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怖い心筋梗塞(2013年3月19日掲載)

嘉数 朗・おもろまちメディカルセンター

異常放置せず改善を

正力松太郎(読売新聞社社長)、引田天功(マジシャン)、大平正芳(内閣総理大臣)、徳光和夫(アナウンサー)、西田敏行(俳優)、小林繁(元プロ野球選手)、松田直樹(サッカー選手)、松村邦洋(芸人)。この方々に共通する病気、それは心筋梗塞です。とても元気に見える方も多いことから、心筋梗塞は誰にでも起こりえる病気ということが分かると思います。

心筋梗塞は心臓の筋肉を栄養する冠動脈と呼ばれる血管が詰まってしまうことで起こります。

心筋梗塞を発症すると危険な合併症が出現することがあります。最も多いのが不整脈で、その中でも特に危険なのが「心室頻拍症」と呼ばれる不整脈です。心臓の心拍数が極端に早くなり、空打ち状態となってポンプとしての働きができなくなり、血圧がほぼゼロになります。脈は触れず、意識はなくなり、そのうち呼吸も停止します。そのまま放置すると心臓はけいれん状態になった後、完全に停止してしまいます。

治療にはすみやかに心臓マッサージを開始し、一刻も早く電気を流して不整脈を止める必要があります。この電気を流すのがAEDと呼ばれる装置です。芸人の松村さんは、救命処置が迅速に連携できたため助かった例だといわれています。彼が東京マラソンの途中で心筋梗塞を起こし不整脈で心停止した時、たまたま近くに医師のランナーがいてすぐに心臓マッサージを開始し、たまたま近くにAEDを携帯したスタッフがいたため、すぐに治療出来たのです。この偶然がなかったら彼はこの世にいなかったかもしれません。

このように怖い心筋梗塞にならないためには、動脈硬化を起こす危険性の高い病気、脂質異常症、糖尿病、高血圧症にならないように、食生活、運動、塩分制限と禁煙が非常に大事です。

そして毎年人間ドックまたは特定健診を受け、異常を指摘されたら放置せず改善に努力する。この地道な努力の積み重ねがあなたの命を救い、あなたの家族の幸せを守るのです。引き出しの奥に眠っている人間ドックの結果報告用紙をもう一度見直してみませんか?