汗かきで小太りの、体毛が濃く長時間車を運転する人のお尻(仙骨部)に生じやすい疾患=毛巣洞(もうそうどう)を紹介します。
沖縄の男性はこの条件に合う方が多いためか、毛巣洞の患者さんが決して少なくありません。
毛巣洞とは「皮下に入り込んだ体毛が原因で、慢性的に化膿(かのう)を繰り返す状態」です。年単位で化膿が続いていた方を実際に手術してみると、皮下の深いところでビックリするほど多数の体毛が塊となっていることがあります。
ここで、まったく別のタイプの毛巣洞についてもお話ししましょう。眉周囲の化膿性のできもので来院した患者さんを治療する際、お尻の毛巣洞のように、皮下に何本も毛を認める場合があります。日常的にカミソリや毛抜きで眉の手入れをしている若年女性の悩みとなった原因は、毛巣洞なのです。
これまで、ワキの毛を処理する女性に見られる“腋窩(えきか)の毛巣洞”の報告はありましたが、眉周囲の毛巣洞は知られていませんでした。
さて、毛巣洞の原因ですが、お尻のものは脱落した体毛が持続的な振動性の圧迫により皮膚を貫いて皮下に埋入(まいにゅう)していく[摩擦・吸引説]、ワキや眉周囲の毛巣洞は、日々繰り返される毛剃りや毛抜きなどの手入れのために毛が伸びる方向が変化して、毛の尖端が皮膚の中に入っていく[伸張説]と考えられています。
原因はどうあれ、いったん皮下に入った毛を身体が“異物”とみなして慢性的な炎症(化膿)が生じてきます。根本的な治療は、外科的に“異物”となった毛を取り除くことです。
最近は、男性の方も眉毛の形を整えることがエチケットになりつつあります。そのため、日常的にカミソリや毛抜きで眉の手入れをされている方で、眉の周囲になかなか治らない化膿性のできものができた場合には、早めの受診をお勧めします。