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うつ病について(2012年2月28日掲載)

仲本 政雄・博愛病院

症状多様、早め受診を

日本における年間自殺者数が、3万人を超えるという非常事態が過去14年間も続き、大きな社会問題となっており、国を挙げてその課題に取り組まざるを得なくなっております(過去10年間で尊い生命が30万人以上も失われています)。

原因はいろいろありますがその自殺者の多くがうつ病の疑いがあるとのことで、うつ病の早期発見、早期治療が重要視されるようになりました。最近ちまたでよく見かける「お父さん眠れていますか?」キャンペーンもその一つです。

通常、人は皆一生のうちに何度か「うつ」になります。対象への思い入れが強い人(こだわりの強い人)、特に几帳面(きちょうめん)、生真面目な人ほど、うつになりやすく、また、回復に時間がかかりやすいものです。

うつ状態(眠れない、疲れやすい、憂うつ、何を見ても楽しめない、何もやる気がない、過度に心配しすぎる、後悔ばかりするなど)が2週間以上続いたら、うつ病の疑いが強く、専門医を受診した方が望ましく思います。

しかし最初はさまざまな身体症状を訴えて、一般科を受診することが多いようです。

その時に背景にある精神症状が隠され、うつ病が見逃されることも多いようです(仮面うつ病)。身体的訴えが多い割にそれに見合う検査結果が得られない時は、うつ病を疑うべきであると考えます。

いわゆる自律神経失調症と診断された方の多くは、うつ病や心気神経症の可能性が高いようです。

一般科でも簡単なうつ病のチェックテストをやってもらえば、大体の診断は可能であり、うつの疑いという診断がつけば、精神科医との連携で早期治療が功を奏します。

不況が続き社会的ストレスが増大している今日では、うつ病は風邪のように誰もがかかりやすい病気でありますが、油断は禁物です。

多くの自殺者がいることを考えたら、それがどれほどか苦しく、当人でないと分からないつらい病気であり、その治療や再発予防には周囲の温かい理解が必要です。