読者のみなさん、頭頸部(とうけいぶ)がんをご存知でしょうか?頭頸部とは、脳を除く頭部から鎖骨の裏までの広い範囲を指し、この中にできるがんを総称して頭頸部がんと呼びます。具体的には、口腔(こうくう)がん、咽頭がん、鼻・副鼻腔(びくう)がん、喉頭がん、唾液腺がん、甲状腺がん、頸部(けいぶ)食道がんなどです。
頭頸部がんの治療を行うのはもともと耳鼻科医でしたが、頭頸部には嚥下(えんげ)や発声、呼吸など重要な機能があり、がんを治すだけでなく、これらの機能をどのように残すか、回復させるかが必要で、最近ではより専門性を持った頭頸部外科医が、他科と共同して治療を行うのが標準となっています。
頭頸部がんの多くは発がん因子が比較的明らかで、最も高い危険因子がタバコとお酒です。1日20本の喫煙を30年間続けると、20×30=600という単純な計算式ができます。この数字が800を超すと、喉頭がんの発生率は約30倍に上昇します。
沖縄では女性の喫煙率の高さや家族への受動喫煙も問題となっています。お酒は咽頭がん、食道がんの大きな原因です。沖縄は泡盛文化があり、進行咽頭がんが多く、食道がんの重複も少なくありません。タバコにお酒が加われば発がん率がさらに増加するのは言うまでもありません。頭頸部がんの予防にはタバコとお酒を制限することが重要です。
また、最近注目されている発がん因子にヒト乳頭腫ウイルスがあります。このウイルスは子宮頸がんの原因で知られていますが、性生活の変化に伴い、咽頭、口腔がんの発がん因子であることも分かってきました。頭頸部がんの特徴として、鼻やのどなど簡単には見ることができない場所に発生し、自覚症状が少なく、首に転移したしこりで見つかることが多いなどが挙げられ、この時点で進行がんであることが多く、治療は難しくなってきます。
頭頸部がんの診断には内視鏡検査が最も重要です。最近では精度の高い内視鏡で血管の微小変化を検出し、早期がんの発見も可能になっています。早期がんであれば、機能を重視した治療が受けられます。タバコ、お酒を愛する読者のみなさん、定期的に頭頸部がん検診を受けませんか?