2005年3月から11年までの約6年間で、石垣島で発生した心肺停止の患者333人のうち19人、約5・7%の人が社会復帰しています(図)。
全国平均は05年から08年までの4年間で2・1%(消防庁の資料より)。全国では100人中2人しか社会復帰できていないのに、石垣では100人中6人近くの人が、また元の生活に戻ることができたということです。これは沖縄県内でも最も優れた数字です。
このような素晴らしい結果となっている石垣市は、何が優れているのでしょうか。私はその理由は主に二つあると考えています。
一つは、心肺停止の通報が石垣消防に入った時、消防職員が通報者に受話器越しに胸骨圧迫(以前は「心臓マッサージ」と言っていた)を指導していること。もう一つは救急車が患者さんの元に早く着いて、救急隊が適切な処置を行い、病院に早く搬送していることです。
「バイスタンダー」という専門用語があります。心肺停止の人の「そばに居合わせた人」のことです。このバイスタンダーが心肺蘇生を行うと、救急車が到着するまでに、何も蘇生行為を行わなかったのに比べて、蘇生する確率や社会復帰する確率がかなり高くなります。
1992年に日本で初めての救命士が誕生し、石垣市消防本部でも01年6月から救命士が活動しています。
救命士は心肺停止の患者さんを含め、あらゆる救急活動の技能向上のために日々鍛錬しています。加えて一般市民への心肺蘇生法の普及にも、力を入れています。
沖縄で初めて一般の人がAED(自動体外式除細動器)を使用したのも八重山です。このような背景で、八重山ではバイスタンダーによる心肺蘇生が多く行われ、より多くの人の命が救われているのです。
皆さんの住んでいる地域でも、一般市民向けの救急救命講習を実施している消防署があると思います。あなたの大切な人の万が一の時に備えて、一度受講してみてはどうでしょうか。