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乳がんと前立腺がん(2011年7月26日掲載)

向山 秀樹・南部徳洲会病院

性ホルモンが影響

最近、乳がんで若い女優さんが亡くなられました。このようなことがあると、乳がんに対する社会意識が向上し、検診などを受ける方が増加します。がんで亡くなる方を減らすことこそが、この女優さんおよび遺族の遺志でもあると思います。

ところで乳がんは女性だけの病気と思われる男性も多いでしょうが、実は男性にも発生します。ただ、その頻度が低いためにあまり取り上げられることはありません。しかし男性だからと言って安心することはできません。女性の乳がんによく似たがんが、男性の前立腺がんです。

乳がんが基本的に女性の病気であるように、前立腺がんは男性の病気です。つまり乳がんは女性ホルモンに影響を受け、前立腺がんは男性ホルモンに影響を受けます。

乳がんの発生率は女性ホルモンを分泌している期間にほぼ比例して上昇します。前立腺がんでは男性ホルモンの値と発生率が比例するとういう報告があります。

さらに両方のがんとも性ホルモンを利用した治療方法があります。また転移しやすい部位もリンパ節と骨であることも共通点です。

加えて近年増加傾向にあることも似ています。アメリカでは乳がんは女性のがんによる死亡率の2番目です。前立腺がんも男性のがんによる死亡率の2番目です。

日本では2008年現在、乳がんは女性の5番目、前立腺がんは男性の8番目ですが、今後両者ともアメリカのように増加すると予想されています。

しかし最も重要な共通点は乳がん、前立腺がんに限らず、すべてのがんに言えることではありますが、早期発見が大事であるということです。

このように共通点の多い乳がんと前立腺がんですが、異なる点も当然あります。そのひとつが早期発見の方法です。乳がんはマンモグラフィーや超音波検査といった画像検査で早期発見をしますが、前立腺がんの場合はPSAと呼ばれる腫瘍(しゅよう)マーカーで早期発見ができます。つまり採血だけで早期発見につながるので、検査としては前立腺がんの方が簡便です。