいと切に希望する。