重いものを持った後やスポーツで損傷した後、転倒した後肩の痛みが続く。特に夜間に痛むことが多い。肩の脱力感がある。こういった症状がある場合、肩腱板(けんばん)損傷を疑います。
腱板とは肩関節の運動に関わる筋肉の束のことをいい、スポーツや転倒などで傷みやすい部分です。この肩腱板損傷は日頃の診療でもよく見掛ける疾患であり、肩の痛みを訴えてこられる中高年の患者さんの3人に1人くらいの頻度です。
年齢を重ねるごとに腱板は傷み、少しの外傷でも容易に断裂しやすくなります。五十肩として扱われ何年も症状が持続しているケースも少なくありません。
診断は、最終的には磁気と電磁波を用いた人体に影響のないMRI(磁気共鳴画像装置)検査で行います。
MRIで腱板の断裂が見つかった場合、治療が必要となります。症状が軽微な場合は、リハビリテーションによる治療を行い、症状が強い場合は手術を要します。
以前までは肩を大きく切開して断裂した腱板を縫合する手術が主流でしたが、現在は関節鏡というカメラを用いた手術の技術が進歩し、最小限の傷で治療することが可能となっております。肩関節の中にカメラを挿入し、モニターを見ながら断裂した部分を縫合する手術です。
カメラや縫合糸が挿入できる程度の小さい傷をつくるだけなので、体が受けるストレスも少なく、ほとんどの肩腱板断裂を治療することが可能となっております。治療の成績もよくほとんどの患者さんで症状改善を得ています。
また、この関節鏡の手術は、何度も脱臼を繰り返す反復性肩関節脱臼にも有用とされております。
手術を要するような肩腱板損傷を放置しておくと、肩の筋肉はやせ細り、肩が上がらなくなったり、肩の骨の形が変形してしまう病態を招くことになります。
最初に述べたような症状がある場合、専門家による適切な治療の介入が必要となるため整形外科を受診してください。