病院を受診する場合、一般的には15歳以上の人は内科を受診することが多いと思います。胸が痛いとか、動悸がするなど心臓病かなと思えば、循環器内科を受診するでしょう。しかし、生まれつきの心臓病(先天性心疾患)の患者さんの場合、多くの人は、大きくなってからも小さい頃からのかかりつけである小児科(小児循環器科)を受診しています。大人になったから内科(循環器内科)でよいと単純にはいかないのが日本の現状です。
このように、子どもの頃の病気を大人に持ち越すことを、キャリーオーバーといいます。先天性心疾患患者さんが大人になったらどうするか、先天性心疾患のキャリーオーバーについてのお話です。
ここ30年の先天性心疾患における医学は目覚ましく進歩しました。全国の大学病院やこども病院などがその中心的な役割を担ってきました。以前は助からなかったような重症の先天性心疾患患者さんの多くが救命できるようになりました。さらに、小学校に入る頃になってようやく可能であった手術が、最近は1、2歳で行われます。従って、小学校に入る頃には、大きな問題なく通常の子どもと変わりなく、学校生活を送れる子どもたちが増えてきました。
しかし、そのような患者さんも、手術後数年以上たってから、元々の病気から派生する問題や、不整脈など新たな問題が生じて、身体的、心理的、経済的問題を抱えることが多いことが分かってきました。つまり、“生まれつきの”心臓病を思春期や大人に持ち越すこと(キャリーオーバー)になります。
一般に、こども病院では成人患者さんを入院診療することができません。従って、キャリーオーバーした先天性心疾患の患者さんをどこで診療していくかが全国的に問題になっています。沖縄県では、2006年に県立のこども病院併設の医療センターができ、県内で小児から成人まで先天性心疾患の治療がほぼ完結する体制が整いつつあります。