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平成17年度都道府県医師会
情報システム担当理事連絡協議会

大山朝賢

理事 大山 朝賢

会場風景

会場風景

去る3月23日(木)日本医師会において標記 協議会が開催されたのでその概要について報告 する。

日本医師会寺岡副会長挨拶

寺岡日医副会長より、概ね次のとおり挨拶があった。

ITの発展と普及に伴い、医療分野においても 様々なIT化の取り組みが行われているところで ある。

医療を提供する側としては、医療分野におけ るIT化は安全で効率的な医療を提供する体制を 実現する手段であり、医療と患者に貢献するIT 化であってこそ推進しうる価値があると考える。

その中で、日医では「医師会総合情報ネット ワーク」の構築を推進し、理論構築から実践へ と具体的な施策を投じている。

昨年11月には日本医師会医療情報システム 協議会を主催し、電子カルテをはじめ医療界、 医師会を取り巻くITの問題を様々な角度から取 り上げ検討を行なった。また、TV会議システ ムについては、会議以外にも講演会、シンポジ ウム等の配信を来年度から本格的に運用すべく 各種取り組みを展開している。ORCAプロジェ クトについては、推進体制を再編成し、より効 率的な日医標準レセプトソフトの普及に努めて いる。医療施設HPのガイドラインについては、 各医療施設がホームページに掲載する内容が医 療界の信頼を損なわないよう、当ガイドライン を参照しホームページの運用を推奨するよう、 各医師会には本ガイドラインの周知をお願いし ている。

各都道府県医師会においても情報化推進にご理解ご協力お願いしたい。

担当理事挨拶

IT問題検討委員会では、第一にTV会議シス テムについての検討行い、平成17年度は当シス テムの運用実験を行なうということを推進して きた。本日のこの会議もTV会議システムにお いて各都道府県医師会へ配信している。

当システムは、昨年の秋に本格運用を進めた ところ音響について配慮する必要があり現在検 討を行っているところである。また、当システ ムは一方的な会議の配信に留まらず各種会議に 使えるよう進歩していくものである。

医療施設HPガイドラインについては、前々 回の会長会議においてこのようなガイドライン が必要であると提案があり、IT問題検討委員会 でこれを検討し作成した。

ORCAプロジェクトにおいては、日レセを使 用している医療機関がより使い易いソフトにな ることを前提として開発を進めてきた。その結 果、他のシステムに比べても遜色ない段階にな っている。

ORCAプロジェクトを通じ医療機関に必要な IT化を提供し、またそれとともに、日医標準レ セプトソフトの利用施設が3,000件を超えた段 階で、日レセを通じて各医療機関のデータ(個 人情報を削除したデータ)を集めさせていただ き、診療報酬改定の検証に活用したいと考えて いる。

議事

(1)TV会議システムの運用について

松原日医常任理事より「日医TV会議システム」について説明があった。

TV会議システムは、遠方の出席者の負担を 減らすことを目的に検討を重ね、現在、日医か らの一方通行配信(日医協配信トライアル)、 日医対各医師会との1対1の接続、日医主催の 多拠点接続、という接続テストを実施したとこ ろであるが、接続テストの結果、音響に課題が あることが分かった。今後、各都道府県医師会 に音響機器を配布する等改善していく予定であ ると説明があった。

また次年度においては、各都道府県医師会事 務局のシステムの理解度、操作技能の向上を図 り、情報関連委員会への本格的導入、情報シス テム担当理事連絡協議会の早期開催等の取り組 みを進めると説明された。

(2)医療施設HPのガイドラインについて

森洋一日医IT 問題検討委員会委員長より、 「医療施設HPガイドライン」について説明があ った。

厚生労働省が全国の一般病院を利用した患者 を対象に実施している「受療行動調査」による と、患者・国民は、あらかじめ何らかの情報を 得て、それを参考に医療機関を選択するという 傾向が強くなってきているという結果が示され ている。同調査においては、ホームページの利 用については0.9%(平成14年調査)と大きな 割合は占めていなかったが、健康保険組合から 構成される「保険者機能を推進する会」が健康 保険組合の組合員を対象に行なった調査による と「医療機関HP等」を参考にしたとの回答が 24.3%もあり、インターネットを通じて医療情 報を入手することも有力な手法になりつつあ る。このような社会的なニーズに応えるべく、 多くの医療機関等がホームページを通じ幅広い 医療情報を配信しているが、一部で、虚偽・誇 大な表現、代替医療の宣伝を行なうホームペー ジも少なからず認められると説明があり、事実 上規制のないホームページについて、医療情報 の信頼性を失わないためにも、守るべき関連法 規や掲載推奨・不的確内容等、ホームページ作 成上の留意点を当ガイドラインとして整理した と報告があった。

(3)ORCAプロジェクトについて

石原謙日医総研研究部長より、「ORCAプロジェクト」について説明があった。

日本は、諸外国と比較しても明らかに安い医 療費であるにも関わらず、なお「高すぎる」と して理不尽な経済的理由のみで一方的に診療報 酬を削減され続け、医療現場が疲弊しつつある。この状況を変えるためには、医療人自らが 正確な情報を確保する必要があり、その情報収 集並びに情報を配信するためのツールとして “日医標準レセプトソフト”をご活用していた だきたいとの説明があった。

現在、日医標準レセプトソフトは、既存ベン ダーのレセコンの機能を大きく上回り完成の域 に達しており、平成18年1月時点で2,356件の 医療機関で使用されていると報告があった。

また、今後、ORCAプロジェクトをより推進 するにあたり、各地域に存在する「地方公費」 に関する多種多様なフォーマットのパターンを 統一化することが望ましいと考えられ、各都道 府県医師会の先生方にご協力をお願いしたい旨 説明があった。

