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自覚症状ない糖尿病(2012年11月27日掲載)

山本 壽一・ハートライフクリニック

想像力使い合併症予防

「先生、血糖値が高くなると痛くなる薬がないかね」と尋ねられたことがあります。血糖値が高くなる糖尿病は、重症の合併症が出るまで自覚症状がほとんどありません。

皆さまも血糖値が高いと言われたのに放置していませんか。病状を把握する方法は血液検査です。受診しないと良くなっているのか、悪くなっているのかも分かりません。

ある先生が「糖尿病はバーチャル(仮想的)な病気」だと言われました。症状がないので「将来、合併症が出たら困るぞ」と想像しないと治療する気が起こりません。食事療法や運動療法、薬を服用したり、インスリン注射を打ったりするのは予防の治療です。

糖尿病は血糖値を下げるインスリンというホルモンの作用が弱まる病気です。インスリンが出なくなる患者さん、インスリンが出ているのに血糖値が下がらない患者さん。大きく二つの状態があります。

インスリンが出ない患者さんは、その方に合ったインスリン注射の治療をします。インスリンが出ている患者さんには、生活習慣の改善で良くなる場合が多いので、食事療法と運動療法を積極的にお勧めします。

患者さんの中には「食事を減らしたくない。運動などしたくない。薬で治してほしい」と言われる方もいます。しかし、薬だけで治療すると一時的に良くなることもありますが、悪化して合併症が出たり、体重が増加したりとうまくいかないことも多いようです。

インスリンが出ているのに血糖値が下がらない糖尿病は世界中で増加しています。飽食の時代となり、合理化された食事習慣や車社会の影響が考えられます。必要以上に食べない、安全な食材で手間暇掛けて作り、感謝してゆっくりと味わって食べる。可能な限り自分の足を使う。このように、地球環境を壊さないような生活に戻すことが治療につながると思います。

「痛ければ絶対治療するよ」と言われた患者さんは正直です。しかし、症状が出ずに進行していく糖尿病は年々増えています。糖尿病が人類にとってどんな意味を持つのか、皆さまも一緒に考えてみましょう。