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傷治療の新主役(2011年11月29日掲載)

西関 修・県立南部医療センター・こども医療センター

消毒薬の出番少なく

「傷の治療」と言えば、「消毒」の2文字を思い浮かべる方が多いと思います。また、ご家庭の救急箱にも、消毒薬の定位置があることでしょう。でも、その消毒薬が「最近の傷の治療」では主役ではなくなってきています。

小さなやけど、かすり傷、切り傷で受診された方々のなかで、何やら、シールのようなガーゼとは違うものを貼られてお帰りになったことはありませんか?

シート状のハイドロコロイドドレッシングをはじめとする、「創傷被覆材(そうしょうひふくざい)」がそれです。最近では市販のものも出ています。

傷は乾燥よりも湿った環境で、より早く、痛みの少ない状態で治癒に向かうことが分かってきました。薄いガムのようなこの特殊シートは、傷からの体液を取り込みつつ、傷口を乾燥から防ぎ、潤いを保ってくれます。

ですから病院では、次の外来までの間に、傷の状態に応じて1〜2日に一回、水道水などで洗浄後に、貼り替えるよう指導しています。

「消毒なしで、化膿(かのう)はしませんか?」との質問を受けますが、ご心配なく。消毒よりも、洗った方が効果的に傷口についたバイ菌を減らしてくれます。

洗浄は普通の水道水で十分です。適温でやさしくかけることで刺激も抑えられます。傷の状態によっては一日に何回かの洗浄を勧める場合もあります。

いままで皆さんは傷に痛く、しみる方が効果ありそうで、我慢しながら消毒薬を塗っていませんでしたか? 実は消毒薬は、バイ菌と一緒に治ろうとする自分の皮膚の細胞までも障害するため、逆効果とされます。

また、深めの切り傷などで縫合術を受けた患者さんからは「消毒は必要ですよね?」とよく聞かれますが、縫合されたキズは、術後24〜48時間でその縫い目は閉鎖し、バイ菌の入り込む余地はなくなるので、やはり消毒は不要です。

欧米と比べ、創傷被覆材後進国であった日本でも、最近どんどん身近な存在となりつつあります。ご家庭の救急箱にそれらの定位置ができる日も近いのではないでしょうか。