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統合失調症(2012年6月19日掲載)

村上 優・国立病院機構琉球病院

新薬効果で退院増加

統合失調症は100人に1人がかかる病気です。現在は、副作用が少なく効果が高い統合失調症治療薬が開発され、入院期間も短くなったため、外来治療が中心となっています。

その一方で症状が重いために長期入院を続けている患者さんがいることも事実です。

統合失調症に特有の幻覚、妄想、思考の混乱などの症状が、さまざまな薬物療法を行っても改善しない状態を治療抵抗性統合失調症と言います。

そのような治療抵抗性統合失調症の患者さんへの新たな薬物療法として、日本でも2009年より、クロザピンの処方が始まりました。

クロザピンはこれまでの薬では良くならなかった幻覚や妄想などの症状を改善する唯一の治療薬です。ただし、内服する患者さんのうち約1%に、血液中の白血球が減少する重篤な副作用が出現すると言われています。

クロザピンの処方ができるのは、研修を受けた専門職員が配置されている、24時間いつでも検査できる体制があるなどの条件を満たし、登録された病院のみとなっています。また、患者は1〜2週間ごとの採血が必須となります。

治療抵抗性統合失調症の患者さんの多くは、これまで幻覚や妄想の症状が改善しないため長期間入院していました。

しかし、琉球病院でもクロザピンの処方を開始してから約2年が過ぎ、幻覚や妄想の症状が大きく改善して退院する人も増えています。

患者やその家族も改善効果の高さを実感しており、「声が聞こえなくなった」「人前で緊張しなくなった」「気持ちが落ち着いた」などの声が多く聞かれます。

長年苦しんできた症状が改善することで、心理教育やリハビリテーションも積極的に取り組むことができ、さらに治療効果が高まります。

クロザピンによる薬物治療だけではなく、心理教育、外来体制、訪問看護、デイケアを整え、退院した患者が安定した地域生活を送れるように、支援体制を整えることが大切です。