(4)質疑応答

<TV会議システム>

Q1.TV会議システムはとても良いシステムだと考える。地区においても使用したいが別にサーバ等設置する必要はあるか。

A1.今後、都道府県医師会とそれぞれの郡市区医師会間でも使用できるようにしたいと考えている。もうしばらく待ってほしい。

Q2.既に別のTV 会議システムを利用してい る。日医のTV会議システムと連携できれば 良いと考えるが、他メーカーとの連携につい ても今後検討していただきたい。

A2.極論で言えば、各都道府県医師会で利用 されているTV会議システムの方が利便性が 高いのであればそちらに移行しても良いと考 える。他メーカーとの連携は多くのコストが かかると考えるが、次期IT問題検討委員会で 検討したい。

Q3.音声の問題についてだが、ノイズキャン セラ等を用いたテストは行なったか。

A3.これまでの接続テストでは使用していない が、本日の会はノイズキャンセラを利用して 配信している。

Q4.電話回線を用いたTV会議システムを利用 しているがコストがかかる。日医TV会議シ ステムを利用する際の都道府県医師会が負担 する費用は。

A4.パソコンとカメラがあれば会議参加可能で ある。なるべくローコスト、ハイクオリティ なシステムを目指したい。

<HPガイドライン>

Q1.アメリカ医師会では、ホームページに医 師の略歴を掲載する際に、その医師の訴訟歴 も掲載することになっているが、日医として はどう考えるか。

A1.訴訟等については、法的整備(公表基準) が定められた上で公表すべきと考える。ま た、手術数や成功例の掲載についても他施設 との比較が難しいため、これについても基盤 が整った時点で検討すべきであると考え、現 時点ではガイドラインに記載していない。

Q2.当ガイドラインには具体的な記載が無い。 早急に検討すべきである。

A2.今回作成したガイドラインは第一歩であ る。今後検討していく。

Q3.国会に出された医療法、医師法には、産 婦人科の分娩数、死亡数等を公表すべきとあ るが、どう考えるか。

A3.ハイリスク分娩等について、もっと議論す る必要がある。

<ORCAプロジェクト>

Q1.日レセにはレセプトを電算化する機能は あるか。また、レセプトをチェックするソフ トの開発を行なってほしい。

A1.日レセではレセ電算化対応の準備が進めら れている。レセプトをチェックするソフトに ついては、保険システムの整合性がきちんと 取れていることが前提となるが、将来的には 日医総研でプログラムを作成したいと考える。

Q2.地方公費のフォーマットの統一について は、日医総研ではなく日医主導で行政と調整 してはどうか。

A2.日レセを発展させるために日医総研があ り、発展させた段階で日医として取り組むべ きであると考える。日レセは現在発展途上で あると考える。

Q3.ORCAを実際に使用する医事方を対象と したセミナーを実施していただきたい。

A3.今年度より実施している。次年度はより 強くプロモーションしたい。

Q4.日レセが3,000件の医療機関で使用された 時点で、診療報酬に関するデータを収集する とあるが、他のレセコンからのデータも収集 してはどうか。また、ORCAを使用している のは若い医師が多いと考えら、ORCAのデー タが全てのデータではないこともご理解いた だきたい。

A4.他メーカーのレセコンからデータを収集す ることは可能であるが、データの正確性が確保 できない。現在、ORCAは比較的若い先生方に 利用されているが、そのためにも、今後より多 くの先生方に導入していただきたいと考える。

Q5.3,000件の導入まで待つのではなく、早急 に対応を行なっていただきたい。

A5.日レセから集められるデータは信頼できるデータである。また、日レセから集められた データは個人情報を削除するプログラムが組 み込まれている。他のメーカーにこのプログ ラムを組み込むことは難しい。

Q6.電子カルテによっては、個人を認証しな い(ログイン機能の持たない)ものも見受け られる。これは電子カルテと認められないが 日医として把握しているか。

A6.ログイン機能を持たない電子カルテという ものは大変問題である。調査したい。

印象記

理事 大山 朝賢

今回の会議は1)TV 会議システムの運用、2)医療施設HP(Home Page)のGL(Guide Line)、3)ORCA(Online Receipt Computer Advantage)プロジェクト等についての日医から の報告と理事者側からの質疑応答であった。

1)TV会議の方は、我々のように2〜3時間の会議のために、遠方からわざわざ出かけなくてもす むようにと日医が郵政省の委託研究の一環として、平成10年九州ブロックに導入している。 会議での出席者の音声や画像の問題、費用の面でなかなか進展が見られなかった。しかし平 成17年11月には新たなシステムのもと、日医と各県医師会間の1対1の接続ができ、日医を主 催者とする多拠点接続は今回の会議でテストされた。画像に若干の難点はあるもののなかな かの出来で、今回は日本医師会館での会議であったが、近々、東京まで行かずとも担当理事 全国会議が居ながらにして出来るのではないかと思っている。

2)医療施設のHPは医療法第69条「医薬等に関する広告の制限」に基づいて掲載されることが望 ましいとしている。インターネット上の規制はまだ明確に規定されてなくこれからの課題では あるが、個人情報保護法を考慮にいれた真摯な情報提供を望むといった程度のGL(Guide Line)であった。

3)ORCA(日医標準レセプトソフト)利用施設は、今年の直近データでは2,356件と急増してい るので、「ORCAは完熟の食べごろです」と日医総研は鼻息が荒い。これから開業予定あるい は、レセプトソフトを希望される先生方にはORCAをお勧めします。全国2千余りの地域にい ろいろな形で存在する「地方公費」の制度への対応には、他社のソフト同様完璧とはいきま せんが地元のよきベンダーが応対してくれると思います。