「せき」を主訴とするお子さんが増えています。一言にせきといっても、せきのタイプにはいろいろあり、主な病名だけでいっても、急性上気道炎、気管支炎、急性細気管支炎、肺炎、気管支ぜんそく、百日咳(ぜき)、クループ症候群、マイコプラズマ感染症などがあります。多くはこれらの呼吸器系疾患に伴うものですが、時には心疾患や心理的問題、気管・気管支異物、外耳炎などに起因する場合もあります。
診察時の問診のポイントは、せきは1日中出るか、時間を限って出るか。運動時にせきが出ないか。随伴症状はないか。嘔吐(おうと)があれば飲み込んだたんを吐いていないか。呼吸は速くないか。苦しそうに肩や鼻翼を動かしていないか。呼吸器感染症に関するワクチン接種歴は? 呼吸器感染症やアレルギー疾患などの家族歴や既往歴は? 家族に喫煙習慣がないかなどの情報が大切です。
また、診察室に入ってくる時の顔色や活気などから、「せきがひどくて眠れなかったのかな?」などの判断ができます。診察以外では、「あのせきはこの子だったのか」と待合室から聞こえてくるせきに耳をすましています。待合室での様子も診察時には泣いたりして得られにくい情報を補ってくれる大切な情報源なのです。
特に小児科では、親御さんからこれらに関連する情報を効率よく聴取することが、診断、治療の方向性を正確に判断するためにはとても重要です。その情報の中から、特徴的な症状などを通訳、解釈し、臨床に当てはめる作業が小児科医の大きな役目になります。もちろん、その後に診察、検査などにより確認を行うわけですが、これらのことからも、いつもお子さんを見ている親御さん以上の名医はいないと感じることもよくあります。
何度となく子どもはせきをする病気にかかりますので、しばらくすると親も症状を説明することなどに慣れてきますが、最初は、普段とどう違うか、気になる点はないか、などの情報を小児科医に投げかけてみて下さい。