理事 嶺井 進
会場風景
去る2月9日(金)日本医師会に於いて、標記連絡協議会が開催され、日本医師会青木重孝常任理事より、看護職を巡る最近の動向について報告があった。協議会では、准看護師教育の充実をはかるべく、日本医師会医療関係者対策委員会の下に小委員会を設け、准看護師養成カリキュラムへの単位制導入や奨学金貸与規定モデルの思案を提案した。また、最近の動向として、先般策定された第6次看護職員需給見通しについての問題点や三位一体の改革における補助金制度について解説があった。本県から私と那覇市医師会看護師養成担当理事の山城千秋先生が出席したので、その概要を報告する。
会議冒頭、植松治雄会長は「医療関係者問題は二国間の外国人看護師の受け入れ問題、助産師にかかわる問題、三位一体改革との関連など、多くの問題が山積している。また、先の看護職員需給計画においても色々議論があると伺っている。看護師の問題は、安全な医療を提供する上で非常に重要な要素であるので、質の高い安全な医療を提供する立場から、医療関係者の問題についても取り組んで行きたい。」と挨拶した。
続いて、青木重孝常任理事の報告があった。
○准看護師養成カリキュラムへの単位制の導入について
准看護師教育の充実をはかるため、医療関係者対策委員会の下に准看護師カリキュラムに関する検討会を設置し、1,890時間のカリキュラムを単位制に改変することを検討した。准看護師養成所を引き続き存続させていくためには、教育面での運用改善が必要であり、単位制の導入について提言を行なった。同件に関しては、去る11月14日付、厚生労働省医政局長宛に要望書を提出した。
具体的な提言は以下のとおりである。
=具体的提言=
- 総単位数は高校衛生看護科と同じ54単位以上。
- 1単位の時間数を弾力的に。講義は1単位15〜30時間、実習は1単位30〜45時間で設定。総時間数は1,700時間以上が望ましい。
- 准看教育の特色として「基礎看護」と「成人・老年看護」を中心に充実を図る。
- 他の学校教育と同様、既修得単位の認定制を導入。
○奨学金貸与規定のモデル作成
昨年実施した実態調査の結果から、国や県の奨学金の利用が多く、医療機関・医師会等の奨学金の利用は非常に少なかった。これは従前あった御礼奉公の影響があると考えられることから、奨学金規定をしっかり確立していこうという考えのもと「奨学金貸与規定モデル」を作成した。弁護士によるチェックと厚労省担当官にもチェック頂いた。各施設で参考にして頂ければありがたい。
○第6次看護職員需給見通し(H18〜22年)について
昨年、厚労省から示された需給見通しについては、需要については、平成18年の131万4,100人から、平成22年には140万6,400人に増加。これに対して供給は127万2,400人から139万500人になるとの見込み。需給バランスは、平成18年に4万1,600人不足、22年に1万5,900人不足であると予測している。需要に対する充足率は96.8%から98.9%に上がると推計している。今回の結果は、素直に納得出来るものではない。日医が予め各県の状況を把握するため報告を受けた数値と大きな乖離があることが検証の結果判った。事実が歪められたり、不自然な推計がなされている部分があったので、同見通しに関する検討会において以下の様な問題点を強く指摘した。
=第6次需給見通しの問題点=
- 再就業者数が、第5次需給見通し(H13〜17年)に比べ、倍の水準になっている都道府県がある。
- 再就業者数の5年間の伸びが大きすぎるのではないかと思われる県がある。
- 再就業者数の基礎数が、供給数の規模に比して大きいのではないかと思われる県がある。
- 退職者数の伸びが少ないのではないかと思われる県があるが、団塊の世代の退職の影響は考慮されているか。
○三位一体の改革による影響
