「痔(じ)かもしれない」と思いながら、恥ずかしいからと受診せずに悩んでいる方は多いのではないでしょうか。痔には、痔核(いぼ痔)、裂肛(れっこう)(切れ痔)、痔ろう(あな痔)と3種類の痔があります。最も多いいぼ痔は、実は日本人の50〜70%の人が持っているとも、また2本足動物である人間の宿命とも言われています。
痔の原因には、便秘や下痢、トイレの時間が長いなど排便に関するもの、長時間座りっぱなしの仕事、妊娠・出産などいろいろあります。症状は排便時の出血、肛門の痛み、痔の脱出、肛門の腫れなどですが、自分では見えない場所で、また相談しづらいこともあり人知れず悩むことになります。
多くの痔(特にいぼ痔や切れ痔)は、生活面の改善や、座薬や軟こうなどの薬で症状を和らげることができます。繊維質の食物、水分を十分に取るなど食事面の注意、下剤、整腸剤などで便通を改善する、トイレの時間を短く、仕事中も適度に体を動かすなど、少し気を付けるだけで症状が改善することがあります。
きれいにしようと思って強く拭いたり、ウォッシュレットで強く洗浄してかえって傷つけることがあります。肛門は優しく扱ってあげましょう。
最近では痔の治療も進歩しています。特にいぼ痔の場合、薬以外に新しい注射療法が登場しており、そのほかにゴム輪結紮(さつ)やレーザー治療などを行っている施設もあります。注射療法の対象となる場合は、日帰り治療や一泊入院での治療が可能です。手術の場合でも、最近は入院期間も短くなり患者さんの負担も軽くなってきています。
また、痔と思い込んでいて、大腸ポリープや大腸がんなどほかの重大な病気が隠れていることもあります。大切なことは、早めに専門医を受診することです。「痔かな」と思ったら、一人で悩まないで恥ずかしがらずに、肛門科、消化器科など専門医を受診することをお勧めします。症状が軽いうちに、早めに手当てをして快適に過ごしましょう。