過剰な摂食は肥満になります。米だろうが、肉だろうが余分な栄養は体内で主に「脂」へ変わり、肝臓、筋肉や心臓などの中にまでたまっていきます。特に脂肪細胞に脂がたまると肥大化して、数が増えて、体重は増えていきます。ここまでを「肥満」といいます。
さらに過食が続くと、今度は内臓脂肪細胞の性質が変化して、体に悪影響を及ぼすさまざまな生物活性物質(アディポサイトカイン)を分泌するようになり、内臓の中にたまった脂は臓器障害を起こします(脂肪毒性)。この病的状態を「肥満症」といいます。
大阪大学第二内科は、男性のウエストが85センチ以上、女性では90センチ以上になってくると、内臓脂肪細胞が悪玉のアディポカインを分泌するようになり、高血圧、脂質異常症、高血糖(耐糖能障害)を合併しやすくし、2型糖尿病ひいては心筋梗塞を起こしやすくすることを明らかにしました。
この状態を「メタボリックシンドローム」(内臓脂肪症候群)と名付け、いち早く世界に警告を発しました。
今回の紙面で一番お伝えしたいのは、2006年に日本肥満学会が「メタボ」の予防と改善のために「体重3キロ減量、ウエスト3センチ縮小」を目指そうと提唱した「サンサン運動」です。
この宣言の根幹には、例えばウエスト100センチであっても、体重をわずか3キロ減量するだけで、ウエストは約3センチ縮小し、高血圧、脂質異常、高血糖といった病的状態が著しく改善する事実があります。
必ずしもウエストを10センチも15センチも減らす必要はないのです。どんな肥満者でも、男性でも女性でも、体重をたった3キロ減量するだけで、これまで薬物などによる治療が必要だった肥満症という状態から、内臓の機能には問題のない単なる肥満へと劇的に改善していくことが期待されるのです。
3キロは、缶ビール(350ミリリットル)で約9本分、Lサイズの牛肉で10枚分です。1日0・1キロの減量を30日間続けると、3キロの減量が達成できます。まずは1キロの減量を目標にして、少しずつ体重を減らしてみてはいかがでしょうか?