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子宮内膜症(2012年3月27日掲載)

徳嶺 辰彦・中頭病院

卵巣残す温存治療も

皆さんは「子宮内膜症」という病気をご存じですか? 20代から40代に多い病気で、国内には200万人の患者さんがいるといわれており、近年増加傾向にあります。

子宮内膜症とは月経のときにはがれおちて出血する「子宮内膜」という部分が、卵巣や腸の表面など本来はない場所にできてしまう病気です。卵巣にできた場合は、卵巣の中にチョコレートのような古い血液がどんどんたまっていくため「チョコレート嚢胞(のうほう)」と言ったりします。

基本的に良性の病気なのですが、三つの困った問題を引き起こします。まず一つ目が痛みです。ひどい生理痛や慢性の腹痛・吐き気・腰痛の原因になります。

二つ目が不妊症です。子宮内膜症があると必ず不妊症になるわけではありませんが、不妊症の患者さんの中には子宮内膜症の方が多く、治療後に妊娠しやすくなるためやはり大きな原因の一つと考えられています。三つ目は卵巣にできた場合、卵巣がんを合併することがあるといわれています。40代以降やサイズの大きいものはリスクが上がるようです。

子宮内膜症は治すのが難しく、再発も多い病気です。完全に治すには子宮や卵巣を手術で全部摘出するしかありません。しかし、若い方や今後妊娠を希望する方には子宮や卵巣を残す温存治療をすることになります。

温存治療には「薬物療法」と「手術療法」があります。薬物療法には軽症の場合は痛み止めだけで様子を見ることもありますが、低用量ピルなどのホルモン剤の投与で痛みを改善し、病気の進行を遅らせる方法もあります。

しかし、症状の強い方や不妊症の場合は手術療法が必要になります。腹腔鏡(ふくくうきょう)といって小さな切り口から器具を挿入してカメラでのぞきながら行うのが一般的です。いままでの開腹手術と比べて傷が小さいため体への負担が少なく、患部を拡大し手術するため、きめ細かな操作が可能で、手術後の癒着(ひきつれ)が少ないといったメリットがあります。

子宮内膜症の治療法は痛みの程度や妊娠の希望などによって一人一人違ってきます。そのため医師とよく相談して治療をしていくことが大切です。