気管支結核という病名を聞いたことはあるでしょうか。その名の通り、気管支にできた結核で、結核のなかでも少ない方ですが、結核菌を排出しやすく注意を要する疾患です。
人は常に呼吸しています。その流れは鼻あるいは口から咽喉頭、気管、気管支を通って肺に達して酸素を取り入れ、またその逆の流れで二酸化炭素をはき出します。
気管支は口やのどから近い位置にあります。このため気管支に結核が発症すると、のどから口腔(こうくう)を経て菌が体外に排出しやすくなります。つまり他の人に感染しやすくなるのです。
気管支に病変があると咳(せき)が出やすくなります。気管支結核の症状としては、まず咳が必ず出ます。その他、たん(白っぽいことが多い)、それにぜんそくのように気道がぜいぜいと音を発する喘鳴(ぜんめい)が出現することもあります。
気管支結核では同時に、肺にも結核を生じることが多いのですが、肺の所見は目立たず、レントゲン写真を撮っても分かりにくいことが少なくありません。このため普通の気管支炎や風邪、時にはぜんそくと誤認されることもあります。
その他、気管支結核に特徴的な点は女性に多いということです。筆者の属する施設では年間平均1〜2人を診ていますが、4分の3は女性です。肺結核は男性が女性の約2倍を占めますが、気管支結核は逆に、女性が男性の3倍多く見られます。その理由は諸説ありますが、確実な原因はいまだ分かっていません。
気管支結核は結核菌を排出しやすく、その菌量も多く見られます。たん検査にて顕微鏡で菌が検出される患者さんの割合は肺結核の場合約50%ですが、気管支結核の場合は85%で、そのほとんどが中量〜大量の菌を排出しています。
発症しても早期の場合は菌量は少ないため、他の人への感染をきたしにくく、また後遺症としての気管支狭窄(きょうさく)をきたすこともなく治癒できます。
一般的に気管支結核を発症する割合は低いですが、咳が2〜3週間以上続く場合は、この疾患も念頭において、近くの医療施設を受診しましょう。