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ペインクリニック(2012年5月29日掲載)

笠間 晁彦・同仁病院

痛み 総合的に対処

人間と動物の違いは何でしょうか? 一番の違いは脳の発達程度にありますが、特に思考、感情、記憶などの違いはその代表的なものです。では、痛みはこの人間的なものとどのように関わっているのでしょうか。一般に痛みとは異常を知らせる強い警告サインですが、他の動物と異なり不安、恐怖、悲哀、悲観などの感情を誘発し、さまざまな心的ストレスを残します。このため痛みの程度、種類などは人それぞれ異なり、診断・治療に苦慮します。

ではもし痛みが長引いたら(こじれたら)どうなるでしょうか? 心的ストレスが長期に継続するため鬱(うつ)などの精神障害を招いたり、痛みの感受性が変化し、さらに強い痛みとして認知されるようになります。その結果、不眠、イライラ、仕事が手に付かないなどさまざまな症状を併発します。

初めから痛みを十分コントロールすればこのような変化は生じないわけで、痛みをなくすことはいかに重要かが分かります。

では、皆さんは痛みに悩まされた時、どこに行きますか? 複雑怪奇な現象であるために痛みを専門に扱う部署は非常に少なく、各科で対処しているのが現状です。うまくコントロールできず長期化すると最終的に精神科に行きつくことも少なからずあります。

ペインクリニックとは急性期から慢性期に至る各種の疼痛(とうつう)に対し、さまざまな治療法を駆使し総合的に痛みのコントロールに対処する痛み専門の科です。単なる鎮痛剤だけではなく痛みに関与する感情面に作用する薬やこじれた痛みに作用する特別な薬などを調合して対処します。また精神科やリハビリなど他科とも連携しながら総合的に痛みに取り組んでおります。

特徴的なのは「神経ブロック」という治療法です。これは痛みを伝える神経の一部をまひさせ、一時的に痛みを完全に遮断する方法です。数時間でも痛みから解放されることは、一つの救いとなり希望が生まれます。痛みは「こじらせず、長引かせず」です。

痛みでお困りの方は一度ペインクリニックの門をたたいてみてはいかがでしょうか。