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平成17年度 都道府県医師会生涯教育担当理事連絡協議会

常任理事 安里 哲好

会場風景

会場風景

去る2月10日(金)に日本医師会で行われた標記協議会について次のとおり報告する。

植松会長挨拶

近年、医療事故の報道が相次ぎ、患者の安全確保が論議されている。医療事故の防止、医療の質の向上を図るために医師の生涯教育が重要である。

インターネット講座や実技を含めた参加型の研修会、更に新医師臨床研修制度の施行により、日医の会員が研修医を指導するという場も出てきている。明日の医療を担う若い医師を育成することも日医会員の一つの仕事になるのではないだろうかと思うので、ご協力をお願いしたい。

議事

1.報告事項

(1)平成16年度生涯教育制度 申告書集計結果

平成16年度の日医会員申告者数は、118,402人で、申告率は前年度より2.7ポイント増加の74.1%と過去最高を記録した。

なお、診療所医師の申告率が80.1%、病院の医師が66.0%とともに昨年度を上回っている。

もし、自己申告率が100%近くになれば、生涯教育の義務化は不要になる。いずれにせよ74%という数字は、日本の多くの医師が自ら研鑽に励んでいると意味している。

(2)生涯教育関連報告事項

1)平成17年度生涯教育について

1. 指導医のための教育ワークショップ

新医師臨床研修制度の創設により、地域保健・医療が研修医にとって必修科目になった。地域医療を担う日医会員が若い研修医の指導医となったとき、的確な教育能力を培うために同ワークショップが持たれた。

今年度は、日医主催が2回、都道府県医師会主催(日医協力)が2回、都道府県医師会(単独開催)が13回を数える。

平成15年度からのこれまでの参加者総数は、1,577名である。

2. 医師国試問題公募と医師国試問題作成講習会

近年、医師国試問題は大きく改善された。特に、地域医療やプライマリ・ケアの問題は、大学の専門の医師でなく、地域医療に携わる日医会員の先生から出題していただく事が大変重要になってきた。医学生が医療の現場に出たとき、最低限知っておきたいという試験問題は、会員の先生方から出題していただきたいというコンセプトの下に、去る5月、日医において講習会を開催した。

2)平成18年度生涯教育制度について

1. 平成18年度生涯教育制度実施要項

基本的には、今年度と同様であるが、日医生涯教育協力講座へ「慢性呼吸器疾患講座」が新設された。「脳・心血管疾患講座」と同様に都道府県医師会主導型で行っていただき、コミュニティーフェイスをコンセプトとし、病診連携を図っていただきたい。

2. 指導医のための教育ワークショップ

標記ワークショップは、現在、各都道府県医師会において活発に行われている。

今後どのように普及するかが検討課題であり、例えば、Advancedコースを考える必要があるのか、研修医の修了日程評価をどうするか等、ワークショップ形式で議論する必要があると考える。

それらを踏まえ、日医においては7月・12月を目処に指導医のための教育ワークショップを開催予定である。

3. 医師国試問題作成講習会(案)

来年度も今年度同様の講習会を予定している。

4. 新医師臨床研修制度における「地域保健・医療」研修に関するアンケート

どの臨床研修病院も地域保健・医療のプログラムはしっかりされているが、実情はどうか検証する必要がある。それを調査し、来年度以降に役立てるためにも厚生労働省の医療審議会で発信しなければならない。

(3)生涯教育推進委員会報告

【指導医のための教育ワークショップ】

今年度、日医主催、各都道府県医師会主催、郡市医師会主催のワークショップが16医師会で企画され、プログラムについて、実施要綱に沿った内容であることを確認及び本委員会において承認し、修了証を発行した。プログラム数は20であった。承認されたプログラムについては、30万円の補助金を交付した。また、今年度は初めて郡市医師会主催のワークショップが行われた。

【医師国試問題作成の協力について】

今年も会員から出題の115題も含め、これをブラッシュアップし、厚生労働省のWebサイトへ登録する。

【インターネット生涯教育講座セルフアセスメント方式】

現在、日医生涯教育オンラインで、27のテーマを閲覧することが出来る。セルフアセスメントに回答された会員へ1回1単位取得とすることにした。評価方法については、今後の検討課題である。

【新医師臨床研修制度】

平成16年7月、都道府県医師会の事務局宛に地域医療臨床研修協議会の設置についての予備アンケート調査を行った。その結果、47都道府県医師会中、32の医師会が何らかの協議会を設置している旨の回答をいただいた。その中で、医師会、行政、臨床研修病院、大学医学部による4者協議会を設置している医師会が22医師会であった。

