すりガラスのような淡い陰影(通称GGO、Ground Glass Opacity)を呈する肺がんが増えています。通常の検診(健診)で用いられる胸部単純写真では、とらえることが難しい肺がんですので、特徴と注意点について説明したいと思います。
肺がんは発生する場所によって肺野型(末梢型)と肺門型(中心型)があります。肺野型は女性に多くみられる腺がん、肺門型はタバコと直接関係し、男性に多く見られる扁平上皮がんが大部分を占めており、おのおののタイプに特徴があります。
肺の早期がんを見つけることは至難の業ですが、たんの検査と気管支鏡検査によって、肺門型の扁平上皮がんの早期診断は確立されてきました。しかし、肺野型の腺がんの早期がんは、長年の多くの努力にもかかわらず決定的な発見方法はありませんでした。
近年、コンピューター断層撮影(CT)の普及と進歩により、淡い陰影の病変、より小さな病変が描出できるようになりました。この淡い陰影の中に、早期と考えられる腺がんが含まれているのです。
純粋にすべてが淡い影の病変と、一部に濃い部分を含む混合型の病変があり、治療の方針が異なります。すべてが淡いすりガラス状の陰影は、CT検査で経過観察が行われます。小さくなったり消えていく陰影の場合は炎症、いつまでも消えない陰影の場合は早期の腺がんの可能性が高くなります。
経過を追うための検査の間隔、期間、治療方針に定まったものはありませんが、若年者で妊娠・出産予定者では被ばくとの関係で、逆に80歳代の高齢者の病変の場合は、全身状態との関連で治療のタイミングの問題があります。病変は多発することもあり、切除方法についても慎重な対応が求められます。
当院の過去30年間に渡る約5000例の肺がん症例からも、女性の肺がん、男性の腺がん、非喫煙者の肺がんは、どれも増加傾向にあります。いずれもスリガラス状の陰影を呈することがありますので、早期発見のためにCT検査が必要です。