沖縄県医師会 > 健康の話 > ドクターのゆんたくひんたく > ドクターのゆんたくひんたく2012年掲載分 > 目の危機管理

目の危機管理(2012年4月10日掲載)

新里 学・浦添総合病院

震災に目薬の備えを

昨年3月に起きた東日本大震災は非常に多様な被害をもたらし、現代社会の高度に発達した文明社会を一瞬にして破壊しました。医療も医療機械の破壊、薬剤などの医療資源流通の遅延、医療従事者の喪失などにより大きな打撃を受けました。

この震災後にあらためて災害時の「非常持ち出し袋」の重要性がクローズアップされましたが、そこで眼科医の私が思ったのは、その中に抗生剤の点眼液を入れておくと良いなということでした。

地震で建物が破損・倒壊するときには大量の粉じんが舞い、あるいは落下してきますが、その状況で生き残るためには目を開けて行動しなければなりません。津波が来れば、泥やごみだらけの海の中で目を開けて泳ぐ必要もあるかもしれません。当然目にさまざまな異物が入ってしまうので感染症が発症することが想定されます。

震災は目にとっても非常に過酷な状況と想定されます。いつ起こるか分からないのが震災ですから、これらの目の被害を予防することは困難です。

もし異物が目に入ったことで、痛くなったり眼脂(めやに)が大量に出るようになったりすれば、数日から数週間は受診機会のない避難生活の中で視力障害も抱え込むことになり、避難生活の困難さはより過酷なものになると思われます。当然、早期に治療ができなかったことで後遺症が残る可能性もあります。

そんなことを考えてみると、限られた「非常持ち出し袋」のスペースの中ではありますが、点眼液なら1本くらいは隙間に入れてもらえると思いますから、これを入れておくとかなり安心だと思います。抗生剤点眼液は汚染異物による眼感染症から目を守ってくれます。また、清潔な水が確保できない状況でも点眼することで異物を洗い流すことにも使えます。

もし、異物が目の組織に刺さってしまって取れない場合でも、受診できるまでの感染拡大を低減してくれる効果があります。抗生剤(抗菌)点眼液は市販薬もあり、千円程度で気軽にドラッグストアなどで購入できます。