ある日の診察室。腹痛で来られた患者さん。原因をいろいろ調べたところ胆石が見つかり外科へ紹介となりました。
最近は患者さんがインターネットで治療方法を調べて来院されることも多く、今回も「おなかを切らずに手術できますか?」と質問がありました。
一方担当医は患者さんへ「単孔式(たんこうしき)で手術を行います」と説明しています。患者さんの方は「腹腔鏡(ふっくうきょう)手術は知ってるけど、単孔式手術って?…」と不思議な顔をされています。
この10年で胆石症の標準的な手術は、おなかを大きく切らない“腹腔鏡手術”が一般的になってきました。実は10年前にも腹腔鏡手術についての投稿をさせていただいていますが、今回は腹腔鏡手術の中で発展してきた単孔式手術についてのお話をしたいと思います。
腹腔鏡手術はトロッカーと呼ばれる特殊な筒をおなかの中に挿入し、先端がさまざまな形状をした鉗子(かんし)と呼ばれる器具を使って行う手術の方法です。
厳密にはおなかを切らない手術ではありませんが一般的に行われている開腹手術と比較すると傷が小さく済むことから“おなかを切らない手術”というイメージを持っていらっしゃる方が多いようです。
通常、胆石症の手術では4本のトロッカーを挿入し手術を行いますが、安全性や治療の効果は同等に、より傷痕を少なくするためトロッカーを減らす工夫が行われています。最近ではおへその切開の傷(単孔)1カ所から胆石の腹腔鏡手術を行う単孔式手術が行われています。
おへその中に手術の傷が隠れるように工夫することで、手術の傷痕は時間の経過とともにほとんど目立たなくなっていきます。
実際、当院で手術を受けられた患者さんへのアンケートでも、傷痕に対する満足度は高いという結果も得られています。
患者さんへの負担をより少なくすることを目指し開発された単孔式手術も、これまで発展してきた腹腔鏡手術と同じように胆石症だけではなく今後いろいろな疾患へと適応が広がっていくことでしょう。