調査結果に基づき、本委員会では新医師臨床研修制度についての実情はどのようなものかを報告し、臨床研修の問題点、今後の展望等を議論した。

しかしながら、全国の実情をもう少し把握する必要があるのではないか。そして、新医師臨床研修制度の評価を行う必要があるのか等、今後、全国的なアンケート調査を実施予定している。

【臨床研修修了後いわゆる後期研修のあり方について】

地域における医師の偏在、あるいは医師不足、診療科による医師偏在等、地域における医療提供体制に係る問題についての議論があった。

地域における諸問題については、本委員会だけでなく、他の委員会においても議論されているところであるが、非常に重要な問題であると認識している。

2.都道府県医師会生涯教育活動事例報告

(1)生涯教育申告率<宮崎県医師会>

宮崎県医師会では、一括申告方式を用いており、平成16年度の申告率が97.3%と非常に高くなっているとして、実施方法について紹介があった。

(2)指導医のための教育ワークショップ<東京都医師会>

東京都には13の大学、国立病院、民間の大病院等、多数の臨床研修病院があります。東京都医師会としては、全国から集まる研修医に対して地域医療とは何かを理解していただく必要があると考え、臨床研修制度、とりわけ地域医療研修については積極的に推進していくことを考えている。

研修医にとっては、地域医療、医師会を理解してもらういい機会であり、医師会入会の動機付けになるであろうと思われる。

指導医・医師会の利点としては、良い外部評価であることや自らの生涯教育、後輩医師を育てる責務があるため医療連携が構築できるのではないかと考える。

そうした中で、地域医療研修をやっていく上で、それを教える指導医を養成する必要がある事から指導医のための教育ワークショップを今年度までに5回開催(開催予定含む)している。これまでの修了者数は、131名で、これまでの参加者をみると、かかりつけ医が積極的に参加していると思われる。

同ワークショップにおける工夫として、1.医師会館にて連休を利用し開催。2.大学の立場からと医師会の立場から、「卒前教育の現状と新医師臨床研修制度」を講義いただいている。3.開会、閉会時にアイスブレークしやすいように椅子を円に配置し自己紹介等を行う。4.修了証は参加者全員に手渡し。5.今後の地区開催も踏まえ、地区医師会事務局職員もスタッフとして参加。また、プロジェクトのユニットテーマも地域医療に関係するような「在宅医療」あるいは「健康日本21」等のテーマを加えている。

最近の取り組みとして、13大学と東京都医師会より構成される『大学医師会・東京都医師会連絡協議会』が設置された。

(3)生涯教育協力講座「セミナー」<石川県医師会>

石川県医師会においては、これまで3回の【脳・心血管疾患講座】と1回の【慢性呼吸器疾患講座】を行っている。

一つの疾患、その病態を決められた時間内で集中的に学習できた。

講師は県内の主幹病院の専門医が担当し、その後、病診連携が円滑になった。

参加者は、若い医師が多く、勤務医からの参加もこれまでの講演会と比較して多く、質問等も多く交流が非常に深い。

(4)医師国試問題作成講習会<岩手県、熊本県医師会>

【岩手県】

昨年5月の日医の標記講習会を受けて、岩手県医師会でも医師国家試験問題作成委員会を立ち上げ、講習会形式で開催(2回)した。そこで作成・ブラッシュアップした16問題を日医に送付した。

【熊本県】

熊本県医師会では、郡市医師会の生涯教育担当の先生、また、生涯教育委員会の委員にも声掛けし、昨年の10月に講習会を開催し、日医へ送付した。

(5)新医師臨床研修制度に対する取り組み<京都府、大阪府医師会>

【京都府】

京都府医師会の新医師臨床研修制度への取り組みとして、1.臨床研修制度検討委員会(行政、保健所、消防、大学、研修病院、専門医会)の設立(地域医療研修を円滑に行うため)、2.研修医向けの入会促進と医師賠償責任保険制度(限度額3,000万)の創立、3.臨床研修指定病院協議会の開催、4.指導医のための教育ワークショップの開催、5.府医学術講演会(年130回)への研修医参加の案内、6.研修医のための研修と交流会の開催(2回)を行っている。本日は6.の研修医のための研修と交流会について説明があった。

同交流会の目的は、京都府内の23臨床研修指定病院の研修医と指導医が一同に集まり、トピックとなっている話題についての講演を聞き、また研修医より自身の研修内容の発表・討論を行い、研修、交流を図るとしている。

第1回交流会として、1年目の研修医を対象に平成17年2月に開催した。特別講演に「研修必修化における指導医の役割と後期研修の在り方」と題して、臨床研修病院群「群星沖縄」プロジェクト研修センター長の宮城征四郎氏を招いてご講演いただいた。

