食中毒は、食物中に混入している病気の原因となる物質を口から摂取することにより発症する病気です。近年、わが国の食中毒の患者数は年間2万〜3万人台を推移しています。11年は2万1616人が発症し、原因物質は細菌50.6%、ウイルス40.4%であり、死亡者も11人出ています。
1996年に腸管出血性大腸菌O157による集団食中毒が全国的に発生し、大きな社会問題となりました。2011年には、飲食チェーン店で生肉のユッケが原因で発生した腸管出血性大腸菌(O111)食中毒など、O157以外による食中毒や焼き肉食べ放題でカンピロバクターの集団食中毒なども数多く発生しました。12年にも北海道で白菜の浅漬けを食べた128人にO157食中毒が発症し、7人が死亡しました。このような中、わが国では12年7月に生食用牛肝臓の販売が禁止されたことは周知のことです。
以前は、夏期を中心に細菌性食中毒が多発する傾向にありましたが、最近は12〜2月の冬期にも増加し、カキの摂食などによるノロウイルスによる事例が多くなっています。11年のノロ食中毒による死亡者は出ておりませんが、8619人も発症しています。しかし、ノロウイルスはヒトからヒトへも感染し、単なる食中毒ではないことも知られています。昨年の10〜12月にはノロによる胃腸炎が世界で猛威を振るい、わが国では患者数1900人超えと、ノロ食中毒では過去最多の事例もでました。
食中毒の主症状は、急性胃腸炎による吐き気、嘔吐(おうと)、下痢、みぞおち部分の痛み、腹痛、さらには、便意があっても排便のない「しぶり腹」、血便を訴えることもあります。感染症の特徴である発熱を伴わないこともあります。
食中毒の多くは急性下痢症を主症状とする病気ですので、治療は二次的な脱水症に対する輸液療法が重要です。患者さんは下痢が悪くなると、誤解により水分を制限することがありますが、むしろ軽症の場合はスポーツドリンクなどを摂取するだけでよい場合も少なくありません。食中毒は手をよく洗い、十分に加熱、調理した食物を食べることで予防できる病気です。