全身麻酔。経験されたことのない方は縁遠い話と思われるかもしれません。しかし日本では、1年間で約50人に1人が全身麻酔を経験しています。そんなに他人事でもないという感じがしませんか?
ところで全身麻酔を受けた後のこと、ご存じでしょうか? 手術を受けにいらした患者さんでも、麻酔のことはよく分からないから…とおっしゃる方が多いのが現状です。そこで今回は全身麻酔のお話を少々。
全身麻酔の説明の後、多くの方が「目が覚めたら終わっていますよね?」とおっしゃいます。確かに手術は終わっていますが、手術や麻酔による影響は、眠りから覚めるようにぱっとなくなるわけではありません。
まず大きな問題は痛みです。技術の進歩で体の表面につく傷は小さくなってきましたが、痛みは表面だけでなく、内部からも生じます。もちろん目が覚める前に痛み止めを始めていますが、それでも体を動かしたり、力を入れたりすれば痛みは強くなります。
もう一つは呼吸への影響です。全身麻酔で手術を行う場合、手術中は人工呼吸器が必要となる場合が多いです。眠っている間、体と呼吸器をつなぐ管を喉に通す必要があります。この管の刺激で数日は喉が腫れてしまいます。風邪をひいた時のように咳(せき)や痰(たん)が出やすくなっています。
先ほどの話と合わせると、咳をすれば自然と力が入りますので、強い痛みを感じます。この瞬間の痛みまで取り除くことは難しいです。そこで、風邪をひいたばかりで咳が出やすい状態の方には可能なら手術の延期をお勧めしています。
また、たばこを吸う方は咳や痰がより出やすいです。手術が決まって禁煙を勧められても、入院したら吸えなくなるのだからそれまでは…と思われるかもしれません。でもそれは術後の痛みを自ら強くしていることに他ならないのです。
術後の痛みを少なくする意味でも手術が決まったら禁煙を! 最低でも2週間、しっかり影響を抜くためには2カ月の禁煙が必要です。