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大動脈瘤(2011年10月18日掲載)

西島 功・中部徳洲会病院

傷口小さい新治療法

大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)という病気をご存じですか? 大動脈瘤とは、血管の一部が風船のように膨らんでいく病気です。この病気の怖いところは、症状がないことです。

知らない間に、徐々に血管が膨らんでいきます。放置すると、突然破裂し、命を失ってしまうことがあります。ですから、破裂する前に、見つけなければいけません。レントゲン写真や腹部エコー検査で分かりますので、検診や人間ドックを受けましょう。

一般的な治療法は、開胸手術・開腹手術を行い、人工血管に取り換えます。しかし、手術のストレスは大きく、高齢の方、あるいは肺の弱い方などには、私たちもなかなか勧めづらい治療法でした。

5年ほど前より「ステントグラフト」と呼ばれる新しい治療が始まりました。太ももの付け根にある動脈から、カテーテルを使って治療を行うのです。バネで広がる人工血管を細く折り畳み、動脈瘤まで挿入します。血管の中でステントグラフトを広げると、動脈瘤に血液が流れなくなり、破裂することがなくなるのです。

この治療の良いところは、傷口がとても小さくて済むことです。開胸手術・開腹手術では30センチ以上の傷となることもありますが、ステントグラフトでは太ももの付け根に4センチ程度の傷がつくだけです。いわゆる盲腸(虫垂炎)の手術の傷と大差はないのです。

このように、体へのストレスが少ないので、手術翌日には歩くことができ、食事もできます。だいたい1週間くらいで退院が可能となります。

今まで手術を受けることを躊躇(ちゅうちょ)したり、年齢が高いから、あるいは肺が悪いからと手術を断られたりしている患者さんがたくさんいらっしゃると思います。ステントグラフトであれば、このような患者さんの動脈瘤も治療することができるのです。

動脈瘤という爆弾を抱え、いつ破れるかと不安な毎日を送られている皆さん、ステントグラフトという新しい治療方法がありますので、ぜひ一度病院を受診、相談しにいらしてください。