「先生、この病気治りますか?」一人のご婦人が尋ねられました。25年前のことです。当時骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療薬は、ビタミンDとカルシウム製剤が主体で、骨塩量の増加は正直期待できず、「治りますよ」とは答えることができませんでした。
「骨粗鬆症は加齢によるもの。病気であって病気でない、治らなくても生きていける」といった誤った認識が、当時われわれ医師の間にもありました。
ところが、高齢化社会を迎え、骨粗鬆症に起因する骨折が、寝たきりの原因の第3位であること、腰が曲がるといった姿勢変化が心理的負担や逆流性食道炎の原因となることなどが分かるにつれ、骨粗鬆症は治さなければいけない疾患として考えられるようになりました。
1990年代に入り、ビスフォスフォネート製剤が開発され、骨塩量の増加と骨折の予防効果が証明されると、骨粗鬆症の治療が俄然(がぜん)脚光を浴びるようになりました。この薬剤の登場により、欧米では大腿骨(だいたいこつ)頚部骨折(骨粗鬆症で発生しやすい骨折、足の付け根部分の骨折)の発生頻度が減少に転じたとの報告があります。また、副作用のために使いづらかった女性ホルモンの代わりに、SERM(選択的エストロゲン調節薬)といわれる薬剤も登場し、比較的若い世代の骨粗鬆症患者の治療もできるようになりました。
さらに、ここ1、2年の間に新しい薬剤も次々と開発され、骨粗鬆症の治療は飛躍的な進歩を遂げています。特に昨年から使用できるようになった、PHT(副甲状腺ホルモン)製剤は、骨量増加だけでなく骨の年齢自体を若返らせる治療薬として脚光を浴びています。適切な治療薬の選択で、骨塩量は5〜10%も増加し、骨折の危険率を半分以下に減らすことができます。その恩恵を受けるためには、まず、自分の骨の状態(腰椎および大腿骨頚部の骨塩量)を把握する必要があります。
幸い、多くの施設で測定機器(DXAデキサ)が導入されています。皆さまもこの機会に自分の骨年齢をチェックしてみてはいかがですか?