三位一体の改革に関連して看護師等修学資金貸与事業を含む、2兆4,000億円が地方へ税源委譲された。修学資金貸与事業は、平成17年度から地方に任されている。現在、地方でどの様な取り扱われ方がされているか調査(金額等の変更)した結果、現段階では多くの都道府県で貸与額、募集人数に大きな変化は見られなかった。しかし、中には事業を廃止した県もあり、今後、他の都道府県においてもその動向に注視頂きたい。なお、本県は平成16年〜17年貸与額の変化は無い。
また、学校の運営に関する補助金については、昨年度から地方へ税源委譲させようとする動きがある。これが委譲されれば施設運営は大変厳しくなることは容易に想像できる。今年度も出来るだけそういう事態を避けるべく武見、西島両参議院議員や関係各位と共に努力をし、何とか回避出来た。しかし、補助金のあり方が准看養成制度の将来を大きく左右するため、今後もその動向に注意を払わなければならない。
○医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会について
本検討会は、厚労省の呼び掛けにより、平成18年の医療制度改革に反映させることを目的に、医療安全の確保及び看護の質の向上の観点から、看護職員に関する事項を計13回に亘り議論し、今後の方向性について検討を行なった。主な検討事項は次のとおりであり、同事項については、社会保障審議会医療部会へ報告されている。
=検討事項=
- 看護師資格を持たない保健師及び助産師の看護業務について
- 行政処分を受けた看護師等に対する再教育について
- 免許保持者の届出義務について
- 助産師、看護師、准看護師資格の名称独占について
- 助産所の嘱託医師について
- 産科における看護師等の業務について
- 新人看護職員の研修のあり方について
- 看護記録について
- 看護職員の専門性の向上について
○外国人看護師の受け入れ問題ついて
平成16年11月、フィリピンとの間のEPA(経済連携協定)が大筋で合意され、日本へのフィリピン人看護師の受け入れが固まっていたが、現在のところ事態はあまり進展していない。医療分野以外の調整が難航し、連携協定の締結が遅れているとのことである。平成18年4月、10月の受け入れはほぼ絶望的だと考えられ、早くて平成19年4月になるのではないかと考えている。
以上報告のあと、厚生労働省医政局看護課の田村やよひ課長が挨拶の中で「最近、新人看護職員の臨床の能力が非常に弱くなっているとの指摘を真摯に受け止め、看護教育の充実に向けた準備を進めている。今後は指定規則の改正も視野に入れて考えていきたい。近年、医療安全のニーズの高まりや介護保険法の施行など、看護職員を取り巻く環境も大きく変化しているので、早急に対処せねばならない。」と述べ、事前に都道府県医師会から寄せられた質問・意見・要望について、活発な意見交換が行われた。
その中で特に印象に残ったのは、石川県から「看護職の養成・確保は国や県がやるべきことか、それとも医師会がやるべきことか」との質問に対し、田村課長は「基本的には、国や県がリーダーシップを取りつつやるべきだが、その上で民間の方々にもお力添えを賜らざるを得ない」と述べたのが印象的であった。
その後、必要に応じ青木常任理事から日医の見解を述べられた。
4.総括
宮崎副会長より概ね次のような総括があった。
「先程、准看養成を国の委託事業として出来ないものか等の提案については政治マターである。こういう問題は政治的に動かなければ解決出来ない。我々は常に国民のことを念頭に置き、国民医療を守る立場から、政策の推進に努めていかなければならないと考えているので、今後とも各先生方のご協力をお願いしたい。」
5.閉会
土屋常任理事より閉会の辞が述べられ会を終えた。
印象記
嶺井 進
厚労省の第6次看護職員需給見通しについて、平成18年度41,600人不足、22年には15,900人不足としているが、その過程で問題点がいくつか指摘された。
また、看護師養成の責任が国にあるか、民間にあるかも問いかけられた。
本協議会で明らかになったことは、国は人材養成には主体的にならず協力するだけに留まることである。
これからは、地域に必要な人材は地域で民間がリーダーシップをとって養成する時代であることを痛感した。