2010年国民健康栄養調査によると、日本人の喫煙率は19・5%と20%を切り、調査開始以来過去最低になったことが発表されました。かつては8割以上と言われていた男性の喫煙率は、調査開始の1986年当時にはすでに下がり始めていたものの、59・7%と高水準で、ようやく50%を下回ったのが99年。その後も下がり続け、今回32・2%と最低値を更新しました。
一方、86年は日本が輸入たばこの関税を撤廃し輸入自由化に踏み切ったことを契機に、海外から参入したたばこ会社が女性に向けて盛んに広報活動を始めた年で、女性の喫煙率は上がっていきました。そのため86年には8・6%だった女性の喫煙率は、2004年に12%とピークに達し、近年は10%前後でした。それが、今回発表では8・4%となっています。
その一方で、たばこの本質的な怖さが国民に浸透したかどうかを問われると、疑問符を付けざるを得ません。我々(われわれ)禁煙治療の専門医が考えるたばこの恐ろしい点は、肺がんや慢性閉塞性肺疾患(COPD)になることでも、心筋梗塞で突然死することでも、脳卒中で寝たきりになることでもありません。
無論それらはみな恐ろしいことですが、喫煙は「寿命を10年縮めるぞ」と言われても吸い続けてしまう、つまりは「それでも20%の国民はやめていない」という怖さがあるのです。
たばこ以外に「死ぬぞ」と言われても口に入れ続けたくなるものが他にあるでしょうか。それが文献によってはヘロインよりも強いと紹介されている「ニコチンの依存性」です。
しかしながら近年ではニコチン依存症の病態が明らかになり、貼付薬や飲み薬などで「ニコチン切れの禁断症状」を抑えられるようになりました。これら禁煙補助剤のおかげで、意志の力だけでは困難だった禁煙に成功した人が本県にも多数いらっしゃいます。
そして、彼らはみな「ニコチン切れの症状が出なくなり、イライラしなくなった」と感じているようです。実は、たばこをやめるということは、ストレスを減らすことにもつながるのです。