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未病ケア(2012年1月17日掲載)

鈴木 信・沖縄セントラル病院

まず患者に耳傾ける

「名医は既に出来上がった病気を治すのではなく、未病のうちに治す」と2000年以上前の中国最古の医学書である「黄帝内経素問」に書かれています。

未病とは未完成の病気で、健康と病気の間の状態を言います。その中に臨床検査で異常があるのに、自覚症状がないものがあります。これが典型的な未病です。

未病は血圧、血糖、ガンマーGPT(肝臓の酵素の数値)のわずかな上昇などのように、機能的異常と言われるもので、エコー図、コンピューター断層撮影装置(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)で詳しい検査をしても臓器に特別な病変が認められません。これも体調の不調には違いはありません。

この場合データが極めて少ない上に、患者は偉い先生方を前に生活習慣に関わることなど話しにくいのです。従って、その際最先端医療の超専門医が集まっても、何の結論も得られません。

しかしこれが進行すると病変がはっきりしてきて本格的な病気となり、単なる不調からがん、脳卒中などの失調に陥る可能性があります。

未病は治療するものではありません。世話をすることを念頭において、医療関係者は未病の段階でじっくりと患者の訴えに耳を傾け、いきなりコメントせずに、まず患者の訴えに共感することが必要です。

再診を重ねて患者とのラポール(親密な信頼関係)が成立すると、心置きなく患者が話をするようになるので、病因や解決法が自ら浮かび上がってきます。それは薬やサプリメントではありません。

何より「病気は自分で治すもの」ということに気付かせ、食事、運動、禁煙やリラクセーションなどの療法を実行に移させることが大切です。そして不調を順調にするのが未病ケアなのです。

混んでいる病院や、待合室が混み合う時間帯は避けるほうが良いでしょう。あなたに十分な時間をとって丁寧に説明してくれる、かかりつけ医師を選ぶべきです。あなたの健康長寿は医師の選び方によって決まると言えます。