例えば、風邪のような症状でかかりつけ医の先生を受診する時、自分の病状を説明するのに苦労する人は少ないと思います。看護師の予診(診察の前に患者さんから大まかな病状を聞き、診察の補助となる情報得る業務)にも、すらすらと答えられる人がほとんどでしょう。
ところが、「胸が痛い」と言って受診する場合には、風邪の時のようにはいきません。患者が「自分は重大な病気ではないか?」と、大変心配して受診することもあって、看護師が質問しても、しっかりと答えられない人がほとんどです。これは実に困ったことなのです。
「現在は、診断機器も高度化しているし、いろいろな検査を組み合わせれば、正確な診断がすぐに行えるので、先生に任せておけば大丈夫」と、みなさんが考えているのでしたら、それは大きな間違いです。昔も今も患者自身の話は医者が診断や検査を進める上で一番重要と言って良い、貴重な情報なのです。
先に挙げた「胸が痛い」場合、いつ、どんなことをした時、どこが何分くらい痛かったのか。その時どうすれば良くなったのか。その症状は初めてか、以前にもあったか、などさまざまな情報を、できれば本人から聞くことが本当に重要です。
これらの質問への答えによって、検査のスケジュールが変わったり、別の病気の検査が追加になったりすることもあるのです。医者が根掘り葉掘りいろいろ聞くこと(問診)にはこんな理由があったのです。
でも、医者の前に出ると緊張して何も話せなくなる人、こんな人は自宅で症状をメモに書いてから受診してください。だれかに付き添ってもらうのも良いかもしれません。また、いつも通院していても、いざ診察となったら医者と話すのが苦手な人、何か相談がある場合は、あらかじめメモに書いてから受診してはいかがでしょう。
緊張する必要はありません。医師とのコミュニケーションがうまく取れるようになると、もっと満足のいく医療が受けられると思います。遠慮なくお話し下さい。