超高齢化したわが国では、急病や持病が悪くなって複雑な治療を受けなければならない患者さんが急増しています。最近では、医療が必要なために自宅に帰れない患者さんが増え、それに伴い、急病で入院できる病院のベッドがなくなってしまうことが大きな問題になっています。
これらの問題を少しでも改善するための制度が「在宅療養支援診療所」です。「24時間対応が可能な在宅医療を行うことができる体制の診療所である」と届け出た診療所です。
現在、全国の在宅療養支援診療所数は約1万1千件で、沖縄県では約70件が届け出ています。在宅療養支援診療所は、それぞれの地域で患者さんの在宅医療を支える中心的な役割を担っています。
宮古の在宅療養支援診療所である私どもも、高齢で動けない人や、障害を持った人のために、ご自宅への訪問診療を行っています。チューブからの栄養や点滴、酸素、人工呼吸器などが必要でも、ご自宅に帰って生活することが可能です。
しかし近年、世間の命に対する考え方が変わってきているような気がしています。「誰のために」あるいは「何のために」と考えることなく、そういった医療の状況を作り出してしまうことが多くなっているような気がします。それらの医療技術は、本来は救命するために考え出されたのですが、今では延命するために用いられることの方が多くなっています。
命を大切にするとは、単に亡くなるまでの時間を延長するのではなく、残された時間をどう幸せに過ごすのかを考えることではないでしょうか。それが命を大切にすることだと私は思っています。多くの在宅療養支援診療所では、患者さんの命のあり方についても一緒に考え、適切な医療を自宅で継続できるよう頑張っています。