これから少しずつ気温が下がると増えてくる感染症が、肺炎です。
2011年度には、日本人の死因の第3位が肺炎になりました。また、肺炎で死亡する95%以上が65歳以上であり、「肺炎は老人の友」といわれるゆえんになっています。
普段の生活で感染し、発症する肺炎が「市中肺炎」で、病院内で発症する「院内肺炎」と対比して用いられる用語です。
原因微生物(病原体)の種類により、「細菌性肺炎」と「非細菌性肺炎」(中でもマイコプラズマとクラミジアによるものを「非定型肺炎」と呼びます)があります。肺炎の原因となる菌として最も多いのが、肺炎球菌です。
肺炎を正確に定義すると、「肺の最も奥に存在する肺胞の感染症」ですから、肺炎を発症するためには、病原体が肺の最も奥まで到達する必要があります。
インフルエンザや風邪にかかり、上気道に炎症が起きると、細菌が定着しやすくなり、細菌による肺炎(細菌性肺炎)が起こりやすくなります。
肺炎の症状としては、せき、たん、発熱、寒け(悪寒)、息苦しさ(呼吸困難)、胸の痛みなどがあります。そして風邪とは違い、うみのような色のついた粘りのあるたん(膿性たん)がみられます。
肺炎の治療には、抗菌薬を使用します。細菌性肺炎には、ペニシリン系やセフェム系といった抗菌薬が使われます。マイコプラズマやクラミジアによる非定型肺炎では、マクロライド系やテトラサイクリン系の薬が使われます。
予防方法には、日常生活での感染予防と、ワクチン接種の2つがあります。インフルエンザ流行時は、人ごみへの外出を避けるか、マスク、手洗いをするなどの予防が必要です。口腔内の清潔を保つことも重要です。
またインフルエンザワクチンの接種、および肺炎球菌ワクチンの接種が、肺炎予防に有効ですので、高齢者や基礎疾患を有する人は、これらのワクチンを接種しておくといいでしょう。高齢者の予防接種には、自治体の補助もありますので活用してください。