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肺がんの「常識」(2012年6月5日掲載)

石川 清司・国立病院機構沖縄病院

正確な情報選択を

肺がん診療の現場で出合う間違った「常識」について考えてみたいと思います。

「毎年検診(健診)を受けているのに、進行肺がんで見つかるとは何事か」と主張する理論派。残念ながら肺がん検診は胸部単純エックス線写真で行われます。この単純写真には多くの弱点があります。病変が肝臓、心臓、骨などと重なってしまうと5センチほどの大きな病気も見えないことがあります。また、単純な撮影手技ほど画像から判定する技術が求められます。万能な検査手技は存在しないのです。

「フィルター付きのマイルドなたばこを吸っているので安心だ」と主張する頑固者。沖縄ブランドのたばこが横行した時代に比べると、マイルドになったたばこが普及した現代は、肺がんの発生部位が変化してきました。重度の喫煙者の肺がんも、多くは肺の太い気管支ではなく、末梢(まっしょう)に見られるようになりました。発生部位が変わっただけなのです。

「年寄りの肺がんは進行が遅いので、急いで治療する必要はない」との自称常識派。一般的に「がん」には個性があり、ゆるやかに進行する病変と、あっという間に進行する病変があります。進行速度は、年齢とは関係ありません。肺がんは70歳代に多く見られる病気です。

「手術が怖い」。よく耳にする患者さんとその家族の思いです。手術は痛みの少ない、傷の目立たない医療光学機器を駆使した胸腔(きょうこう)鏡、腹腔(ふくこう)鏡、内視鏡による縮小手術の時代になりました。ご安心ください。

放射線被ばくが問題になっています。健診や術後の経過観察等は、被ばく線量を少なくした「低線量CT」で行われます。

インターネットを使いこなす現代の若者。脳転移は著名な脳外科医に、肝転移は肝臓外科医に、脊椎転移は整形外科医にセカンド・オピニオンを求めたいとの弁。全身を評価して診ているのは主治医です。セカンド・オピニオンを求めることは自由ですが、あくまでも主治医との信頼関係が基本です。

病気の治癒を得るには、正確な情報とその選択、早期発見が大原則です。