ピロリ菌は1983年にオーストラリアの学者により胃の粘膜から発見され、これまでに胃潰瘍などのさまざまな病気との関連が分かっています。その中で特に注目すべきは、日本人に多い胃がんとの関連です。
胃がんのほとんどがピロリ菌が原因で発症します。
菌が感染した胃は、慢性胃炎の状態を経てがんを発症すると考えられています。感染している人は、感染したことがない人と比較して約10倍の発がんリスクがあるといわれています。
ただし、感染した人が全て胃がんになるわけではなく、高塩分食や喫煙、遺伝的素因などが合わさって発症します。
以前から、胃・十二指腸潰瘍やその他の特定の病気のある方には、除菌が保険診療で行われてきましたが、菌に感染していても潰瘍などがない胃炎だけの方の除菌は保険診療では行えませんでした。しかし、2013年2月からはピロリ菌感染による胃炎に対しても、保険診療での治療が可能になりました。これはある研究で、除菌することでがんのリスクを減らすことが証明されたからです。
治療は3種類の薬を1週間内服します。まれにアレルギーや下痢などの副作用がみられたり、2、3割の方で1回の治療で除菌できず、薬を変更した2回目の治療が必要なこともあります。しかし、2回目の治療までに9割以上の方の除菌が成功します。注意しないといけないのは、除菌をしてもがんを100%予防することはできませんので、除菌をされた方も定期的に内視鏡などの胃がん検診は行う必要があります。
このピロリ菌、実は同じ菌でいくつもの種類(菌株)があることが分かっており、幸い、うちなーんちゅの菌株は本土の菌株に比べ、毒性が低く、胃がんのリスクをそれほど上げないことが分かっています。しかし、感染しないにこしたことはありません。日頃から胃の調子がよくないとお感じの方はぜひ、病院を受診し、胃炎やピロリ菌感染の有無を検査してもらってください。