皆さんは「シックデイルール」という言葉をご存じでしょうか。「シックデイ」は直訳すると「病気の日」です。糖尿病の方が風邪やインフルエンザ、嘔吐(おうと)、下痢などの病気になると、体内のインスリン必要量が増えます。一方、食事が取れなくなり、通常通りの治療薬では血糖値が低下する場合もあります。「シックデイ」には、高血糖あるいは低血糖、時にはその両方が起こる場合があるため、食事量や病状、血糖状態にあった適切な「対処法」すなわち「シックデイルール」が必要になります。
「シックデイルール」の基本は、ほかの病気と同様、温かくして安静にすることです。食欲がない場合は、脱水にならないよう意識して水分を多く補充しましょう。また普段控える必要がある市販のジュース、スポーツドリンク、アイスクリーム、缶詰果物、麺類など糖分が多く食べやすい食品を選び、少量を何回かに分けて取るのもよいでしょう。血糖は少し高めでも、食事や水分が取れる間は、病状の悪化が抑えられます。
ただし、次の症状が一つでもある場合は重症化しやすいので早めの受診が必要です。
(1)発熱、下痢・嘔吐、痛みなどの症状が24時間〜48時間以上続く(2)食事摂取が困難である(3)脱水症状が強い(4)普段より血糖の変動が大きい、さらに高齢者では症状が急速に進行し昏睡(こんすい)を起こすこともありますので特に注意が必要です。症状によっては、入院加療が必要になる場合があります。
「シックデイ」の場合、食事が取れないので血糖は下がると思われがちですが、実際には上昇する傾向にあります。特にインスリン治療中の方が注射を中断すると、病状が急激に悪化する場合があります。血糖測定の回数を増やし、血糖状態を把握しながらインスリン量を加減しなければなりません。
ただし、インスリンの種類や病状によって加減の仕方が異なりますので、主治医との相談が必要です。
「シックデイルール」は、緊急時はもちろん災害時にも応用できます。日ごろから、ご本人はもちろんご家族の皆さまもよく心得ておくことをお勧めします。