近年、小さなお子さんの「治りにくい中耳炎」が増加し、大きな問題になっています。何週間もの間治らない、治ったと思ってもすぐ再発することもまれではなく、耳鼻科医は大変苦労しています。
原因には、集団保育の低年齢化や免疫が未熟なことなどがありますが、耐性菌という抗生物質の効きにくい菌が増加していることも一因です。耐性菌をうまく退治するためには、処方された抗生物質の用量、用法をきちんと守ることが大切です。
中耳炎の治療に使われる抗生物質は、ペニシリン系やセフェム系とよばれるものが中心です。特に昔からあるペニシリンは、新しい他の薬剤が効きにくい場合でも案外、効果的なことが多く、その有効性が見直されています。
これらの服用回数は1日3回になっていることが多いのですが、なぜ3回(時には4回)なのでしょうか? これらの薬が抗菌作用を十分発揮するには、殺菌に必要な血液中の濃度を長く保つことが重要で、そのために服薬回数を多くする必要があります。また耐性菌が疑われる場合には、1回量も増やします。
飲み忘れがあると、その間血液中の濃度が下がってしまい、せっかく抑えていた菌の発育を許してしまいます。飲み忘れが多くなると効かないどころか、悪化することさえあるのです。
したがって(1)服用回数をきちんと守る(2)飲み忘れた場合は、気づいた時点で内服し、次の分は時間をずらす(決して倍量飲まない)(3)服薬を途中でやめないこと―が大切です。
とはいっても、小さなお子さんに薬をきちんと飲ませるのは、一苦労だと思います。また保育園では、昼の服薬ができない場合もあり、1日3回の計算で処方された薬も、実際には2回の服用になっている場合もあると思います。
お薬の服用の仕方には、さまざまな工夫があります。中途半端な飲み方では新たな耐性菌を作ってしまうとも言われてています。耐性菌に負けないためにも、医師や薬剤師によく相談し、処方された薬はきちんと服用するようにしましょう。