沖縄県医師会 > 健康の話 > ドクターのゆんたくひんたく > ドクターのゆんたくひんたく2012年掲載分 > 「痙縮」の話

「痙縮」の話(2012年3月20日掲載)

嘉手川 淳・沖縄赤十字病院

生活動作に影響も

痙縮(けいしゅく)とは、筋肉の緊張のために手足が動かしにくいか、勝手に動いてしまう状態のことです。

例えば脳卒中の後遺症で、こぶしを開こうとしても開きにくいとか、肘が曲がる、つま先が足の裏側のほうに曲がるなどがその症状です。

長く続くと筋肉が固まって関節の動きが妨げられる拘縮(こうしゅく)になり、リハビリテーションがやりにくくなることもあります。

また不眠症や手足の痛みの原因にもなり、さらに日常生活動作のみならず、生活の質の低下を来します。

痙縮の原因には、脳やせき髄のどこかを壊してしまう病気やけががあり、例えば脳卒中や頭部外傷、せき髄損傷、脳性まひなどがあります。

痙縮の治療は、従来の内服薬や神経ブロック療法、外科的療法に、最近ボツリヌス療法とバクロフェン髄注療法が加わりました。

ボツリヌス療法では、筋肉を緊張させている神経の働きを抑える、「ボツリヌストキシン」というお薬を筋肉内に注射することにより、痙縮を和らげることができます。

バクロフェン髄注療法では、「バクロフェン」という薬をせき髄の周囲へ直接注射することにより、痙縮を和らげます。お薬の効果を持続させるために、体内に薬剤注入ポンプを植え込みます。患者さんの状態に応じてお薬の量を増減することで、痙縮の細かい調整が可能です。

ボツリヌス療法とバクロフェン髄注療法をうまく組み合わせることで、日常生活動作やリハビリテーションが行いやすくなります。

また関節の拘縮を予防し、痛みを和らげることで、生活の質を向上させます。さらに介護の負担が軽くなります。

ボツリヌス療法とバクロフェン髄注療法を行うためには資格が必要ですが、その資格を持っている脳神経外科専門医と神経内科専門医、リハビリテーション科専門医がチームとして連携することにより、切れ目のない治療をすることが可能となっています。