誰でも一生に一度は腰痛を訴えるといわれますが、高齢者の方もしばしば腰痛を訴え整形外科の外来を受診されます。高齢者の腰痛は、老化に伴う腰椎由来(変形性脊椎症や脊椎圧迫骨折など)の痛みが主です。しかし、頻度は少ないのですが内臓由来(大動脈解離や尿管結石など)や悪性腫瘍の骨転移から生じる腰痛もあり注意が必要です。
内臓由来や転移性骨腫瘍などからの腰痛は安静時にも痛みがあり進行することが多いので、鎮痛剤があまり効かない場合や安静時にも痛みが長引く場合には早めにMRI(magnetic resonance imaging、磁気共鳴画像装置)などの精密検査が必要と考えられます。
腰椎由来の痛みは、起床時や体動時に痛みが増大しても安静時には痛みが改善することが多く、痛みの急性期には横になったりコルセットを使用したりしながら腰の安静を図り、鎮痛剤や湿布などを併用して痛みを和らげるようにすると良いでしょう。
痛みが強くてほとんど動けないようであれば、入院治療や硬膜外ブロック(局所麻酔薬などを、背骨の中の太い神経の近くに注入し、痛みを和らげる)などの対処法も考えられますので、診療所よりも入院治療が可能な病院の受診をお勧めします。
ある程度腰痛が改善してきたら痛みの我慢できる範囲内で積極的に体を動かし、日常の活動性をアップさせ、また温熱療法などを併用しながら少しずつリハビリを開始しましょう。できれば日ごろからストレッチやウオーキング、ロコモトレーニングなど適度な運動を継続して行い、柔軟性や四肢の筋力を保ちながら適切な体重を維持して、あまり無理はしないことが大切です。
またすでに骨粗鬆症(こつそしょうしょう)と診断されている方はまず乳製品など十分にカルシウムの摂取を心掛け、さらに骨粗鬆症が進行している方はビタミンDや骨粗鬆症治療薬の内服について主治医と相談してください。
腰痛に加えて足のしびれや麻痺(まひ)を伴う場合は重篤な疾患の可能性が高いので、早めに整形外科の受診をお勧めいたします。