第2回交流会として、1、2年目の研修医を対象に平成18年2月開催した。特別講演に「新臨床研修制度とシニアレジデント研修の取り組み」と題して、倉敷中央病院副院長の馬場清氏を招いてご講演いただいた。また、経験発表として、1年次3名に「初年度研修を振り返って」、2年次5名に「私の受けた地域医療研修」、協力診療所医師2名に「地域医療臨床研修を受け入れて」とそれぞれ発表いただいた。

【大阪府】

大阪府医師会の新医師臨床研修制度に対する取り組みとして、平成14年に在阪5大学臨床研修担当者連絡会議を設置し、各大学における臨床研修の取り組み状況や地域医療機関との連携などを協議した。

平成16年には、府医の政策委員会として、臨床研修制度推進委員会を設置した。

同委員会での事業内容としては、主に指導医のための教育ワークショップの開催や大阪府内の単独型・管理型病院へのアンケート、研修医へのアンケート等である。

平成17年2月に行った研修医へのアンケートの調査結果として、1.研修医の処遇については、一定の基準が必要であり、公私の病院経営が苦しい状況下では、それに対応できるだけの国家補助が必要である。2.研修施設の指導体制の充実のためには、まず指導医に係る問題を解決すべきであり、指導医の養成や手当てなども含めた行政的支援が必要である。3.研修内容の充実と良医育成のためにも、研修プログラムの評価、改正も必要である。4.研修医のモチベーションをいかに上げるかが重要で、指導医と研修医との良好なコミュニケーションなども含めた、先輩医師である指導医の役割は大きい。5.卒前教育の充実や臨床研修修了後の教育体制について、併せて検討していく必要がある。6.問題点も多く、解決には時間を要するものもあるが、現状を一つ一つ把握しながら、関係諸団体と連携の下、大阪府の臨床研修制度の充実に向けて進めて行きたい。

印象記

安里哲好

常任理事 安里 哲好

診療報酬マイナス改正、医療制度改革、日医会長選挙等いろいろあるが、医師会生涯教育は着実に進んでいると、橋本常任理事は述べていた。

平成17年度を総括し、平成18年度の事業計画とこれまで行った各県の事例報告があった。概ね、その内容は1)生涯教育申告率、2)指導医のための教育ワークショップ、3)生涯教育協力講座「セミナー」、4)医師国家試験問題作成講習会、5)新医師臨床研修制度に対する取組み等であった。その中で、一番印象に残ったのは、京都府の新医師臨床研修制度に対する取組みの報告で、添付資料「研修医のための研修と交流会」報告書(平成17年2月)の中の宮城征四郎先生の「研修必修化における指導医の役割と後期研修のあり方」についての講演で、県立中部病院における後期研修の現状と今後の望まれるあり方について述べていた。

卒後研修は年々充実していくでしょう、国からの補助もあるわけですし(指導医への助成は充分でないが)、指導・評価システムも早く欧米に近づきたい(ベットサイド・ティーチングは歴史的に100年遅れているとのこと)という気持ちを持っていると思われる(卒後研修を卒前研修にシフトさせることも加えて)。次に、一番の問題である専門医制度のあり方をどの様に再構築していくかであろう。米国の様に専門医制度と診療報酬点数とリンクさせるのか、また専門医制度のハードル設定(人数制限も加え)の見直しが成されるのか。その延長上に医師の診療科の偏在が改善される一助となるのか、今後の問題であろう。さて、2年間の研修を終了後、医師としての人格を涵養し「プライマリ・ケアの基本的な診療能力」をある程度習得したが、その維持と更なるステップアップはどう進んで行くのか。専門医に成る前の数年を「プライマリ・ケア」のステップアップ期間とするのか、専門医をしながらその幾ばくかの時間を「プライマリ・ケア」に当てるのか、それとも「プライマリ・ケア」の専門医(総合診療医・かかりつけ医・家庭医)を多く育成していくのか今後課せられた課題と感ずる。

平成16年度日医生涯教育制度申告率は74.1%(診療所80.1%、病院他66.0%)で、前年度2.7ポイント増加し、修了証取得率は82.0%であった。沖縄県は前年同様78.6%(診療所75.0%、病院他81.3%)で、修了証取得率は70.4%であった。実際の申告は講演会への参加、体験学習、各種業績、はがき・インターネットでの回答、インターネット講座のセルフアセスメント等である。すぐに、申告率も修了証取得率も100%に近くなりそだが、おそらく日医生涯教育制度そのものの存在も知らず、その意義も知らない会員が多いと思われる。専門医制度とのリンクも今、検討されており、将来専門医の申告率は100%になるであろう。会員の先生方の申告率の向上が望まれる。決して、国民やマスコミから医師免許の更新制度を喚起されないよう、自ら常に向上するための生涯学習教育でありたい。