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内視鏡手術(2012年5月22日掲載)

大田 守雄・中頭病院

3D普及の可能性も

内視鏡を用いる外科手術は、消化器分野では胆のう摘出術を筆頭に食道疾患、胃疾患、大腸疾患、肝疾患、膵疾患などで、呼吸器疾患では肺疾患などで盛んに行われています。

数か所の穴を利用し、ハイビジョンモニターで身体の中を見ながら手術を行う内視鏡手術が発展したことは、患者さんにとって身体にやさしく傷が小さいなどのほかに入院期間が短いことなどが利点に挙げられます。

しかし現在のモニターは2D(二次元)の世界であり、奥行き感がないことが欠点です。

近年、映画館では画面が飛び出してくる3D映画が多くなってきました。ほとんどの映画が時代の流れで3Dに変わっていくことでしょう。これからは医療の分野でも立体内視鏡を用いた3D手術が普及していく可能性があります。

海外ではすでに、3D画像を見ながら内視鏡手術を行うダ・ヴィンチシステムというロボット手術が泌尿器科手術を中心に行われています。わが国では、やっといくつかの施設で導入され、徐々に普及しつつあります。今年の4月からは、ダ・ヴィンチシステムを用いた泌尿器科手術に初めて保険が適用されました。

外科手術においては、前面に画面が飛び出してくる立体感は、逆に恐怖感につながります。しかし立体内視鏡を身体に挿入して観察するには、奥行き感が重要となります。人間の身体の中は複雑であり、さらに個人個人の解剖学的差異も少なからずあるからです。

外科手術における内視鏡、モニター画面のハイビジョン化は外科医の寿命(術者として手術を行える)を格段に延長させました。これまで50代半ばを過ぎる頃の視力の衰えは避けて通れない事実でした。昨今、外科医を志望する若い医師が激減している中、現在の外科医たちは現役から退くタイミングがなおさら難しくなりそうです。

これから医療の現場において、より普及するであろう3D手術の画面を若き医師たちと偏光メガネをかけて見ながら、1日でも長く外科医師を続け、優秀な内視鏡専門外科医師を育てていきたいと思います。